株式会社ZEAL

創業者のプロボクサーとしての経験とマーケティングの知見を掛け合わせ、ボクシングフィットネス事業「ZEAL BOXING FITNESS」を展開する株式会社ZEAL。創業2期目にして、すでに全国56店舗を出店しており、成長のさなかにある。

同社が着目したのは、ボクシングの「高い認知度にもかかわらず、少ない体験者の数」というギャップだ。プロの技術指導やオペレーションの簡略化、本部による店舗運営の請け負いにより、誰もが本格的なボクシングを楽しめる場を創出した。

今後は全国2000店舗を目標に掲げ、テクノロジーを活用したアバター対戦などの新たなフィットネス体験の構築やIPOも見据える。同社の代表取締役社長である渡會雄一氏に、ジムの具体像と成長戦略を聞いた。

渡會雄一(わたらい ゆういち)──代表取締役社長
1982年、東京都生まれ。プロボクサーとして活動後、株式会社リクルートに入社。運用型広告事業や2度の起業を経て、リノベる株式会社の取締役CMOに就任。同社のマーケティング戦略を統括する。2024年、ZEALを設立。現在は「ZEAL BOXING FITNESS」の運営を軸に、フィットネスジム事業に注力。
株式会社ZEAL
2024年、設立。スポーツの力とテクノロジーを掛け合わせ、「楽しく、健康に」を体現するパーソナルボクシングジム「ZEAL BOXING FITNESS」を展開。ボクシングの技術とコンディショニングメソッドを融合し、ただ鍛えるだけの「辛い健康」から誰もが夢中になれる「続く健康」への転換を目指し、心身を整える新しい体験を提供。
企業サイト:https://zeal-b.com/

目次

  1. 認知と体験のギャップが大きいボクシングを事業に
  2. 海外に比べ圧倒的に少ないフィットネス人口とZEALの戦略
  3. エアロビクスの延長でない、本物のボクシングを楽しめる場に
  4. 飛躍的な成長を支える「ボクシング」というコンテンツの力
  5. ゲーム要素を取り入れ新しい顧客体験を構想

認知と体験のギャップが大きいボクシングを事業に

── ZEALの事業概要を教えてください。

渡會氏(以下、敬称略) 弊社は、ボクシングを中心としたフィットネスジムを展開しています。創業からまだ二期目と、まさにスタートアップの段階です。

ZEALを設立する前に、別の会社で一号店を立ち上げ、そこで一定の成果が見えたことからフランチャイズ展開を開始しました。現在、全国で56店舗の出店が完了しています。

── 起業に至った背景にはどのような思いがあったのでしょうか?

渡會 私はプロボクシングを引退後、ビジネスの世界に身を置き、特にマーケティングの分野で15年ほどコンサルティング会社を経営していました。将来的にグローバルな舞台で挑戦したいという思いがずっとあったのですが、コンサルティング業ではその実現が難しいと感じていたことが背景にあります。

そのため、事業会社を立ち上げたいと考えていました。マーケティング会社を経営しながらも、小規模な店舗やメディアの買収など、さまざまな事業に挑戦してきましたが、なかなかこれだと確信できるものに出会えませんでした。

そんな中で注目したのが、フィットネス業界です。この業界は、世界的に見てもまだ進化の余地が多く、イノベーションを起こせる可能性を秘めていると感じたのです。特に、私がしていたボクシングというスポーツは、多くの人が認知しているにもかかわらず、実際に体験したことがある人は少ないというギャップがあります。

この「認知度と体験のギャップ」に着目し、誰もが気軽にボクシングを体験できる場を提供することで、フィットネス業界に新しい風を吹き込めるのではないかと考えました。これが、現在の事業に至るまでの経緯です。

海外に比べ圧倒的に少ないフィットネス人口とZEALの戦略

── コロナ禍を経て健康意識は高まっているように感じますが、フィットネス業界全体のポテンシャルについてどのように考えていますか?

渡會 おっしゃる通り、健康意識は高まっていますが、日本のフィットネス有料化率はまだ7パーセント台と、アメリカの30パーセントと比較すると非常に低いのが現状です。コロナ禍で健康への関心は確かに高まりましたが、未だ運動習慣がない人の方が圧倒的に多いのです。

シンガポールでも同じ数値がすでに19パーセントを超えていると考えると、日本市場にはまだまだ大きな伸びしろがあると考えています。これから本格的な波が来ることを期待しています。

── 全国2000店舗という壮大な目標を掲げられていますが、その出店加速の背景にある「勝ち筋」とは何でしょうか?

渡會 まず、日本には体を動かす場所が圧倒的に少ないという現状があります。大型ジムが一つのエリアに一つある程度で、わざわざ電車に乗ってまで運動しに行く人は少ないでしょう。

私たちは、トレーニングではなく「スポーツ」としてボクシングを気兼ねなく楽しめる場を増やすことが、重要だと考えています。

では、スタートアップがこれほどのスピードで店舗を拡大できた要因は何かというと、店舗経営のシンプル化です。フィットネス業界は、デジタル化やキャッシュレス化を進めることで、現場のオペレーションを大幅に簡略化できます。

こうして現場スタッフのレベル感を一定に保ちつつ、顧客満足度を高めることが可能です。この点が、自信を持って店舗を増やせる一つのポイントだと考えています。

── フランチャイズオーナーを増やす上で、人材育成の仕組みはどのように構築しているのでしょうか?

渡會 弊社は、トレーナーを必ず店舗に置いています。採用で非常に強いアドバンテージがあるからこそ、実現できるものです。プロボクサーやチャンピオンクラスの人材に、ボクシングジムであるZEALで働くことの魅力を訴求できるため、非常に優秀な人材が集まりやすいのです。

プロボクシングジムの数は年々減少しており、フィットネス分野への展開を考える人材は多くありません。そのため求人媒体でも、驚くほど効率のいい応募単価で人材を獲得できています。これは、他の業界ではなかなか真似できない強みだと考えています。

── 店舗運営の委託という仕組みも、オーナーにとっては大きなメリットですね。

渡會 はい。現在、一店舗を除きすべての店舗運営を本部が請け負っています。これにより、フランチャイズオーナー様は店舗のマネジメントに煩わされることなく、オーナーとして事業に参加できるのです。これが、加盟店獲得を加速させている大きな理由の一つです。

エアロビクスの延長でない、本物のボクシングを楽しめる場に

── 他社との差別化について、どのような点を重視していますか?

渡會 純粋なボクシングジムのチェーンとしては、すでに日本一であると自負しています。そのため、直接的な競合は少ないと考えています。一方で、ピラティス、ヨガ、キックボクシングジム、パーソナルジムなど、広義のフィットネス業界全体との差別化は重要です。

私たちの強みは、ボクシングそのものを本格的に体験できる点にあります。エアロビクスの延長でボクシングの動きを取り入れたプログラムは多く存在しますが、それらは本格的なボクシングとは異なります。

私たちは、プロのボクサーや日本チャンピオンクラスのトレーナーが指導にあたることで、本格的なボクシング体験を提供しつつ、敷居の高さを感じさせないフィットネスとしてのポジショニングを確立しています。これが、私たちのUSP(Unique Selling Proposition。独自の価値や強み)です。

── トレーニングの継続性という点では、どのような解決策を考えていますか?

渡會 フィットネス業界の大きな課題の一つは、継続率の低さです。これは、マーケティングがボディメイクに偏りがちであること、そしてトレーニング自体が「つまらない」と感じられることに起因すると考えています。

私たちは、単に痩せることを目的とするのではなく、スポーツそのものの楽しさを提供することで、運動習慣の定着を目指しています。

たとえば、ハンドボールを楽しさや上達したいという気持ちから始める人がいるように、ボクシングも同様に、楽しさを追求することで自然とトレーニングへの意欲が湧き、継続につながるでしょう。

スポーツ本来の「高揚感」や「楽しさ」を日常的に味わえる環境を提供することが、私たちの原点であり、目指す姿です。

飛躍的な成長を支える「ボクシング」というコンテンツの力

── これまでの飛躍的な成長を遂げた秘訣は何だと分析していますか?

渡會 ボクシングというコンテンツの持つ力は、非常に大きいと考えています。ボクシングという言葉を知らない人はほとんどいませんが、しかし実際に体験したことがある人は少ない。

繰り返しになりますが、この「認知度と体験のギャップ」が、私たちのビジネスの核となっています。多くの人がボクシングを知っているからこそ、私たちの提供する「誰もが気軽にボクシングを体験できる場」というコンセプトに強く惹きつけられるのです。

パーソナルジムや24時間ジムのフランチャイズは、差別化が難しくオーナーも飽和状態にあると感じています。そのような中で、ボクシングという誰もが知っているが体験者は少ないというユニークなコンテンツを提供することで、大きな反響を得られました。

広告の反応も非常に良く、これが急速な拡大につながったと考えています。

── なぜこれまでボクシングジムのチェーン展開が少なかったのでしょうか?

渡會 その理由は、従来のボクシングジムの多くが「プロ選手の育成」を主目的としていた背景にあります。

プロテストや公式戦に出場するためには協会への加盟が必要ですが、独自のルールや一定の費用もかかるため、制度上、多店舗展開が難しい側面がありました。そのため、個人オーナーが1つの店舗を大切に運営する形が業界の主流となっていたのです。

私たちは、プロの育成ではなく「一般の方々のためのフィットネス」に特化するという選択をしました。これにより、従来の枠組みにとらわれない柔軟な多店舗展開が可能になり、新たなビジネスモデルとして全国に広げることができています。

私たちはこの構造的な問題を理解し、新たなビジネスモデルを構築することで、先行者利益を得ることができました。

ゲーム要素を取り入れ新しい顧客体験を構想

── 今後の事業展開や投資領域について、どのような戦略をとっていくのでしょうか?

渡會 まずは、全国2000店舗という目標達成に向けて、しっかりと市場シェアを獲得していくことが最優先です。

その上で、テクノロジーの活用に注力します。体験価値の創造が重要になると考えており、コミュニケーションを軸としたテクノロジー開発に投資していきます。

具体的には、日々のトレーニングデータを基にスマホ上でアバターが成長し、そのアバター同士がボクシングの試合をするようなモデルです。これにより、世界中の人々とボクシングの試合ができるようになり、新しいスポーツカテゴリーの創出を目指します。

育成ゲームとフィットネス体験を組み合わせることで、ジムに行くことが「アプリのランキング一位を目指すため」というモチベーションにつながり、フィットネス体験そのものを変革できると考えています。

── 将来的なIPO(新規株式公開)も視野に入れているのでしょうか?

渡會 はい、VC(ベンチャーキャピタル)も参画しており、IPOは出口戦略の一つとして考えています。ITサービスが成熟期を迎える中で、スポーツと健康という人間の根源的なニーズに応える事業はサステナビリティが高く、AI時代においてもその重要性は増していくと考えています。

ストーリー性のあるこの領域に、ぜひ投資したいと考えてくださる方々がいれば、ともに未来を創造していきたいです。

── 投資家には、どのようにアピールしていますか?

渡會 スポーツと健康は、AI時代においても人間が最も必要とする要素であることが挙げられます。私たちの事業は、ITサービスとは異なり人間の根源的なウェルビーイングと向き合うものです。

もし、この領域に投資したい、共に成長していきたいという方がいらっしゃいましたら、連絡していただければと思います。投資家の方々とともに、新しい未来を築きたいです。

氏名
渡會雄一(わたらい ゆういち)
社名
株式会社ZEAL
役職
代表取締役社長

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