株式会社明光ネットワークジャパン

株式会社明光ネットワークジャパンは、日本初の個別指導塾「明光義塾」を全国に展開し、個別指導分野で業界最大規模の教室数と生徒数を誇るリーディングカンパニーである。これまで47都道府県すべてに拠点を築き、約200万人の卒業生を輩出した。

現在、中期経営計画「MEIKO Transition」を掲げ、少子化という構造的変化に対応すべく、学習塾事業にとどまらない事業ポートフォリオの変革を推進中だ。幼児からシニアまでを対象とした生涯学習や人材事業への進出、さらに行政や他企業とのアライアンス強化など、既存の枠組みを超えた挑戦を続ける。

「『やればできる』の記憶をつくる」というパーパスを軸に次代を切り拓く経営戦略について、代表取締役社長の岡本光太郎氏に聞いた。

岡本光太郎(おかもと こうたろう)──代表取締役社長
1970年、静岡県生まれ。1995年、ボストン大学経営学部卒業後、日昇自動車販売株式会社、クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社、グロースポイント・エクイティLLPなどを経て、2020年に株式会社明光ネットワークジャパン入社。2023年、取締役副社長。2024年11月より現職。
株式会社明光ネットワークジャパン
1984年、設立。日本初の個別指導塾「明光義塾」をはじめ、さまざまな教育サービス、人材・研修サービスなどを運営・フランチャイズ展開。Purpose(存在意義)を「『やればできる』の記憶をつくる」、Visionを「『Bright Light for the Future』人の可能性をひらく企業グループとなり、輝く未来を実現する」と掲げる。
企業サイト:https://www.meikonet.co.jp/

目次

  1. 「全国のどこにも卒業生がいる」ほど多拠点展開
  2. 元生徒が講師として「明光」に戻る好循環
  3. 子どもだけでなくすべての人が元気になる未来を描く
  4. 明光義塾ならではのクリエイティビティで新規事業創出

「全国のどこにも卒業生がいる」ほど多拠点展開

── 創業から現在に至るまで成長を支えてきた経営戦略や組織づくりについて、教えてください。

岡本氏(以下、敬称略) 当社は今年で42期を迎える会社であり、主に教育事業、特に個別指導型の学習塾を全国で展開しています。現在、教室数は約1660教室、生徒数は約10万名となり、個別指導分野では教室数、生徒数ともに最大規模です。

そもそも個別指導という分野において当社はパイオニアであり、最初にこのビジネスモデルを全国展開し始めた自負があります。この事業を成長させるため、創業当初より直営のみならずフランチャイズ展開を積極的に行い、現在では47都道府県すべてに教室を展開するまでに成長しました。

当社の教育理念は、「個別指導による自立学習を通じて創造力豊かで自立心に富んだ21世紀社会の人材を育成する」です。単に勉強を教え込むのではなく、いかに子ども達が自ら学習する力を育み自立した人材に成長し、大人になるかを支援したいと考えています。

そのため、勉強を教え込むというよりは、カウンセリングやコーチングなどホスピタリティのあるコミュニケーションを通じて生徒のモチベーションを高め、自ら学ぶ自立心を養い、子どもたちの成長を促すことに注力しています。

おかげさまで、これまで約200万人の卒業生を輩出しました。全国どこに行っても、「明光義塾を卒業しました」という方々にお会いすることが多く、社会人として活躍する姿を見るのは大変嬉しいです。

これまでの成長の原動力としては、先ほど申し上げた自立学習を促すカウンセリングやコーチング、ホスピタリティといった強み、そして長年の事業継続によって培われた「明光義塾」というブランド力、認知力の高さが挙げられます。これだけの教室数があるからこその展開力も、成長の大きな要因だと考えています。

── 岡本社長は大学卒業後、まったく異なる業界を経て明光ネットワークジャパンに入社しました。教育業界、学習塾に関心を持ったきっかけは、何だったのでしょうか?

岡本 はい、私は教育業界に携わっていたわけではありませんでした。

もともと参画していた投資ファンドや経営コンサルティング会社での経験を通じて、日本の課題を強く認識しました。日本には素晴らしい会社がたくさんある一方で、世界で通用するリーダーが不足している、あるいは、事業承継問題が深刻化している現状があります。未来を拓く経営者が枯渇しているのです。

その原因として、日本の基礎学力は非常に高いにもかかわらず、若者の自己肯定感や未来への期待、自信といった項目においては、世界的に見てほぼ最下位である状況です。学力の土台はあるものの、未来に希望を持てず、欧米や東南アジアの国々と比べて日本は大きく遅れを取っていると感じました。

この根本的な課題を何とかしなければ、日本の未来を担うリーダーは生まれません。結果として、家族をもって子どもをつくることやイノベーションを発揮して起業する挑戦することといった選択肢も狭まり、少子化・人口減少にもつながっているとも思います。これらの問題は、教育から変えることで、日本の輝く未来を実現したいと考えます。

日本には素晴らしい文化と伝統があり、ポテンシャルにあふれた国です。子どもたちが自分たちの未来を明るく感じ、ワクワクできるような社会にして、明るい日本にしたいと思ったことが、入社のきっかけです。

── これまでの道のりの中で、事業構造や資本政策など特に大きなターニングポイントとなったできごとを教えてください。

岡本 「明光義塾」は、これまでになかった個別指導というジャンルを切り拓き、市場に受け入れられて成長しています。しかし、設立から30年ほど経ったころ、少子化や同業他社との競争激化など外的環境の変化に直面し、これまでの成長から一転、踊り場を迎えました。教室数や生徒数が減少した時期もありました。

そこで当社はインオーガニックな成長を見据えたM&Aや学習塾以外の新規事業にも着手し、たとえば学童保育(アフタースクール)事業や最近では人材事業などを積極的に展開しています。現在の中期経営計画では、「MEIKO Transition」を掲げ、明光義塾事業の一本足打法から日本のさまざまな社会課題を解決する事業を複数展開することを目指しています。

元生徒が講師として「明光」に戻る好循環

── 少子高齢化について、特に学習塾業界は構造自体が激変していると思います。選ばれる塾とそうでない塾が二極化する中で、環境の変化はどうでしょうか?

岡本 ご指摘の通り、学習塾の倒産件数は毎年過去最高を更新しており、閉鎖する塾が多いのが実情です。これは、継続が難しい塾と選ばれる塾との格差が明確になっていることを示しています。

顧客から選ばれ、生き残るためには、以下の3つの投資のポイントが重要だと考えます。一つは人的資本への投資、二つ目は環境投資、そして三つ目はシステム・AI投資です。これら未来への投資をしっかりできる事業者が、今後も地域で選ばれ、安定して成長すると考えられます。反対に積極的な投資を行わない事業者は、厳しい状況が続くと見ています。

ただし、子どもの数は減っていますが大学進学率は依然として高く、学習塾が果たす役割はこれからも大きいでしょう。その中で、いかにして生徒を増やし選ばれ続けるかが、今後の明光義塾の成長につながると考えています。

── 人的資本への投資という点で、講師のレベルを統一するなど教育の質を担保するための工夫を教えてください。

岡本 まず課題として、講師の採用も難しくなっています。特に地方では、質の高い講師の確保が困難な時代となりました。

当社が大切にしているのは、「明光」というブランドへのエンゲージメントです。生徒として通っていた方が大学入学後も講師として働き、その後、「明光ネットワークジャパン」に就職するという循環が生まれています。新卒採用の約半数は、こうした講師経験者です。

生徒と講師という関係性から、講師になった方が後輩である生徒を指導するという流れは、非常に良い循環です。彼らは「明光」の良さを理解していますから、質の高い指導とアドバイスにつながります。

さらに、大学生が講師として働く経験は、単なるアルバイト収入以上の価値を提供します。将来の就職に向けた貴重な自己成長のある経験となるからです。研修なども含めて支援することで、「明光で働く価値」を広く訴求しています。

── AIやデジタル教材が普及する中であえて人が担うべき役割、あるいは、デジタルとアナログの融合について、どのように考えていますか?

岡本 デジタルの進化やコロナ禍の影響により、ICT教材やAIを活用した教材は驚くほど早く浸透しました。当社としても、教育においてはデジタル教材を積極的に活用しています。

その上で、人と人が介在する価値とは何か、という見方が重要です。当社では、カウンセリングやコーチング、コミュニケーションといった人にしかできない人間的なかかわりを非常に大切にしています。これは、現在のAIでは難しい領域です。

明光義塾においては、「人ができることは何か」「どうすれば生徒がより成長できるのか」という視点で一人ひとりに寄り添い人の介在価値を研ぎ澄まし、そこに注力しています。

子どもだけでなくすべての人が元気になる未来を描く

── 人材事業や外国人材事業にも力を入れていますが、「明光ブランド」を活用し、これらを第二、第三の柱としてどのように育てていくのでしょうか?

岡本 少子化をはじめ、若者の自己肯定感の低さ、生産年齢人口の減少、格差社会など、現代社会にはさまざまな課題が山積しています。当社の事業群は、こうした社会課題に応えるためのソリューションの集合体です。

最近では、発達障害のある子ども達や不登校の子ども達を支援する事業なども展開しています。世の中の変化をニーズととらえ、事業成長の機会とします。

既存の明光義塾ブランドの認知度と全国的なプレゼンスを維持・向上させつつ、変化する環境の中で新しい事業を次々と創出します。これらを通じて、当社は「百年企業」を目指します。幼児からシニアまで、あらゆる人々の成長を支援する総合的な人材育成支援カンパニーが目指す企業としての姿です。

明光義塾の生徒だけでなく、すべての人々が元気になるような、未来を描ける日本を支援できる会社として、これからも発展したいと考えています。

── 社長自身の、経営者としての考え方で、会社がさまざまな変革を進める中、変えるべきことと環境変化があっても変えてはいけないことの判断基準を教えてください。

岡本 私自身も、そして創業以来の当社も、経営理念と教育理念を大切にしています。創業の精神として、約5年前にこれらを踏まえた「パーパス(存在意義)」を策定しました。

「なぜ私たちは存在するのか」という根本的な問いに向き合い、すべての判断軸を「パーパス(存在意義)」に照らし合わせています。

変わらないもの、それは創業の精神と「パーパス」です。創業の精神と「パーパス」を軸として、それ以外のものは変化してよい、志や理念があれば、社会環境の変化やニーズに合わせて柔軟に変化してよいと考えています。当社では、変化し続ける社会課題やニーズを、新たな事業を創出する機会ととらえています。

明光義塾ならではのクリエイティビティで新規事業創出

── 百年企業を目指し規模も拡大していく中で、異なる才能を持つ人材をチームに引き入れる際に、どのような点を重視していますか?

岡本 まさに多様性の時代であり、組織にはさまざまな能力やタレントが必要です。私が社長になってからは、一人で成し遂げるのではなくチームでの仕事が大切だと考え、多様な人材を求めています。各人材の良さを伸ばしたいと考えます。

重視するのは人格、すなわちインテグリティです。特に教育事業をメインとする当社では、道徳観や人としてどうあるかが非常に大切なことです。教室運営はもちろん、本社においてもコンプライアンスを支える上でこの価値観がなくてはなりません。どんなに優秀であっても、インテグリティが欠けている人材は、受け入れられません。

── 新しい取り組みには、同時に「捨てる」ことも必要かと思います。変革を進める中で、社長があえて「変えたこと」や「捨てたこと」を教えてください。

岡本 時代の変化に合わせて、事業の見直しは常に行っています。過去には撤退した事業もあります。重要なのは、それが将来の社会課題の解決につながるか、ニーズがあるかという視点です。ニーズがなければ、独りよがりで続けるのではなく、発展的に見直す必要があります。

たとえば以前、医系大学向けの予備校事業を行っていた時期がありました。当時は医学部進学のために全寮制で全国から集まって学ぶニーズがありましたが、現在、その形は変化しています。予備校という形も、コロナ禍を経てさらに変化しました。

こうした環境変化の中で、私たちがつくるべき価値は何か、安定的に価値を提供し続けられるか、という視点で事業を進めています。そして、新しい事業を積極的に創出していくことが、結果的に成長につながると考えています。

── 長い歴史の中で、新しいことにチャレンジしていくカルチャーがあったのでしょうか?

岡本 もともと創業当時の明光義塾自体が非常にクリエイティブでイノベーティブな事業だったと感じています。偏差値教育が重視されていた時代に自立学習による個別指導というビジネスモデルを構築し、それを全国展開し、フランチャイズの仕組みに乗せたことは、当時としては画期的でした。そのDNAは、今も受け継がれています。

社内でも新しい事業をつくることに前向きで、会社の創業の精神と「パーパス」に合致するか、社会課題の解決、新しい未来への価値創造につながるか、といった判断軸で取り組んでいます。創業の精神と「パーパス」を実現できる事業であれば、皆がワクワクして取り組んでくれます。

── 次の10年、20年を見据えた経営者としてのビジョンを教えてください。

岡本 当社のパーパスは「『やればできる』の記憶をつくる」です。これは、当社事業の原点です。パーパスに基づき、ビジョンは「人の可能性をひらく企業グループとなり輝く未来を実現する」を掲げています。

これまでの子ども達だけでなく、幼児からシニアまで幅広いみなさまの成長支援につながる事業を数多く創出したいと考えています。それが日本の輝く未来、明るい未来につながるのであれば、これ以上のやりがいはありません。

「人の可能性をひらく」ということは、お客様だけでなく、当社の従業員一人ひとりにも当てはまります。仕事を通じて成長し、それぞれの未来を自らつくれるような組織を目指します。

氏名
岡本光太郎(おかもと こうたろう)
社名
株式会社明光ネットワークジャパン
役職
代表取締役社長

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