本記事は、浅野 潔氏の著書『米国海軍大学元教官が教える自律型チームのつくり方』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

米国海軍大学元教官が教える自律型チームのつくり方
(画像=wahyuni/stock.adobe.com)

成果が出ない真の原因

「戦略」と「戦術」の乖離をどう埋めるか

軍事上の課題であれ、ビジネス上の課題であれ、私たちは今、未曾有の混迷期にあります。
グローバル化によるサプライチェーンの複雑化、情報化による意思決定スピードの加速、そして価値観の多様化。
世の中の変化は「予測可能性」という言葉を過去のものにしてしまいました。
こうした激動の時代に対応するため、米軍をはじめとする諸外国の軍隊では「ミッション・コマンド」という、現場の自律性を重んじる手法が普及しました。

「戦略」と「戦術」の乖離かいり
もまた、現代社会の変化に伴う課題の1つです。
どれほど優れた経営者が高邁な戦略を掲げても、現場が疲弊し、成果が上がらない。逆に、現場が死に物狂いで努力して個別の受注を勝ち取っているのに、会社全体の利益は一向に改善しない。
そんな実例は、ビジネスの世界にはいくらでもあります。
なぜそうなるのか?
答えは、「戦略」と「戦術」の間に横たわる深い断絶にあるのです。

「戦略」と「戦術」の定義

そもそも、「戦略」と「戦術」とは何でしょうか?
まずは言葉の定義を整理しておきましょう。

◎戦略(Strategy)
望ましい将来像を実現するための基本方針。組織のトップが示すべき「進むべき方向」です。

◎戦術(Tactics)
利用できる資源と条件の下での、実際の現場における活動です。部下やメンバーが担う具体的なアクションやタスクにあたります。泥臭く、具体的であり、例えば、商談などが「戦術」に相当し、現場での「勝ち方」に直結します。

企業で起こっている「戦略」と「戦術」の断絶

従来は、「戦略」という抽象論から、「戦術」という具体策が導かれるのが、理想的な関係でした。
しかし、現実の組織では、この2つの歯車が噛み合っていません。
例えば、現場と経営層の平行線。
現場は「具体的に何をすればいいかわからない」と混乱し、経営層は「なぜ決めた方針が実行されないのか」と憤慨する。
「上の人間は現場の苦労を知らない」
「下の人間は経営的視点が欠如している」
といった愚痴を言い合いつつ、お互いに不満を募らせるーー。
この光景は、どの会社でも多かれ少なかれ見られるようです。
あるいは、経営層が「顧客第一主義による付加価値の創造」という華やかなスローガンを掲げても、現場への具体的な落とし込みがなければ、それは単なる「お題目」として風化します。
一方で、現場の営業力が極めて高く、個別の「戦術」で勝利を収めている会社もあります。短期的にはそれでいいでしょうが、現場での動きが戦略的に統合されていなければ、バラバラな方向にリソースが分散して、ブランド価値は毀損きそんされ、長期的な利益に結びつきません。

米国海軍大学元教官が教える自律型チームのつくり方
浅野 潔(あさの・きよし)
ハイパフォーマンス組織プロデューサー。エンドステートナビゲーション代表。
防衛大学校卒業後、海上自衛隊に入隊。34年間の勤務において、護衛艦での実任務をはじめ中東アデン湾派遣、阪神・淡路大震災および東日本大震災での災害派遣部隊司令部幕僚を歴任。極限の状況下における指揮官の意思決定プロセスを数多くサポートする。その後、アメリカ海軍大学(ロードアイランド州)にて専門的な軍事的意思決定・問題解決法を修得。その知見を活かし、同大学に新設された「国際海上作戦幕僚養成課程」の外国人教官として招聘され、世界各国の海軍士官への教育に従事した。退職前の約6年間は、海上自衛隊幹部学校にて作戦教官を務め、1,000名以上の高級幹部に対する講義や図上演習を担当。2021年、1等海佐で退官。現在は、軍事理論をビジネスに応用した独自の「ミリタリー式組織マネジメント」を確立。製造、金融、医療などの民間企業、24時間稼働の厳しい現場を持つ組織を中心に、自律型組織への変革支援を行なっている。

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