投資をする方の中には、個別株に興味を持たれる方も少なからずいます。株式投資は奥深いですが、資産の最大化を目指すならば、個別株売買は魅力的ですね。しかしながら、どのように銘柄を選んだらよいかわからないという声も良く聞きます。
私自身は、今現在は運用額が大きくなり、株だけでなく不動産など様々なアセットを組み合わせてパフォーマンスを安定的なものにしています。個人だけでなく法人も組み合わせた運用をしているのはそういうことです。
特に株式はシンプルなインデックス投資に寄せています。しかし、今でも米株四季報をチェックしたり、スクリーニングしたり、地味にコツコツと銘柄の決算をチェックしています。これは、サテライト的ではありますが、個人での投資枠を生かすためですね。
今回は、私が米国株を対象として実践している個別株選定の基礎・基本の目線をお話しします。
バリュー株かグロース株か

バリュー株かグロース株かは、永遠のテーマですね。相場とともに、人気も変化します。一般に、市場が好調な時はグロース株が好まれます。調整相場ではバリュー株が選好されますね。
基本的にはグロース株が優位とされます。ただ、相場次第、タイミング次第という面もありますね。また、ボラが高いため、変動を許容できる胆力が試されるかもしれません。
一方、バリュー株は下値が重いとも言われますが、一概にはそうも言えません。さらに下がる場合もあります。安定した収益の維持を期待できると言われていますが、100%確実ではないですね。
結局のところ、バリュー株にしろグロース株にしろ、安いところで買えれば良いわけです。自身の目線で企業を分析し、長期的な目線で運用していくのが良いでしょう。この5年ほどは特にグロースを意識した投資をしています。そういう変革の時期にあると思っているからです。
定量的な財務分析でスクリーニングをかける
VTIなどで知られる全米株式指数に採用されている銘柄数は3,500を超えます。この一つひとつを精査していくのはとても大変ですね。まずは定量的な財務分析でスクリーニングするのが効率的です。
あくまでも一例として、私が良く見る指標をご紹介しますね。
- 売り上げ
- 営業利益
- 営業利益率
- 営業キャッシュフロー(CF)
この4つです。
1.売り上げは本業の儲けを判断する基本のキ
まず一つ目は売上高です。売上高が安定して右肩上がりとなっているのが理想ですね。そういった意味では、売上高成長率という形で、変化率の評価も行います。前期と今期の期間にどのくらい売上高が変化したかを数値化します。このような数字を5年、10年の期間で追っていく形になります。
売り上げの増加は本業で儲かっていることを示します。そのため、売上高のチェックは基本中の基本と言えるでしょう。
2.営業利益は確実性の高い本業の利益を示す指標
続いて営業利益です。営業利益は、企業が本業で稼いだ利益を表します。似たような用語で経常利益というものがあります。こちらは、事業売却のような不定期な利益が含まれます。営業利益は、不確実性の高い利益を計上しませんね。そのため、本業でどれだけ利益が出ているかを読み取ることができます。
確実性の高い事業で利益が伸びているかどうかが企業の良し悪しの判断ポイントとなります。やはり、常に伸びているのが理想ですね。とはいっても、コロナショックのようにイレギュラーな低下要素はあります。下がったからと言って、一概に投資対象から外すということはありません。
ただし、下げた場合には必ず理由を明らかにします。本業が傾いたからなのか、相場全体が低迷しているからなのか、回復の見込みやビジョンが持てるかどうかを見極めたいですね。
いずれにしても、本業が好調かどうか、これから先も伸び代があるかを判断する指標として、営業利益は外せないチェック項目と言えるでしょう。
3.営業利益率で強みのある企業を見抜く
営業利益率は、先の2項目、売上高と営業利益を用いて算出します。計算式は、
営業利益÷売上高×100=売上高営業利益率
となります。
この指標は、その企業の全体の売上のうち、本業でどのくらい儲かっているかを知ることができます。目安として、私は20%を一つの基準としています。ただし、業種や業態によって異なりますので、加味して評価します。
小売業はどうしても利益率が良くないです。スケールを活かして薄利多売で利益を出すというのがセオリーです。このように、セクターによって平均的な利益率は異なります。
利益率が高い企業は、何かしら強みのあるビジネスモデルを持っていることになります。そのような企業を見極めるためにも、この指標はよく見ています。
4.営業キャッシュフロー(CF)で本業の好不調を見抜く
キャッシュフロー(CF)とは、お金の流れを意味します。企業活動や財務活動によって得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れを指しますね。
CFには、営業CF、投資CF、財務CF、フリーCFと種類があります。中でも、営業CFを重視しています。
営業CFは、商品販売やサービス提供で得た収入から、仕入れや営業活動に必要な諸経費を差し引いて求められます。本来の営業活動から得られた金額を明らかにしたものといえますね。
この数字がプラスであれば、本業が順調であることがわかります。営業CFがプラスであり、かつ、大きければ大きいほど安心できますね。
定量評価のポイントは、本業で儲かっているかどうか
定量評価として、1.売り上げ、2.営業利益、3.営業利益率、4.営業CFの4点をご紹介しました。共通していることとして、本業で儲けが出ているかどうか、本業が好調かどうかを最重要視しているということですね。
企業の本筋は、本業でしっかりと利益を出せているかどうかです。ここがブレるようでは、長期的な投資は難しいでしょう。ともあれ、強みのあるビジネスが継続しているかどうかを判断するという視点で、このような数字を追っているというわけですね。
定性的なビジネスモデル評価
長期投資は基本的にBuy & Holdです。そのためには、長期的な成長を継続できる企業かどうかを見分ける必要性があります。
パット・ドーシー著、『千年投資の公理』では、ウォーレン・バフェット氏の投資を理解するうえで欠かせない「経済的な堀(モート)」について書かれています。具体的には、無形資産・顧客の乗り換えコスト・ネットワーク効果・コストの優位性です。
これらが備わった企業は、高い参入障壁を有し、競合他社が容易に参入できないため、安定的な収益が期待できます。また、強力な競争優位性があるため、長期に渡って収益を上げ続けられる可能性があります。そして、市場での優位性があり、高いシェアやブランド力によって、市場で優位な立場を維持できます。
このように広く深い堀を持ち、長期にわたり競争優位性を維持できる企業を、投資の世界では「ワイドモート企業」と呼びます。投資家は、それを見抜いて銘柄を選別するということですね。
なお、定量的評価であげた売上高営業利益率は定性的な評価にも使えます。売上高営業利益率が永続的に20%を超え続けているというのが一つの指標です。このような企業は経済的な堀(モート)があり、他社が追随しにくく競争優位性がある場合が多いですね。
このように、定量的な数字で競争優位性を確認することもできます。単年でなく、5年、10年のデータをチェックするのがポイントですね。
定量的な財務分析と定性的なビジネスモデル評価の総合判断
米国株は、営業利益率やEPSなどの数字が非常に優れている企業が多いです。そして、自社株買いも盛んですね。これは、経営者が常に株主から厳しくチェックされている体制が整っているからです。そして、決算・数字を意識して経営している企業が殆どですね。
だからこそ、定量的なスクリーニングが機能するともいえますね。
そして、スクリーニングをクリアした企業の中から、定性的なビジネスモデルを評価する流れになります。
ただし、経済的な堀があるかどうかはある意味で永遠の課題とも言えます。時代とともに移ろい、いつの間にか堀が埋まっていたということもあるからですね。そのため、定期的な決算チェックは欠かせません。
株式投資は企業の将来に賭けることです。長期的な視点をもって取り組みましょう。そのためには、定量的な評価と定性的な評価の総合判断が求められます。単なる指標の機械的な適用ではなく、企業の本質的価値と将来性を見極める眼力を養うことが肝要ですね。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。 ※本稿は著者の見解に基づくものであり、Wealth Roadの運営会社の見解を示すものではありません。

(提供:Wealth Road)
参考資料など
ブログ:バリュー株とグロース株はどちらを買うのがベストなのか