この記事は2026年5月29日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「春闘で3年連続の賃上げ率5%台に、実質賃金はプラス圏定着へ」を一部編集し、転載したものです。


春闘で3年連続の賃上げ率5%台に、実質賃金はプラス圏定着へ
(画像=moonrise/stock.adobe.com)

(日本労働組合総連合会「春闘・回答集計結果」)

深刻化する人手不足や長期化する物価高への対応から、賃上げ率の高い伸びが続いている。日本労働組合総連合会(連合)は5月12日、2026春季生活闘争(春闘)の第5回回答集計の結果を公表した。この集計結果によれば、26年度の春闘の賃上げ率は前年比5.05%と、25年度春闘(同時点)の5.32%から伸びが鈍化したが、3年連続で5%を上回った(図表)。

米国の関税措置による企業収益の下押しの影響が懸念されていたが、深刻化する人手不足や長期化する物価高への対応から、高水準の賃上げ率が保たれている。定期昇給を除くベースアップ率(ベア)は、今年度3.51%と、前年の同時点(3.75%)こそ下回ったものの、高水準の伸びを維持している。

春闘の賃上げ率は、集計を重ねるごとに低下する傾向がある。25年春闘では、最終集計での賃上げ率が前年比5.25%と、初回集計の5.46%から0.21%ポイント低下した。近年は初回集計から最終集計までに0.2%ポイント程度低下する傾向にある。そのため、例年どおりならば初回集計で5.26%であった26年春闘での賃上げ率は、最終的に5%程度に落ち着くとみられる。

しかし、今般の中東情勢悪化の影響などから、第5回集計までの下方修正幅は例年よりも大きくなっている。それ故、7月3日に公表される予定の最終集計まで動向を注視する必要があろう。

組合規模別に見ると、300人以上の比較的大規模な組合の賃上げ率は5.07%と、昨年の同時点(5.36%)からは低下したが、高めの伸びを維持した。一方、300人未満の中小組合における春闘の賃上げ率は、今年度4.81%と昨年の同時点(4.93%)並みの伸びが続いた。

23年に賃上げ率が上昇し始めてから大企業と中小企業の賃金格差が拡大していたが、中小企業においてより深刻な人手不足が、格差の拡大傾向に歯止めをかけつつある。ただし、中小企業については、労働組合の組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)が低く、連合の集計では捕捉できない部分がある点には留意する必要がある。

春闘が想定どおりの堅調な結果となったことで、26年度の名目賃金はおおむね昨年並みの伸びが期待できる。一方のインフレ率は、中東情勢の悪化の影響が懸念されるが、原油価格の高騰が長期化しなければ年間を通した上振れ幅は限定的だろう。26年度は、実質賃金のプラス圏での推移がようやく定着するとみている。

春闘で3年連続の賃上げ率5%台に、実質賃金はプラス圏定着へ
(画像=きんざいOnline)

伊藤忠総研 副主任研究員/高野 蒼太
週刊金融財政事情 2026年6月2日号