日本の家具市場は長らく、手頃な価格のマス向けベーシック商品か、一部の富裕層向けである非常に高価な高級輸入家具という「二極化」が続いてきた。この固定化された市場に「高級家具の民主化」という旗印を掲げ、2024年5月に旋風を巻き起こしたのがCAGUUU株式会社だ。
同社を率いる中村勇輝氏は、グローバルファストファッションの黒船「SHEIN JAPAN」の元代表という異色の経歴を持つ。そこで培った圧倒的なサプライチェーン構築のノウハウと、オンラインに特化したデータドリブンな販売戦略を武器に、デザイン性と高品質を兼ね備えた家具を驚きの適正価格で提供している。
創業間もないながらも、名だたるVCや本田圭佑氏のファンドから大型資金調達を実施し、すでに時価総額1兆円の「デカコーン」企業を見据える同社。既存の業界構造をいかにしてハックし、日本発のグローバルブランドへと飛躍するのか。その独自の差別化戦略と壮大なビジョンに迫った。
企業サイト:https://www.caguuu.co.jp/
目次
高級家具並みの品質を適正価格で提供できる理由
── 会社の概要と中村社長のこれまでについて教えてください。
中村氏(以下、敬称略) CAGUUUは2024年5月に創業した比較的新しい会社です。主に家具ブランド「CAGUUU」を運営しています。私たちの特徴は大きく二つあります。
一つは、自社アプリや自社のウェブサイトを中心とした販売チャネルに特化していることです。
二つ目は、商品のポジショニングです。現在の日本の家具業界は、ニトリやイケアのような、手頃な価格でベーシックな商品を提供するブランドが大きなシェアを占めています。しかし、デザイン性やクオリティ、素材にこだわりを持つお客様にとっては、それらのブランドでは満足できないという課題があります。
一方で、そうしたこだわりを満たす商品は、いわゆる高級ブランドや輸入家具、デザイナーズブランドに限られてしまいます。これらは非常に高価で、一般の消費者にとっては手が届きにくい存在です。
私たちは、高級ブランド並みの品質とデザインを、手の届きやすい価格で提供することを目指します。
── なぜ高品質なものを安く提供できるのでしょうか。
中村 無駄なコストを徹底的に省いているからです。
まず生産地についてですが、現在はイタリアなどの先進国生産にブランドイメージを持つ消費者が多いものの、実際には中国は家具の生産額として、圧倒的なシェアをとっており、非常に高品質な生産が可能です。iPhoneなどの精密機器が中国で生産されているのと同様に、家具も生産額だけではなく、品質の良い優れたものが作れる時代です。
同じクオリティの商品でも、中国で生産することでコストをイタリアや日本の数分の一に抑えることができます。私たちは、生産地というブランドイメージよりも、実質的な品質とコストのバランスを重視します。ユーザーが本当に求めているのは、どこで作られたかではなく、良いものであることだととらえています。
また、高級ブランドには多額のブランドプレミアムが上乗せされています。マーケティングやブランディングに過剰なコストを投じ、それが価格に転嫁されているのが現状です。
私たちはそうした余計なコストを削り、価格の中で商品の原価が占める割合を極めて高く設定します。
さらに、一等地に豪華な店舗を構えるとかかるコストも削減します。高級家具店は客数が少なくても、高い店舗維持費を維持するために一商品あたりの利益を大きく取る必要があります。私たちはオンライン中心にすることで、販売チャネルのコストを低く抑え、その分を商品の質や価格の安さに還元します。
SHEINでの経験を活かした圧倒的なサプライチェーンの効率化
── SHEIN JAPANでの経験はどのように活かされていますか。
中村 SHEINでの経験は、現在の事業に大きく活かされています。特に「ユーザー目線での最高のコスパ」を追求する姿勢です。単に安いだけでなく、価格以上の価値を感じてもらうことに注力します。また、オンライン中心のモデルによる効率性も重要です。
オンラインであれば、在庫管理を一元化できます。実店舗を持つビジネスモデルでは、各店舗に在庫を分散させる必要があり、機会損失や過剰在庫のリスクが常に付きまといます。私たちは一つの倉庫で全国をカバーするため、在庫の回転率が非常に高く、効率的な運営が可能です。
また、オンラインだからこそ、商品のテスト販売を迅速に行えます。SHEINが実践しているように、小ロットで発売して市場の反応を素早く確認する手法です。反応が良ければ増産し、良くなければすぐに販売を停止します。これにより、デッド在庫を抱えるリスクを最小限に抑えます。
このサイクルを回すことで、サプライチェーン全体の効率が向上します。ヒット商品が生まれるスピードも上がり、結果としてユーザーに還元できるコストの抑制につながります。ビジネス全体の効率を上げることが、最終的にユーザーにとっての「コスパの良さ」として現れるのです。
── 家具はアパレルと異なり、実物を見たいというニーズが強いと思います。
中村 おっしゃるとおりです。ユーザーが実物を確認したいという動機は非常に強いと認識しています。私たちの調査でも、そうした要望は多く寄せられます。しかし、ユーザーがオフラインで何を確認したいのかを分解して考えると、解決策が見えてきます。
たとえば、「画像は綺麗だが実物は安っぽいのではないか」「座り心地はどうなのか」「細部の作りはどうなっているのか」といった懸念です。これらは、ウェブサイト上での情報提供を工夫することで、ある程度カバーできると考えています。
具体的には、クッションの沈み込み具合を図解したり、素材の特性を詳細に説明したりすることです。また、販売員の説明に代わるような、経年変化やメンテナンス方法などの情報も充実させます。情報の密度を上げることで、実物を見られない不安を解消する努力をいたします。
オンラインでの購入不安を解消する情報提供とオフライン戦略
── 情報提供以外に、信頼性を高めるための施策はありますか。
中村 インフルエンサーや一般ユーザーのリアルな口コミも、信頼性を高めるうえで非常に有効な手段です。第三者が実際に体験して「写真よりも綺麗だった」「座り心地が良かった」と発信することは、私たちが自ら宣伝するよりも強い説得力を持ちます。
もちろん、それでも実物を見たいというニーズに応えるため、オフライン戦略も並行して進めます。現在は東京近郊や福岡、福島、静岡などの量販店内に、私たちの商品を展示するスペースを5店舗展開しています。これにより、実際に触れて確認できる機会を提供しています。
さらに、自社運営のショールームもオープンする予定です。オンラインでの利便性と、オフラインでの安心感を組み合わせたハイブリッドな体験を構築します。オンラインで情報を十分に得たうえで、最終確認としてショールームを訪れるという流れを作ります。
── インテリアコーディネートのサービスも展開していますね。
中村 はい。家具選びに悩むお客様に対して、プロのアドバイスを提供することも重要だと考えています。オンラインでの購入は、部屋に置いたときのサイズ感や色の調和が不安になりがちです。そこを専門家がサポートすることで、購入のハードルを下げることができます。
こうしたソフト面での充実も、オンライン中心のブランドが信頼を得るためには欠かせません。単に商品を売るだけでなく、理想の住空間を実現するためのパートナーとしての役割を果たします。お客様の課題に寄り添う姿勢が、ブランドへの愛着につながると信じています。
日本を代表するVCや本田圭佑氏が評価する「プロダクトマーケットフィット」
── 累計で多額の資金調達を実施されていますが、投資家から評価されているポイントは何でしょうか。
中村 プロダクトマーケットフィットができている点が最大の評価ポイントだととらえています。ミドルクラスの消費者が抱える「手頃で良いデザインの家具がない」という大きな課題に対し、私たちのソリューションが明確に刺さっているからです。
これまでの家具市場は、安価なベーシック商品か、極めて高価な高級家具かの二極化が進んでいました。その中間にある「質が良く、デザイン性も高いが、価格は抑えたい」という層のニーズは、十分に満たされていませんでした。この空白地帯を埋める存在として期待されています。
私たちの独自のビジネスモデルやサプライチェーンの強み、そしてITを活用した効率的な運営体制が、この課題を解決できる可能性を示しました。投資家の方々とは、ユーザー満足を最優先にするという共通認識を持っており、同じ方向を向いて事業を推進しています。
── 本田圭佑氏のファンドからも出資を受けていますね。
中村 はい。本田氏からは、日本発のグローバルブランドとして世界で通用する存在になってほしいという期待をいただいています。単なる国内の成功にとどまらず、日本のブランドが世界中で愛される未来を描いています。
本田氏からは、ユニコーンではなく、時価総額1兆円を超える「デカコーン」企業を目指すべきだという激励も受けています。グローバル市場において、どの国でも通用する日本の家具ブランドとして成長していくことが、私たちの使命であると考えています。
まずは日本市場で主流のブランドに
── 今後の具体的な事業展開や投資の優先順位について教えてください。
中村 まずは日本市場で主流のブランドになることに全力を尽くします。顧客第一主義を貫き、ユーザーがサービスを利用する各プロセスにおける課題を細かく分析し、一つずつ対策を講じていきます。
具体的には、商品開発のさらなる強化です。ユーザーの期待を超えるデザイン、クオリティ、コスパを備えた商品を継続的に投入します。次に、購入体験全体の向上です。在庫の安定性、注文時の透明性、納品日の指定、組み立てサービスの充実など、物流周りのサービスを磨き上げます。
私たちはまだ若いブランドであり、至らない点も多くあります。
しかし、時間とリソースを投下して、カスタマーサービスを含めたすべての接点を改善していきます。ユーザーが「CAGUUUを選んで良かった」と思える体験を積み重ねることが、ブランドの成長につながります。
── AI技術の進展は、御社のビジネスにどのような影響を与えますか。
中村 大きく二つの側面でポジティブな影響があると考えています。
一つは業務の効率化です。ユーザーリサーチやエンジニアのコーディング作業において、AIを活用することで開発スピードを数倍に加速させることができます。
もう一つは、ユーザー体験の向上です。AIを用いたインテリアコーディネート提案や、サイト内でのチャットボットによる接客などが挙げられます。ユーザーの好みに合わせたおすすめ商品を瞬時に提示したり、疑問に即座に回答したりする体制を構築します。
── 最後に、中村社長が「高級家具の民主化」を成し遂げた先にある、10年後の人々の住環境はどのように変わっていると想像していますか?
中村 部屋は単なる「生活の場」から、「自己表現の舞台」へと進化しています。
価格を理由に妥協するのではなく、心から納得できる空間づくりを当たり前にしたい。「とりあえず」ではなく「これがいい」と選ばれた家具が、暮らしの標準になる社会へ。
CAGUUUの家具が、時を経ても価値を失わず、世代を超えて受け継がれるパートナーとなることを私たちは確信しています。
- 氏名
- 中村勇輝
- 社名
- CAGUUU株式会社
- 役職
- 代表取締役

