株式会社TimeTree

共有カレンダーアプリ「TimeTree」を2015年にリリースし、全世界7,000万ユーザー(※2025年11月時点)を突破している株式会社TimeTree。日本発のサービスでありながら、ユーザーの半数以上が海外というグローバルな成長を遂げている。本インタビューでは、代表取締役の深川泰斗氏に、創業から現在に至るまでの事業変遷、成長の秘訣、そして「予定データ」とAIを活用した未来のプラットフォーム構想について詳しく伺いました。

深川 泰斗(ふかがわ やすと)──代表取締役社長CEO
1977年8月10日、福岡生まれ。九州大学大学院で社会学・文化人類学を学び、2006年、ヤフー(現・LINEヤフー)入社。ソーシャル・コミュニケーションサービスの企画を担当。2012年にカカオジャパンへ出向後、2014年に株式会社JUBILEE WORKS(現・TimeTree)を共同設立。2015年3月にカレンダーシェアアプリ「TimeTree」をリリース。
株式会社TimeTree
「誘おうをつくる」をミッションに、共有とコミュニケーションを前提にしたカレンダーシェアアプリ「TimeTree」を開発・運営。2015年3月24日からサービスを提供、2025年11月には全世界で登録ユーザー数が7,000万を突破。「スマホの中の壁掛けカレンダー」として、幅広く利用されている。
企業サイト:https://timetreeapp.com/intl/ja

目次

  1. 「共有」をコンセプトに世界7,000万ユーザーを魅了
  2. 人が人を呼び、着実に伸びてきた
  3. 「予定データ」が拓く新たなビジネスモデル
  4. AIが「未来の行動」を最適化する
  5. テレビCMで認知度拡大 M&AやIPOは?

「共有」をコンセプトに世界7,000万ユーザーを魅了

── もともとヤフーにいたメンバーで創業されたそうですね。

深川氏(以下、敬称略) 2014年9月に、ヤフージャパンとカカオジャパンにいたメンバー5人で創業しました。私はヤフーに8年ほど在籍し、コミュニケーション系サービスのプロダクトマネージャーを担当していました。当時、LINEが急成長しており、ヤフーもチャット領域への進出を検討していました。自社開発するのではなく、カカオトークと組んでジョイントベンチャーを設立し、チャット領域に進出したのです。

私はヤフーから出向した企画メンバーの一人で、2年ほど携わりましたが、LINEと競うのは難しいという結論に至り、ヤフーへの帰任が決定した際、当時のチームメンバーと「帰らずに独立しよう」と決意したのがTimeTreeの始まりです。まるでバンドのようなノリで、この5人で上京したような感覚でした。

2015年3月にTimeTreeをリリースし、去年3月でリリース10周年を迎えました。グローバルでの登録ユーザー数は7,000万を突破し、その約半数が日本、残りの半数が日本以外の海外ユーザーです。日本以外でユーザーが多い国は、アメリカ、ドイツ、台湾、韓国、イギリスが上位を占め、その他にもオーストラリア、スイス、ポーランド、フランスなど、さまざまな国・地域で利用されています。

── 共有カレンダーというコンセプトはどのように生まれたのでしょうか?

深川 当社のサービスは「カレンダーシェアアプリ」と名乗っています。世の中には数多くのカレンダーアプリが存在しますが、そのほとんどは一人で使うことを想定したデジタルツールです。

一方、仕事ではサイボウズやOutlookのようなグループウェアでスケジュールを共有するのが当たり前になっています。プライベートにおいても、カレンダーを共有する方が便利で自然なのではないかと当時考えました。

予定とコミュニケーションは切り離せないものです。誰かと予定を立てたり、調整したりする機会は必ず発生します。一人用のデジタルツールでは、このコミュニケーションの部分が不足すると感じていました。

ちょうど当時、韓国ではカカオ、日本ではLINEなど、チャットアプリが世界中で普及し、人とのやり取りが常に断続的に行われるようになっていました。これにより、予定が発生する機会もいつでも起こりうる状況です。そのため、予定は最初から共有したほうがスムーズであると考え、「カレンダーシェア」というコンセプトで開発しました。

共有する相手は、コミュニティごとにシェアするのが最適だと考えました。世界最小で世界中にあるコミュニティといえば、家族や恋人です。そのようなイメージでサービスを構築しました。

── 当初からグローバル展開を視野に入れていたのですか?

深川 はい。最初からグローバルでもニーズがあるのではないかと考えていました。カレンダーは世界中で使われている文房具ですし、家族や恋人も世界中に存在する。チャットでのやり取りが多くなる状況も世界共通でした。そのため、最初から英語版と日本語版、韓国語版を同時にリリースしました。

そこから約11年間、共有カレンダーの機能を強化し、伸ばし続けてきました。国ごとに大きくユーザーが伸びる機会もありました。

── これまでに大きな転換点はありましたか?

深川 2018年頃に開始した広告事業ですね。TimeTreeのカレンダーならではの予定データに、広告主様がターゲティングできる仕組みを構築しました。

たとえば、猫の動画を見ているからといって猫好きとは限りませんが、TimeTreeで「動物病院に行く」という予定が入っていれば、間違いなくペットを飼っていることが分かります。引っ越しの予定が入っている方には家具量販店の広告を当てるなど、的確な広告を届けられます。

また、カレンダーはユーザーが日付を頻繁に確認するツールです。「ポッキーの日」や「プライムセール」のようなイベントを日付と一緒に確認すれば、忘れずに済むという企業側のニーズもあります。具体的には、特定の日付にアニメーションが表示されるなど、セール日や発売日などの日付を訴求する広告を展開しています。

現在、収益のメインは広告事業で、その他には広告表示を望まないユーザー向けのプレミアム課金サブスクリプションもあります。プレミアム課金では広告が非表示になるほか、いくつかの付加機能を提供しています。

── 2024年4月には新たなサービスもリリースされたそうですね。

深川 2024年4月に正式リリースしたのが「公開カレンダー」です。これまでの家族など仲間内だけが見える共有カレンダーとは異なり、アーティストやお店、ブランドなどが世の中全体に向けてスケジュール情報を発信できるものです。

アイドルグループやお笑い芸人さんがファンに向けてライブ予定などを発信したり、ファンはそれを見て仕事の休みを組んだり、遠征を計画したりできます。楽天さんのように「何倍の日」といったセール情報を発信しているケースもあります。TBSさんがバレーボールの試合日程を発信したり、コスメ情報サイトのMAQUIAさんがさまざまなコスメの発売日をまとめたりと、多様な公開カレンダーが利用されています。

今では、個人の利用だけでなく、企業様が情報発信のツールとしてTimeTreeを利用する状況になっています。

人が人を呼び、着実に伸びてきた

── 大きく成長した特定のきっかけや出来事はありましたか?

深川 特定の大きな出来事があって伸びたというよりも、着実に伸びてきたという感覚です。時間管理に関する世の中の状況やニーズがグローバルで存在していたことが背景にあります。

特に注力したのは、共有をいかに簡単にするかという点です。国ごとに使われているチャットアプリが異なるため、インストールした地域で最も使われているチャットアプリが起動するようにチューニングを繰り返してきました。共有がスムーズになると、ユーザーが次のユーザーを呼んでくれるという循環が生まれます。

たとえば、家族で使っていた人が職場で使おうと思い、職場の同僚を招待する。職場で使っていた人が自宅でも使おうと、また家族を招待する。このように、人が人を呼ぶことで広がっていきました。

「こんなグループで使うと便利ですよ」ということをアプリ内で訴求し続けるなど、地道な努力を重ねて伸びてきたところです。日本国内ではマーケティングも行いましたが、海外ではほぼゼロです。海外の約3,000万ユーザーは、この「人が人を呼ぶ」仕組みで達成できたといえます。

── 海外での広がりは、口コミが中心だったのですか?

深川 海外では必ずしも口コミだけではありません。AppleのApp StoreやGoogle Playといったプラットフォームでの検索や、Appleによるおすすめ(フィーチャー)が大きな起点となりました。

特にAppleに初期から、そして現在もフィーチャーしていただいていることが、海外での成長に大きく貢献したと考えています。海外の人々も共有カレンダーを必要としていたからこそ、App Store経由でTimeTreeを見つけ、利用し始めたのでしょう。

「予定データ」が拓く新たなビジネスモデル

── 今後どのようなサービスを展開する予定ですか?

深川 もともと、単なる家族のカレンダーシェアアプリを作りたかったわけではありません。誰もがどんどん忙しくなり、情報量や選択肢が増え続ける中で、未来の行動選択をもっと簡単にできないか、自分の未来を可視化して予定を選べるようなプラットフォームを作りたいと考えていました。

これはリリース前の企画書にも書いてある大元の構想で、公開カレンダーのような、私たちが知らないイベント情報が世の中にたくさん集まる仕組みは、この構想の一部です。

たとえば、私が昨年サカナクションのライブに行ったという予定が入っていれば、サカナクションが新しいイベントを行う際に、それを私に教えてくれて、予定に入れることができる。このような「予定のプラットフォーム」を構築したいと考えています。

X(旧Twitter)などでは気になる情報もすぐに流れていってしまいますが、予定やイベントと出会える機会を増やすことに、今後力を入れていきたいです。

── そのためには、企業との連携が必要になりますか?

深川 連携ももちろん重要ですが、現在の公開カレンダーは、企業との契約がなくてもアプリの中から誰でも作れます。

たとえば、キッチンカーの運営者の方が「今日どこでお店を出しているか」というスケジュールを共有したり、個人のヨガの先生がレッスンの空き日を共有したりするケースもあります。アイドルが自発的に公開カレンダーを作って活用されているケースもある。誰もがビジネス活動をするうえで公開カレンダーを作る世界観を目指しています。

AIが「未来の行動」を最適化する

── 昨今注目されているAIの活用はいかがですか?

深川 AIには今後、全面的に投資していく方針です。AIはユーザーのことを理解し、最適な提案をするのが得意です。決まりきった選択肢だけでなく、ユーザーの文脈に合わせた提案ができる点で、AIとカレンダーは非常に相性が良いと考えています。

カレンダーには、私自身のコンテキスト、たとえば「今日この後、六本木に何時に行って、その後どこに行く」といった情報や、過去の予定から「何々が好きで毎週行っている」といった情報が詰まっています。

AIがこれらの情報を活用し、「それならこれはいかがですか?」と提案したり、「行くなら雨が降るから傘を持って行った方がいいですよ」と教えてくれたりする。ユーザーが次の行動を決めるためにカレンダーを開くときに、そのような提案があれば非常に便利です。

TimeTreeにはたくさんの予定データがあるので、ユーザーそれぞれに合った提案ができるでしょう。AIの発展は、私たちにとって大きなチャンスであると捉えており、この分野にも力を入れていきたいと考えています。

── 新規事業の構想や、既存事業の拡大プランについて教えてください。

深川 TimeTreeとまったく関係ない別ブランドなどを展開することは考えていません。TimeTreeのプラットフォームを活用し、その上で展開するビジネスをすべて考えています。公開カレンダーのマネタイズも始めています。

たとえば、アイドルグループの利用について触れましたが、そこでアーティストがマネタイズできるビジネスを作り、我々も手数料をいただくというモデルを構築しており、現在、アーティストがカレンダー上でデジタルコンテンツを販売できるようにする取り組みを進めています。

アイドルの場合、紙のカレンダーがよく売れますが、その価値は「部屋のいつでも目につくところに自分の推しを置きたい」という点にあると考えています。

そこで開発したのが「ウィジェット」です。スマートフォンの画面上に株価ウィジェットなどを置いている方が多いように、アプリを開かなくても情報が見られるのは便利です。これをアーティスト版として提供しています。

たとえば、お笑い芸人の写真と次のイベント情報がウィジェットに表示され、写真が週ごとや毎日変わるというものです。これは紙のカレンダーと同じように、いつでも「推し」が目の前にいるという価値を提供しています。月額のサブスクリプションで販売し、その売上はアーティストに還元しつつ、我々も手数料をいただきます。

公開カレンダーの上で、これ以外のデジタルコンテンツや、チケット販売なども検討しています。

── 現在の収益は、広告収入とサブスクリプションでどれくらいの比率ですか?

深川 広告が圧倒的に多いです。ウィジェットのような新しい取り組みは、昨年5月頃に本格的に展開し始めたばかりなので、これから育てていく段階です。

テレビCMで認知度拡大 M&AやIPOは?

── これまでのマーケティング戦略について教えてください。

深川 2019年頃にテレビCMを大々的に展開して、日本での認知度が大きく向上しました。仲里依紗さんと中尾明慶さんにご出演いただいたCMは、特に効果が大きかったと思います。CM以前から着実に伸びていて、日本でも数百万から1,000万程度のユーザーはいたと思いますが、テレビCMはそこからジャンプアップするきっかけとなりました。

マーケティングだけで伸びたという感覚はあまりありません。TimeTreeは家族や友人といったクローズドなコミュニティで使われることが多いため、隣の家族が使っているかどうかは分からない。テレビCMは、届いていなかった層に知ってもらううえで、非常に有効でした。

TimeTreeは、結婚や新しいパートナーとの関係、あるいは「推し活」など、特定のライフイベントやニーズに合わせて利用が始まることが多いです。その使い方を紹介する記事などが、自然な形で広がりを後押ししてきたと感じています。

── ファイナンス戦略やM&Aについて、また今後の展望も教えてください。

深川 資金調達については、昨年11月に韓国最大手通信事業者のSKTelecomをリード投資家としたシリーズFラウンドをクローズしています。今後はIPO(新規株式公開)も選択肢の一つとして考えていますM&Aについては、今後AIを軸に提供価値を拡大していく中で、TimeTreeと相性の良いベンダーやサービスがあれば、選択肢としてはあり得ます。ベストなタイミングで、ベストなパートナーや企業と連携していければと思っています。。

グローバルなプラットフォームになったサービスは、X(旧Twitter)やTikTokのように海外発のものが多く、日本発でそこまで成長した例はまだ少ないと感じています。

TimeTreeは、現在7,000万ユーザーを抱え、その半数以上が海外ユーザーという、日本発のグローバルプラットフォームに挑戦しています。この挑戦に共感してくださる方には、ぜひ応援していただきたいです。

氏名
深川 泰斗(ふかがわ やすと)
社名
株式会社TimeTree
役職
代表取締役社長CEO

関連記事