③豊田織機、4.7兆円の巨費で非公開化

2025年最大のM&Aとなったのが豊田自動織機をめぐる一件だ。6月初め、トヨタグループによる4.7兆円規模の買収・非公開化を受け入れると発表した。豊田自動織機といえば、世界トップの自動車メーカーに成長したトヨタ自動車の源流企業(本家)だけに、一般にも大きな注目を集めた。

買収主体はトヨタグループの資産管理会社でもあるトヨタ不動産(非上場)を中心に、トヨタ自動車、同社の豊田章男会長の3者が出資して設立する新会社。TOB(株式公開買い付け)は当初予定の12月上旬から延期され、2026年2月開始を目指している。

4.7兆円(TOB3.7兆円、トヨタ保有株の自己株取得1兆円)という買収額は国内企業がかかわるM&Aとして歴代2位のスケール。武田薬品工業によるアイルランド製薬大手シャイアーの6.2兆円買収(2018年発表)に次ぐ。

ただ、1株1万6300円のTOB価格に対しては不満がくすぶっている。2025年3月末の1株あたり純資産とほぼ同水準であるため、6月の株主総会でも「価格が低すぎる」とし、その点に質問が集中。

12月にはアクティビスト(物言う株主)として知られる米投資ファンドのエリオット・インベストメント・マネジメントが5%超の豊田織機株を新規保有したことが明らかになっており、この先、波乱含みの展開が予想される。

豊田織機は非公開化によって、トヨタグループ各社との事業連携の深化など、短期的な業績期待にとらわれない中長期的な成長を目指すことが可能になるとしている。

その同社をめぐってはトヨタ株(9.14%保有)をはじめグループの持ち株会社的役割を併せ持つことから、持ち合い株売却による株主還元などを求める海外ファンドの圧力がかねて高まっていた。

M&A Online

(画像=トヨタグループの頂点に立つトヨタ自動車(東京本社)、「M&A Online」より引用)

④日本製鉄、USスチール買収を成就

日米両国の政治問題に発展した日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収問題。計画発表から1年半を経た6月に、USスチールの普通株式のすべてを約2兆円で取得し、完全子会社化した。「黄金株」が有力な交渉カードとなったことも記憶に新しい。

日鉄がUSスチール買収を発表したのは2023年12月。当初は2024年7~9月期までの買収完了を見込んでいたが、米大統領選の争点の一つになったことで事態が暗転。バイデン前大統領は経済安全保障上の理由で買収禁止を命じた。日鉄はトランプ政権下で懸命な巻き返しを図り、名門USスチールの経営立て直しに向けて1.7兆円の巨額投資を約束した。

その際、切り札となったのが経営上の重要事項に拒否権を持つ特殊な株式「黄金株」。日鉄はUSスチールが発行する黄金株を米政府に付与した。これにより、米政府の影響力を保持できる仕組みとしたのだ。

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(画像=日本製鉄の本社前(東京・丸の内)、「M&A Online」より引用)

日鉄はかつて粗鋼生産で世界トップに立っていたが、国内需要の減少や中国企業の台頭などで順位を下げ、現在4位。USスチール買収を足がかりに、首位への返り咲きへの道筋をつけたい考えだ。日鉄はインドでも鉄鋼一貫生産体制の構築に動いている。