株式会社リソー教育グループ

少子化が進む中、独自のビジネスモデルで成長を続ける株式会社リソー教育グループ。完全1対1の進学個別指導塾「TOMAS」を筆頭に、教育をサービス業ととらえる徹底した顧客志向が支持を集めている。

2014年に起きた会計面での不祥事による危機を乗り越え、現在はヒューリックとの資本業務提携により新たなステージへ突入した。代表取締役社長の天坊真彦氏に、危機が生じたことによる組織改革、そして「こどもでぱーと」をはじめとしたこれからの構想を聞いた。

天坊真彦(てんぼう まさひこ)──代表取締役社長
1964年、東京都生まれ。1990年、東京大学文学部を卒業。塾講師を経て、1995年に株式会社日本教育公社(現リソー教育グループ)に入社。教務企画局課長、経営企画本部秘書室副部長、取締役管理企画局局長兼総合企画部部長、専務取締役を経て、2015年、代表取締役社長に就任。2019年、代表取締役副会長就任。2022年に代表取締役社長へ再就任。
株式会社リソー教育グループ
1985年7月、設立。完全1対1の進学個別指導塾TOMASをはじめ、家庭教師派遣の名門会、幼児教育の伸芽会などをグループに擁する。2024年、ヒューリック株式会社のグループ入り。2025年4月に開業した、教育特化型ビル「こどもでぱーと」に参画。
企業サイト:https://www.riso-kyoikugroup.com/

目次

  1. 少子化を追い風に「完全1対1」の教育モデルを構築
  2. 不祥事による経営陣退陣という逆風下で天坊氏はトップに
  3. 改革で塾業界特有の「ブラック」体質から脱却
  4. 学校内で塾の指導をする「スクールTOMAS」とは?
  5. ヒューリックのグループ入りで「こどもでぱーと」を開業

少子化を追い風に「完全1対1」の教育モデルを構築

── 「教育」という不可欠ながら運営が決して簡単ではない事業に着手したきっかけを教えてください。

天坊氏(以下、敬称略) 当社は1985年に創業し、2025年で40周年を迎えました。もともとは創業者である名誉会長の岩佐実次が、勤めていた教材販売の会社から独立してスタートした会社です。

岩佐は教材を販売するだけでなく、教えることまで責任を持ちたいという強い思いを抱いていました。そこで、生徒に直接授業を行う会社を自ら設立したのが始まりです。

当初は1対6の少人数制でしたが、生徒によって進度や理解度が異なるという課題に直面しました。分かっている子が退屈し、分からない子が取り残される状況を解消するため、1990年ごろに完全1対1の個別指導へ切り替えました。

── 少子化が叫ばれる中で、個別指導に特化したのはなぜですか?

天坊 「東京マンツーマンスクール(現TOMAS)」を開始した時期は、ちょうど少子化がクローズアップされ始めたころでした。しかし岩佐は、子供の数が減るからこそ、一人にかける教育費は逆に増えるはずだと考えました。

兄弟が少なくなれば、親が一人にかけられる費用と情熱は相対的に高まります。そうしたとき、安心・安全で確実な成果が出る1対1の個別指導が求められると確信し、事業を推進しました。

結果として、少子化という逆風を追い風にして、当社は発展しています。私は1995年に入社しましたが、当時はまだ1対6の教室も一部残っており、まさに変革の過渡期でした。

不祥事による経営陣退陣という逆風下で天坊氏はトップに

── 天坊社長が教育業界を志したきっかけは何だったのでしょうか?

天坊 大学生時代のアルバイトがきっかけです。当時は時給が良いという理由で家庭教師や塾講師を選びましたが、教えること自体が嫌いではありませんでしたし、自分に向いていると思っていました。

分からない子の気持ちに寄り添い、丁寧に教えることにやりがいを感じていました。その後、別の道も考えましたが、縁あって30歳のときにこの会社へ入社しています。

── 入社当時は、将来社長になることを意識していましたか?

天坊 まったく考えていませんでした。私は、ただ「教えたい」という一心で入社しました。しかし、配属されたのは教えない業務、つまり教室運営の管理業務です。講師を管理し、教室を動かす仕事に、最初はとまどいの連続でした。

現場で経験を積む中で、入社から10年ほど経ったときに創業者の秘書を任されることになりました。

── 秘書への抜擢(ばってき)が大きな転機となったのですね。

天坊 そのとおりです。現場から離れ、経営の最前線を目の当たりにする機会を得ました。経営判断がどのようになされるのかを間近で学んだ10年間は、私にとって非常に大きな財産です。

その後、2014年に取締役、2015年に社長へと就任しましたが、決して順風満帆な交代ではありませんでした。2014年に発覚した会計面での不祥事により、当時の経営陣が不在となる異常事態だったからです。

── 不祥事の中、どのような思いで再建に臨みましたか?

天坊 当時はお祝いムードなど一切なく、外部からの厳しい目がある中で、変えざるを得ない部分を一つずつ変えるしかありませんでした。

幸いだったのは、不祥事が会計面のものであり、現場の指導に対する保護者からの信頼は維持できていた点です。ブランド名である「TOMAS」が浸透していたことも、顧客離れを最小限に抑える要因となりました。

私はまず、上場企業としてふさわしい内部管理体制を再構築することに全力を注ぎました。社外取締役を招いてチェック機能を強化し、各種委員会を立ち上げるなど、組織の透明性を高める改革を行いました。

改革で塾業界特有の「ブラック」体質から脱却

── 組織改革を進める中で、特に注力した点はどこですか?

天坊 塾業界で課題となりやすい労務管理の徹底です。かつての塾業界はいわゆる「ブラック」な環境になりがちでしたが、第三者委員会の指摘を真摯に受け止め、すべてを改善しました。

この経験を通じて、私は組織の成り立ちや指示命令系統の重要性をあらためて学びました。塾講師は職人気質な面がありますが、組織として正しく機能させるための仕組みづくりを、これは創業当時からですが徹底しています。

── リソー教育グループの強みは、その組織力にあるのでしょうか?

天坊 はい。当社の最大の特徴は、教育を「サービス業」としてとらえている点にあります。教育論は人それぞれですが、サービス業と考えればお金を出す保護者の要望に応えることが最優先です。

この共通認識があるからこそ、グループ従業員全体が同じ方向を向いて動くことができます。また、入会業務を行う営業部門と指導を行う教室現場を完全に分離している点も、塾業界では珍しい独自の強みです。

── 現場の人は指導に専念できる体制なのですね。

天坊 そのとおりです。現場のスタッフは生徒の成績向上と運営に集中し、新規入会は専門部隊が担当。この分業制が、高い専門性と効率的な成長を支えています。

また、当社には創業時から続く徹底した研修文化があります。教育サービスにおいては、「人」こそが商品であり、研修は商品開発そのものです。

新卒採用でも、真面目に子供たちのために尽くしたいという志を持つ人材が集まります。世代による感覚の違いはありますが、根底にある「教えたい」「誰かの役に立ちたい」という情熱は共通しており、彼らが「サービス業」という意識をもてるようになれば組織の団結力につながります。

学校内で塾の指導をする「スクールTOMAS」とは?

── 教育業界の市場環境と、今後の変化をどう見ていますか?

天坊 現在、塾業界は変化の真っただ中です。少子化のスピードは加速しており、少子化が深刻な地方の塾は非常に厳しい状況に置かれています。業界の再編や二極化は今後、さらに進むでしょう。

一方で、当社が拠点の中心とする一都三県では、人口流入もあり、中学受験や小学校受験の熱は依然として高く、低年齢層の教育ニーズはむしろ強まっています。

── その中で、学校法人向けの支援事業が注目されていますね。

天坊 「スクールTOMAS」という、いわば学校内にTOMASを設置する事業が非常に好調です。もともと学校と塾は競合関係にありましたが、現在は共生の時代に入っています。

学校側も生き残りをかけて差別化を進めていて、その大きなポイントが進学実績になります。また、先生方の働き方改革も急務であり、放課後の学習指導を外部に委託したいというニーズが急増していることも、スクールTOMASが求められる背景です。

── 学校側からの要請で始まった事業なのですか?

天坊 はい。ある学校からの相談がきっかけでした。学校と同じ集団指導を外部から導入しても効果は薄いですが、当社の強みである個別指導であれば、生徒一人ひとりのフォローが可能で、学校との補完関係が強力なものになります。

「学校の中で塾の指導が受けられる」という利便性は、保護者からも高く評価されています。学校は横のつながりが強いので、ある学校で評判が上がると、ではうちもという形で他の学校へ広がっていきます。

少子化でパイが縮小する中、既存の市場を奪い合うのではなく、学校内という新しい市場を開拓し、ニーズを創出することが大きなポイントだと思っています。これが市場のパイを大きくすることにつながるのではないでしょうか。

ヒューリックのグループ入りで「こどもでぱーと」を開業

── 今後の経営において、どのようなビジョンを描いていますか?

天坊 少子化が進んでも、教育がなくなることはありません。教育は人類にとって永遠のテーマです。その中で、「教育といえばリソー教育グループ」といわれるよう、確固たるブランドを築くことが目標です。

そのためには、圧倒的な進学実績を出し続けることはもちろん、異業種との提携による新しい価値提供が不可欠となるでしょう。

── 不動産会社であるヒューリックのグループ入りは、大きな転換点になりますね。

天坊 非常に大きなチャンスです。ヒューリックが進める教育特化型ビル「こどもでぱーと」構想に、当社の各ブランドが中核テナントとして参画していきます。

一つのビルに塾、幼児教室、学童、子どもクリニック、体操教室、英会話スクール、親子カフェなどが集まるこのモデルは、保護者にとっての利便性が極めて高く、強力な差別化要因です。ヒューリックは今後2029年までに「こどもでぱーと」を20棟まで拡大予定です。

── 具体的な数値目標などはありますか?

天坊 まずは売上高500億円の達成が、第一の関門です。現在の300億円規模から、ヒューリックとのシナジーやM&A、学校支援事業の拡大を通じて、早期に到達したいと考えています。

進学実績についても、5年から10年のスパンで現在の倍増を目指します。実績こそが信頼の証であり、ブランド力の源泉だからです。

── 経営者として大切にしていることを教えてください。

天坊 組織を正しく動かし、生き残るための戦略を冷静に実行することです。私は現場出身ですが、現在は数字や報告を通じて客観的に組織を把握することに努めています。

真面目な社員たちが、正しい方向へ突き進める環境を整えることが私の役割です。教育の未来を切り拓くリーディングカンパニーとして、これからも挑戦を続けます。

氏名
天坊真彦(てんぼう まさひこ)
社名
株式会社リソー教育グループ
役職
代表取締役社長

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