株式会社robot homeは、「テクノロジーで、住宅を変え、世界を変えていく。」を経営理念に掲げる不動産テック企業だ。AIやIoTを活用したスマートホーム事業と、不動産投資を土地選びから建築、管理まで一気通貫でサポートする「robot home事業」を両輪に成長を続ける。
斬新なビジネスモデルを背景に、ストック領域の営業利益率は50%を超え、自己資本比率も70%を超える。不動産市場における独自の地位を確立する戦略と展望を、robot homeの古木大咲代表に聞いた。
企業サイト:https://corp.robothome.jp/
アプリで家を貸す・借りるの利便性を向上
── 未来を感じさせる社名ですが、具体的にどのような事業を展開しているか、教えてください。
古木氏(以下、敬称略) 当社は今年で20期目になります。上場してからは11年目です。
事業は2つあり、1点目がAI・IoT事業です。こちらはスマートホームの事業となります。自社開発したスマートフォンアプリを使ってオートロックの解錠をしたり、部屋の家電の電源を入れたりといったことを実現することで、不動産の価値向上を図る事業です。
もう一つが、土地から始めるアパート経営「robot home」を提供するrobot home事業です。こちらはアパート経営をしたい方々を、ワンストップで支援するサービスを提供しています。土地の選定から建築、管理を、アプリやウェブ上でできるサービスです。
── AI技術が発展していますが、技術革新はrobot homeの事業でどのようにポジティブな効果を生み出しているのでしょうか?
古木 当社自体が不動産×テクノロジーをテーマにしている会社で、AIを含めた新たなテクノロジーを強みとしています。
われわれは賃貸住宅を建てていますが、ただ単に建てるのではなくスマートホーム化しています。先ほども少し触れたように、スマートフォンからの通話でオートロックを解錠するシステムを独自開発しました。
これは、再配達の課題解決にもつながるものです。不在時に宅配業者が来ても、家の中に置き配ができるからです。このように、建物自体のスマートホーム化がさまざまな課題解決につながります。
こうした機能を利用するため、入居者はわれわれが開発した「入居者アプリ」を使います。賃貸契約をする際、単に「入居者アプリをダウンロードしてください」というだけでは、利用されません。
しかし、われわれのアプリはオートロックを解錠したり部屋のエアコンをコントロールしたりと生活に紐づいているので、必ず使われるものです。このアプリの中には、管理会社とやり取りをするチャットを搭載していたり、マニュアルが入っていたり、さまざまな情報があります。
── たしかに便利さが感じられます。
古木 もう一つ、アプリがあります。オーナー向けの「アパート経営アプリ」を提供しており、そのアプリ上でオーナーはアパートの経営管理ができます。ご自身の所有する不動産の状況を確認したり、分からないことをチャットで確認したりできます。清掃の報告なども、アプリ上で写真付きで報告されます。
不動産経営を始めると、退去者が出た際の家賃設定や原状回復費用など、管理会社とのやり取りが面倒ですが、それをアプリ上で手軽にできる体制を整えています。
リテラシーの高い不動産投資家ならではの悩みに対応
── robot homeの強みを教えてください。
古木 われわれのビジネスの強みは3つあります。
1つ目は、個人投資家向けのアセットマネジメントです。プロの不動産投資家はアセットマネジメント会社に依頼して、投資方針の決定から物件取得、運用、出口戦略まですべて任せますが、われわれはそれを個人に対して提供しています。
最初にお客様の資産状況がわかるプロフィールシートに詳細を入力していただき、現金預金、借入金、年収などを把握した上で投資方針を決め、物件の取得から運用、出口戦略まですべて行っています。
2つ目は、アセットライト(保有資産を最小限にする)なビジネスモデルです。不動産会社は在庫と借り入れが多い傾向があります。100億円の不動産を取り引きするためにまず借り入れをし、1年が経って売り上げが立つといった形が一般的です。
しかし、われわれは取得した土地をお客様に紹介し、売却した上で建築受注します。そのため、土地の回転率が高く、アセットライトです。
3つ目は、ストック型のビジネスです。建てて販売するところではあまり儲けずに、管理で収益を上げるビジネスモデルです。現在、管理戸数が2万8000室あり、ストックの営業利益率が50%ほどあります。
これらがわれわれの強みです。
── 不動産投資の経験や資産がある方向けの事業という印象を持ちました。
古木 その通りです。お客様は、平均年齢が49歳、平均年収が2300万円、純金融資産が1億円程度の方々です(2025年度新築購入者)。 ハイレイヤーで金融リテラシーが高い方であり、区分マンションのように年収400万〜1000万円で初めてマンションに投資するというような方とは異なります。
一方、いくらリテラシーが高いお客様でも、ご自身ですべてを行うのは非常に難しいのが、不動産投資の現実です。特に、良い土地情報を得るのが難しい。ハイレイヤーの方であってもインターネット上の情報だけでは、優良な土地を見つけることは困難です。
しかし、当社には仕入れ専門の社員が20人ほどおり、独自のネットワークを駆使して土地を取得しています。こうして良い土地を紹介できる他、スケールメリット(今期は160棟、約1600〜2000室を建築予定)により建築費も安く抑えられます。
結果として、不動産会社の社長がお客様になることも少なくありません。ご自身でやるよりも、プロに任せた方が条件も良く、圧倒的に早いからです。
広告よりコミュニティ運営での信頼確保で成長
── 2024年12月期に売り上げが100億円を突破しましたが、その要因はどこにあるのでしょうか?
古木 一番の理由は、物件の立地が良いという点に尽きます。2026年度開発目標160棟のうち、ほとんどが1都3県で、特に23区に重点を置いています。駅から徒歩10分圏内で賃貸需要の高いエリアを厳選しており、たとえば最近販売している物件は東池袋駅から徒歩8分といった好立地です。
そこにデザイン性の高い木造アパートを建築しています。RC造のマンションを建てると利回りは2〜3%程度になってしまいますが、当社の物件は利回り5.5〜7%程度を確保しています。良い物件をつくれば当然コストは高くなりますが、投資家の方からすれば利回りを確保するために少しでも安く買いたいわけです。
また、当社は昨年、販売事業の売上が201億円であったのに対して、営業利益は約17億円。利益率は、仲介手数料などを含めても6%程度です。通常の不動産販売ビジネスでは15%から20%程度の利益を取りますが、当社はフローの販売事業で過度な利益を追求していません。
一方で、ストック型の管理事業の営業利益率は53%に達します。管理戸数2万8000室で入居率98〜99%を維持しており、売り上げ30億円に対して営業利益が16億円出ています。ストック事業で十分に儲かっているため、販売事業では利益を削って良い商品を安く提供できるのです。
そして、管理受託によるストック領域では50%程度の営業利益率を生み出せます。かつての携帯電話のビジネスモデルと同じで、端末を安く提供して通信料で稼ぐという考え方です。
多くの不動産会社は物件を「売る」ことでしか利益を出せず、管理は外注して利益が出ないため、販売時に大きな利益を乗せる必要があります。当社は利益構造そのものが他社と異なり優位性があるため、売り上げが急激に伸びているのです。
── マーケティングや集客について、工夫しているポイントはありますか?
古木 ご紹介によって利用に至るお客様が、非常に多いです。先ほどお話した平均年齢が比較的高く平均年収も2300万円といった層は、インターネットの広告を見てすぐに2〜3億円の物件を買うような行動はとりません。
たとえば、上場企業の役員が別の同じレイヤーの方に当社を紹介され、紹介された方も「実際に経営してみたが、商品もその後のサポートも良かった」といった口コミを広めてくださいます。
実は、戦略的にあえて広告を打っていなかった時期もありました。売り上げが急伸した2023年から2024年にかけては広告を出していません。広告展開を本格化させたのは、つい最近のことです。
よって、昨年の240億円という売り上げは、ほぼ紹介だけで達成しました。紹介だけでこれだけビジネスが拡大するということは、ビジネスモデルが圧倒的に強い証拠です。いくら広告費をかけて集客しても、成約しなくては意味がありません。
紹介で自然にお客様が増えるほどの強力な基盤があるからこそ、広告からの集客でも他社と比べて圧倒的に高い成約率を維持しています。
── 不動産オーナーのコミュニティを運営しているとも聞きました。
古木 はい。東京、大阪、名古屋、福岡、仙台で毎月「オーナー経験シェア会」を開催しています。50人ほどのオーナーに集まっていただき、5人ずつのテーブルに分かれてお1人につき約7分間、ご自身の生い立ちや不動産投資の経験、現在の経営状況などを語り合うものです。
なぜこのようなコミュニティを運営しているかといいますと、当社の営業がお客様にお話してもポジショントークに聞こえてしまうからです。そこで「実際に当社のオーナーを見てください」とご案内しています。
新規のお客様が、ご自身と同じような年収や属性の方々が当社で物件を買って経営していることを実感されれば、それが一番の信頼につながります。
これからのAIの進化を考えると、アセットマネジメント、物件選定など、不動産業界の実務のほとんどをAIが代替するようになるでしょう。一方、業務の多くがAIに置き換わったとしても、人間にしかできない役割があります。
それが「コミュニティの運営」だと、私は考えています。優秀なオーナーたちが集まるコミュニティそのものに価値があるため、当社はコミュニティ運営に力を入れているのです。
── 富裕層の方々は孤独を感じている場合が少なくないので、コミュニティの仕組みは非常に有効ですね。
古木 上場企業の役員でも不動産を持てば、「経営層」から立派な「不動産経営者」になります。一般的な大家向けコミュニティなどは、ご自身でDIYをして経費を削るといった方向性のものが多く、ハイレイヤーの方々の志向には合致しません。彼らが求めているのは、優良物件を所有し健全に経営するための情報交換の場です。
また、ビジネスモデルとコミュニティを確立したため、営業担当者は無理やりなセールスをする必要がありません。2024年4月に入社した新卒社員5人が、すでに当社の主力営業として活躍しています。
お客様がオーナーイベントにお越しいただき、先輩オーナーと交流してご納得いただいた上で購入されるので、営業の仕事は「売る」ことではなく契約や決済などの「手続き」です。現在はこのコミュニティ活動をさらに広げ、ゴルフなどの趣味のイベントや旅行なども企画しています。
潤沢な手元資金を生かしさらなる拡大を狙う
── 社内の環境、働きやすさについて、教えてください。
古木 現在、社員数は約240人ですが、営業担当は15人ほどしかいません。ほとんどが管理やIT開発担当です。
社員の55%が女性で、平均年齢は34.9歳、平均年収も他社より高く設定しています。有給消化率は84.3%、産休・育休からの復帰率も100%、男性の育休取得率は80%と、非常に働きやすい環境を整えています。
経営者が資金繰りで苦しんでいると、どうしてもトップダウンの厳しい組織になりがちです。特に不動産会社は売り上げを伸ばすために借り入れをして物件を仕入れるため、フリーキャッシュフローが赤字になりがちな傾向があります。
しかし当社は昨年、営業利益17.6億円に対してフリーキャッシュフローが10億円のプラスと、キャッシュを積み上げている会社です。実質無借金でなおかつストック収益が安定しているため、組織風土もフラットです。
── 投資家視点では、積み上げたキャッシュの使途や株主還元、今後の成長戦略などが気になります。展望を教えてください。
古木 使い道の一つとしては、やはり株主のみなさまにしっかり還元したいと考えています。当然、株価を意識していますので、その意味でも株主への還元は重要です。
もう一つは、M&Aです。実際に数社とお話していますが、企業評価額が高騰しているケースも多く、今のところは無理をして買う必要はないと判断しています。自分たちで会社を伸ばした方が早いと考えており、良い会社があれば検討するというスタンスです。
現在は現預金が75億円ありますが、数年後には170億円規模まで積み上がる見込みとなっています。資金的な余力は十分にあります。
今後は、金利の上昇が見込まれます。借り入れの多い不動産会社にとっては厳しい環境になる一方で、実質無借金で自己資本比率が70%以上ある当社にとっては、逆に大きなチャンスです。
これからも、ITとコミュニティの力を最大限に生かし、質の高い不動産経営サービスを提供し続けます。
- 氏名
- 古木大咲(ふるきだいさく)
- 社名
- 株式会社robot home
- 役職
- 代表取締役

