既存企業の事業承継を機に飲食業の枠を超えたビジネスモデルを構築し、2017年に株式会社U-MOREを設立した、同社代表取締役社長の山﨑基史氏。株式会社有線ブロードネットワークス(現株式会社USEN)で店舗事業に携わった経験を生かし、同社では「席数以外の商売」を掲げて実店舗、EC、イベント事業などを多角的に展開している。
画一的なチェーン展開ではなく、多様なブランドで顧客の日常に自然と溶け込む「異業種ドミナント戦略」を推進。さらに、沖縄へ本社を移転し、沖縄発のブランドを首都圏など全国へと広げる新たな挑戦も始めている。
「Make you more...もっとがモットー」を企業理念として、顧客の人生を豊かにする同社の戦略と今後の展望について、山﨑氏に話を聞いた。
企業サイト:https://umore.co.jp/
実店舗と通販の両輪で事業展開
── 山﨑社長はUSENの出身とのことですが、そうしたプロフィールやU-MOREの創業について、教えてください。
山﨑氏(以下、敬称略) 私は1976年、京都市生まれです。学習院大学を卒業後、有線ブロードネットワークス、現在のUSENに営業職として入社いたしました。そこで飲食店向けの商材を販売する中で、外食産業に強い関心を持つようになり、店舗事業部へ転籍したのです。
複数の店舗事業会社で営業、管理、開発の経験を積みました。そして2017年に株式会社U-MOREを設立し、既存企業の事業承継を担いながら、店舗事業、EC事業、イベント事業などを多角的に展開しています。
── たしかに、飲食店では有線放送が流れているイメージがあります。
山﨑 USENではもともとカラオケボックスの全国展開や音楽・カラオケメーカーとしての事業を行っていました。その後、店舗事業部では、アミューズメント複合店舗やダイニングバーなどを2000年ごろから展開し始めました。
私もそのころに入社し、営業として飲食店との接点を持つ中で、飲食業の面白さに惹かれていったという経緯です。
── 営業から店舗事業部への転籍は、ご自身の興味がきっかけだったのですね。
山﨑 ええ。営業を2年ほど経験した後、希望を出して店舗事業部へ異動しています。最初はカラオケ店の店長として配属され、店舗の立て直しから始めました。一年も経たないうちに本部へ呼ばれ、約百店舗の経営企画に関わる業務を若いうちから任されました。
── 事業の状況はどうだったのでしょう?
山﨑 当時のグループ内では、事業拡大を見据えたM&Aの流れも強く、店舗事業においても事業の吸収や分割が頻繁に行われました。リーマンショックの影響もあり、事業の再編が進む中で、USENグループから複数の事業を受け継ぎグループから離脱することとなりました。
── その後、株式会社U-MOREの設立に至ります。
山﨑 U-MOREの設立は2017年ですが、実際の事業が始まったのは2018年1月1日です。会社としては10期目、9年目になります。USENから承継した事業や、その後別会社にて開業してきた事業などを承継することからスタートし、設立後すぐに通販なども展開する別の会社も譲り受けることとなり、現在の事業基盤が出来上がりました。
── 設立後すぐに別の会社を譲り受けたのですか?
山﨑 はい。その会社はもつ鍋を中心とした通販事業の基盤を持っていました。私自身、飲食業には長く携わってきましたが、現場のサービスマンや料理人というわけではありません。ビジネスとして事業をとらえたときに、飲食店は儲かりにくい商売だと感じていました。席数に限界があり、家賃も高い。
食品を扱う事業としてそこからさらに広げるには、席数は関係の無い通販という分野が重要だと考えていました。
── 通販事業の可能性に着目したと。
山﨑 その会社は実店舗と通販の両方の基盤を持っていましたが、季節指数の大きな事業体でもあり譲り受けるタイミングでは大変な状態でした。店舗の立て直しはなんとかするとしても、ECをゼロからつくるよりは、基盤がある会社を一緒にできる方が良いと考えました。これが、現在のU-MOREの事業展開のベース、そして私の考え方の根幹となっています。
── その考え方は、コロナ禍で非常に有効だったそうですね。
山﨑 コロナ禍で実店舗が大変な状況になった際、通販事業が爆発的に伸びました。以前からデリバリーなども始めており、「店舗の持つ商品を席数以上にどうやって広げるか」を常に考えていたことが功を奏した形です。世の中に先駆けて取り組んでいたことが、結果的に事業継続の助けとなりました。
独自の異業種ドミナント戦略とは?
── 現在のU-MOREの事業展開について、詳しく教えてください。
山﨑 私たちはチェーン化を目指すのではなく、「異業種ドミナント」という戦略をとっています。
具体的には、お客様から「この会社が運営しているから、このお店に行こう」と意識されるのではなく、生活の中に自然と溶け込むような存在を目指しています。
たとえば、ある週に訪れたお店がすべて私たちの運営する店舗だった、というような状況が理想です。これにより、一人のお客様から得られる金額(LTV)の最大化を目指しています。
── お客様一人当たりのLTVを最大化する、という点について具体的な効果や実感はありますか?
山﨑 一般のお客様の具体的な行動は把握しきれていませんが、私の知人や友人はあちこちで私たちの店を使ってくれています。「今回はあっちにしようと思ったけど、こっちは空いているよ」といった具合に、業態が違っても利用してくれるのです。
沖縄でも、恩納村で利用したお客様が、店内で那覇の別店舗の宣伝を見て立ち寄ってくれる、といった事例が生まれています。
── 店舗間の連携や、お客様の回遊を促す仕組みが機能しているのですね。
山﨑 はい。たとえば渋谷にある300人規模の大型店が満席でも、別の店舗に80人規模の空きがあれば、そちらへ誘導することも可能です。このように、利用シーンに合わせて使い分けができる体制を整えています。まだ店舗数は多くありませんが、この戦略のベースは確立できています。
実店舗のメニューを通販商品化しイベントでも周知へ
── 同じものを展開するのではなく、多様なブランドを展開されている点に、貴社の独自性を感じます。
山﨑 収益性の高い業態を作り横展開していくという考え方は基本だと思いますが、私たちは新しいブランドをつくることに面白さを感じています。もちろん、効率面ではチェーン店に劣りますが、スタッフにとっては新しいものをつくり出すことにやりがいを感じられるはずです。
── 新しいものをつくり出す力は、採用面でも生きているのでしょうか?
山﨑 そうですね。新しいものをつくり出すことに意欲的な人材が集まってくる傾向があります。
チェーン店のようにマニュアル通りに動くのではなく、その場所だからこそできることを考える。物件ありきではなく、「この物件なら何ができるか」という発想で店舗開発を進める人材が集まっています。
── その発想は、飲食業界の一般的なオペレーション重視の考え方とは一線を画すものですね。
山﨑 オペレーションを効率化し、コストを抑えながらひたすら回すという考え方は、コモディティ化を招きやすいと感じています。私たちのコンセプトは、同じ業界内での差別化要因にもなり、採用面でも強みになっていると考えています。
── 通販事業についても、実店舗との連携を意識されているのでしょうか?
山﨑 たとえば、店舗で開発したメニューを冷凍化して通販で販売する、といった発想で商品開発をしています。他、通販で売れるシグネチャーメニュー(看板メニュー)を開発し、そこからメニューコンセプトを練り上げる方法もあります。
その商品を、沖縄物産展やイベントで展開したりさまざまな販路で広げる考えです。
── 一つの商品を、いかに多角的に展開するか、という視点なのですね。
山﨑 その通りです。実店舗での体験だけでなく、通販やイベントなど、消費者に届く接点を増やすことで、お客様一人当たりの価値を最大化したいと考えています。
沖縄から東京へ進出を目指す新たな挑戦
── 2025年11月には本社を沖縄へ移転しました。移転の狙いについて教えてください。
山﨑 コロナ禍を経て、あらためて「私たちの会社はどうあるべきか」を考えた結果、沖縄での事業展開に注力することにしました。沖縄事業は現在7店舗を展開しており、コロナ禍での影響は受けながらも着実に成長しています。
東京と比較して固定費が抑えられるにもかかわらず、しっかりとした売上が立てられる可能性が高いため、同じ投資をするなら沖縄の方がより多くの事業展開が可能だと判断しました。
── 沖縄を拠点とすることで、どのような事業展開をイメージしていますか?
山﨑 沖縄で人気店をつくり、それを東京や本土へも展開する、という戦略です。お客様の最大活用という観点からも、沖縄で人気が出たお店が東京に進出すれば、「沖縄で食べたあの味を東京でも」という流れが生まれます。
また、沖縄の企業になることで、銀行取引なども沖縄の金融機関と行えるようになり沖縄県内での事業展開へのより協力を得たいという狙いもあります。
── 山﨑社長自身も沖縄に住んでいるとか。
山﨑 沖縄には、独自の文化や商習慣があります。10年間、沖縄で事業を展開してきた土台はありますが、代表である私が沖縄に来たことで、沖縄での事業展開の本気度も感じていただけると感じているからです。
以前、海外事業を展開した際も、現地に住むことで現地の方々の親しみ度が一気に増し、売上も上がり、交友関係も広く築けました。
沖縄でも同様に、当社に対する理解度が増し、味方が増え、事業展開が加速することが出来ればと考えています。
── 沖縄の企業が東京に進出する例は少ないとも聞きます。
山﨑 はい。沖縄の飲食業が東京へ進出すると、投資や固定費も大きくなり、利益を出しにくいと想定されると思います。そのため、東京に進出するよりも、沖縄で事業を展開する方が合理的だと考える企業が多いのだと思います。
しかし、私たちは既に持ち合わせている東京でのネットワークや事業感も生かしながら、沖縄発のブランドを全国に展開することを目指せると考えております。
── 具体的な取り組みとして、首都圏への出店についても教えてください。
山﨑 昨年、横浜の横丁に沖縄居酒屋を出店しました。居抜きではありましたが、初期投資を最小に抑え、約1か月で投資回収を終えることが出来ました。
火が使えないという制約の中で、沖縄料理のラフテー(豚の煮物)をメインにしたメニューを開発し、今後は通販商品としても展開する計画です。
── 初期投資を抑えつつ、多角的に展開しているのですね。
山﨑 一つの商品をいかに広げるか、という視点を持ちながら事業を進めています。沖縄を盛り上げるという意義も持ちつつ、お客様の生活の中に自然と溶け込めるような存在になりたいと考えています。
── 今後、どのような展開を構想していますか?
山﨑 私たちは『Make you more...「もっと」がモットー。』を企業理念として、お客様の生活に寄り添い、私たちの店舗や商品を通じて、人生をより楽しくするお手伝いをしたいと考えています。
わざわざお店を選んでいただくというよりは、日常の中で自然と私たちの店や商品を選んでいただけるような、そんな存在になれたら幸せです。沖縄を盛り上げ、そこから全国へ、そして世界へと、私たちの挑戦はこれから始まります。
- 氏名
- 山﨑基史(やまざき もとふみ)
- 社名
- 株式会社U-MORE
- 役職
- 代表取締役社長

