株式会社ハウス オブ ローゼ

1978年の創業以来、「素肌みがき」をコンセプトに、天然由来成分にこだわった商品を提供してきた、株式会社ハウス オブ ローゼ。店舗で顧客が商品を試せる環境を重視する同社にとって、先ごろのコロナ禍や地方百貨店の閉店が相次ぐ今、その環境に合わせた変化の真っただ中にある。

そこで2024年、社長に就任した川口善弘氏は、原点である店頭での体験価値を最大化しつつ、EC強化やブランド拡充による事業構造の変革を推進する。企業としての伝統を守りながら進化を続ける同社の戦略と未来への展望を、川口氏に聞いた。

川口善弘(かわぐち よしひろ)──代表取締役社長。
1960年、熊本県生まれ。1983年、横浜市立大学商学部卒業、株式会社ノエビアに入社。2009年、同社取締役に就任。2014年、ハウス オブ ローゼに執行役員として入社。取締役を経て、2024年に代表取締役社長就任。
株式会社ハウス オブ ローゼ
1978年創業。「素肌みがき」を通して一人ひとりの自分らしい美しさを育む、をコンセプトに天然由来成分を配合したスキンケア化粧品・メイクアップ化粧品・ヘアケア・ボディケア・バスプロダクツ、雑貨品等を販売。その他、「リラクゼーションサロン事業」、「カーブス事業」も運営。
企業サイト:https://www.houseofrose.co.jp/

目次

  1. 「素肌みがき」の理念で盛衰激しい業界を生き抜く
  2. コロナ禍を機にECを強化、ポートフォリオを拡大
  3. 地方百貨店の閉店ラッシュにどう立ち向かうのか
  4. 人口減でも美容業界に見出だせる希望
  5. 「確かめる場所」としてのリアル店舗の意義

「素肌みがき」の理念で盛衰激しい業界を生き抜く

── ハウス オブ ローゼは、化粧品業界の中でも長い歴史を持つ企業ですね。

川口氏(以下、敬称略) 当社は1978年に創業しました。化粧品業界の中では、老舗に近い立ち位置です。創業当時は、自然派化粧品がまだ少なかった時代でした。それが追い風になり、当社は成長を遂げました。

私たちは、化粧品会社として一貫して大切にしていることがあります。それは、人の手を通して肌に向き合うことです。当社の売上の多くは、百貨店や駅ビルなどの商業施設に出店する直営店によるものです。店頭でお客様に商品を試していただき、ご納得のうえでご購入いただきます。

この店頭における体験価値が、私たちが最も重視していることです。独自の接客方法として「ハンドウォッシュ」というものがあります。商業施設の化粧品売場で、水が流れる台を見たことがあるかもしれません。実は、あの設備は当社が草分け的存在で、最初に導入しました。

今から約40年前に、この接客方法を確立しました。単に手元で商品を試してもらうだけではありません。お客様の手の甲をお顔に見立てて正しい洗顔方法をお伝えします。優しく洗うことの大切さを実際に体験しながら感じてもらいます。

── なぜ、伝えるところまでするのでしょうか?

川口 当社には「素肌みがき」という理念があります。これは、頭の先からつま先までを正しい方法で洗い上げ、その美しさを持続させることです。素肌みがきの理念を店頭でお客様に伝える手段がハンドウォッシュです。ご自宅に帰ってからも商品を正しく使っていただくためのアドバイスをいたします。

店頭での体験価値を最大化する考え方は40数年間変わりません。全国に約170ヵ所ある直営店で、当社のスタッフが素肌みがきを実践しています。お客様との関係を構築し、その後の長いお付き合いにつなげます。これが、当社が長年続いてきた大きな要因です。

── 看板商品についても教えてください。

川口 代表的な商品は、ボディ用マッサージペーストの「ボディ スムーザー N」です。Oh!Babyの愛称で親しまれ、40数年の歴史があります。また、お顔用の洗顔料「ミルキュア」も人気です。当社は、世間でいうところの角質ケアを得意としています。

── どのような方が愛用しているのでしょうか?

川口 店頭で試して肌がつるつるになることを実感し、購入されるお客様が多いです。親子三代で愛用してくださる方もおり、大変ありがたいことです。当社を信頼してくださるお客様に支えられながら、50年近く商売を続けています。一方、売上はまだまだ拡大余地があると考え、認知度向上に努めています。

コロナ禍を機にECを強化、ポートフォリオを拡大

── 社長就任以降、感じている組織の課題はありますか?

川口 時代の変化に対応することは不可欠です。昔からのやり方だけでは、これからの世の中では通用しません。それをあらためて実感したのはコロナ禍でした。リアル店舗が強みである分、対面販売の制限や商業施設が休業した影響は甚大でした。

浮き彫りになったのがEC分野への出遅れです。これをきっかけに、遅まきながらECへの注力を始めました。直営店の売上は、会社全体の約7割を占めています。もちろん今後もリアル店舗の売上を中心に位置付けていますが、直営店だけに依存しない体制が必要です。

事業ポートフォリオの見直しも進めています。昨年には、他社から「ママバター」というナチュラルコスメブランドを取得しました。これを卸売りやEC専用商品の柱の一つとして育てます。

ただし、素肌みがきの考え方やリアル店舗での体験価値を重視するという軸はブレません。その軸を維持しながら、ほかの領域でも重要な顧客接点を増やします。

以前に比べると事業のラインを複数設ける形に変化しました。商品軸や販売チャネルの幅を広げ、全方位でお客様にアプローチします。

── ターゲット層の拡大についても取り組まれているのでしょうか?

川口 若年層向けの商品「Oh!Babyシリーズ」や、限定された百貨店に展開する「Be Prime(ビープライム)」専用商品などがあります。お客様の層に合わせた商品構成を整えました。

地方百貨店の閉店ラッシュにどう立ち向かうのか

── コロナ禍を振り返ると、他にどのような変化があったのでしょうか?

川口 コロナ禍は、接客方法を見直すターニングポイントにもなっています。当時は、お客様の肌に触れる接客が困難でした。そのため、距離を保った接客やお客様ご自身でハンドウォッシュ体験していただく方法を導入しました。スタッフが説明しながら、お客様が自分の手で使い方を知るスタイルです。

他の危機として、リーマンショックや震災もありましたが、コロナ禍の影響が最も大きかったと感じています。コロナ禍以外の厳しい時期にも、例えば震災による物流拠点の見直しなどはありましたが、業績への響き方はもう少し緩やかでした。

一方、現在直面している課題として、地方百貨店の閉店があります。当社の直営店は百貨店がメインの出店先です。

── 百貨店は各社とも縮小傾向にありますが、地方のみが厳しいということでしょうか?

川口 都心の百貨店は、富裕層やインバウンドのお客様がおり好調です。しかし、地方の百貨店は不採算による閉店が相次いでいます。本当に厳しい状況です。再開発による閉店もあり、出店場所がなくなることは大きな逆風です。

当社単体で見ると、既存店ベースの数字は順調ですが、店舗数が減るため全体では苦戦しています。この状況をプラスに変えるためにも、直営店だけに頼らない体制が必要です。

そこで、ECや卸売りの売上を伸ばし、事業ポートフォリオを再構築します。現在は、まさにその過渡期にあります。

人口減でも美容業界に見出だせる希望

── 社長就任時に打ち出した大きな方針について、教えてください。

川口 就任から1年半が経過しましたが、まず「素肌みがき日本一の会社」を掲げました。これは社員の意識改革を目的としています。業績が横ばいだと、どうしても社内の雰囲気が暗くなります。そこで再度、私たちの原点である「素肌みがき」を見直すことにしました。

化粧品に携わる人間としての矜持をしっかり持つことが重要です。店頭活動を最大化し、お客様に信頼されるブランドを目指します。

もう一つの方針は、デジタル化の推進です。スタッフが働きやすい環境をつくるためのデジタル化を進めています。

美容の仕事において顧客管理は大切です。いかにお客様への接客レベルを上げるかが重要になります。以前は紙ベースでしたが、現在はすべてデジタルでお客様情報を管理しています。過去の購買履歴や肌の特徴を即座に把握した上での接客が可能です。

これにより、スタッフは以前より接客しやすくなりました。お客様にとっても、どの店舗に行っても同じサービスを受けられるメリットがあります。ポイントサービスの共通化など、利便性の向上も図っています。

この1年間で、デジタル化による変革を急速に進めてきました。

── 今後の美容業界の構造変化については、どのように考えていますか?

川口 日本の人口減少により、総需要が伸びにくい状況は間違いありません。しかし、美容や健康はすでに生活の一部となっています。人口は減っても、美容と健康の分野にはまだ十分な成長の余地があります。

その中で、価値の二極化が進むでしょう。

安さを求める層がある一方で、機能性や体験、信頼を重視する層も残ります。私たちは、お客様にとって品質が高いと実感を持てる、信頼を寄せられるブランドであり続けたいです。

「確かめる場所」としてのリアル店舗の意義

── リアル店舗の役割は、今後どのように変わると予測しますか?

川口 流通の再編が起こると感じています。店舗は単に「買う場所」から、商品を「確かめる場所」へとシフトします。情報の収集だけであれば、インターネットで調べたほうが早い時代です。お客様のほうが知識に詳しい場合さえあり得ます。

しかし、実際の使い心地を確かめることはリアル店舗でしかできません。いかにお客様が心地よく体験できる場所をつくれるかが生き残りの鍵です。体験価値を高められない店は、淘汰されるかもしれません。ECもお客様との関係をより深める場所へと進化させる必要があります。

── 最近では美容医療も普及していますが、化粧品の立ち位置はどう変化しますか?

川口 美容医療を否定はしませんし、私自身も体験したことがあります。しかし、医療と化粧品はまったく別の世界です。

医療は年に数回の特別な処置かもしれませんが、化粧品は日常生活そのものです。毎日気持ち良く使い、使うことで元気になる。それが化粧品の価値です。また、美容医療に興味がある人ほど、日常の化粧品にもこだわります。

化粧品は医薬品ではないため、劇的な効果・効能をうたうことはできません。しかし、日々の生活に溶け込み、安全に使い続けられる心地良さを提供できます。テクスチャーや香りを楽しみ、自分に合うものを見つける喜びは、化粧品ならではのものです。

だからこそ、実際に試して納得できるリアル店舗の価値は絶対になくなりません。スタッフとの会話や人間関係を含めたショッピングの楽しみを提供し続けます。

── 次の10年に向けた展望を教えてください。

川口 ブランドの中核である素肌みがきを、さらに深化させます。これからの時代に重要なのは、「信頼の設計」です。

かつては広告の強さが化粧品会社の強さでした。しかし今は、実際に使った方の口コミや信頼が最も大きな影響力を持ちます。

お客様から信頼され感謝される販売活動を続けるしか方法はありません。あと2年で創業50年を迎えますが、さらに次の50年に向けた設計を今、行っています。

素肌みがきを軸に、信頼されるブランドとして成長する。この方針を次の10年、20年の柱として進めます。

氏名
川口善弘(かわぐち よしひろ)
社名
株式会社ハウス オブ ローゼ
役職
代表取締役社長

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