この記事は2026年8月5日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:拙速な利上げは将来の歯止めのきかない円安につながるリスクに」を一部編集し、転載したものです。
拙速な利上げは将来の歯止めのきかない円安につながるリスクに
政府は骨太の方針でも、日銀に「「強い経済」の実現に向けては、「安定的な物価上昇」の実現に資する適切な金融政策運営が行われることが非常に重要である」とし、「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」のデュアル・マンデートを課しました。「強い経済」の目標を、「2%の物価安定目標の実現の下で、できるだけ早期に、実質で1%を上回る、名目で3%を上回る経済成長を定着させ、更に引き上げていく」とすることによって、高圧経済の方針の下の日銀のデュアル・マンデートをより明確化しました。
日銀内で、「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」の両立という二つの責務のデュアル・マンデートが、まだ浸透していないとみられます。「安定的な物価上昇」の一つの責務の下での古い考え方がまだ残っています。日銀の拙速な利上げで、投資サイクルが腰折れれば、供給能力の更なる棄損への懸念で、将来の円安と物価上昇はより強くなるリスクがあります。単純に、利上げを急げば、円安と物価上昇の問題が解決するわけではありません。現在、財政赤字を出しても官民連携の戦略投資の拡大を進めている欧米と比較し、2027年度の政府予算から戦略投資を拡大する日本は出遅れていることで、円安が進行しています。投資の拡大が強くなって初めて、円高に転じることになります。
投資サイクルが上向いている間の円安は、将来の供給能力が拡大するわけですから、歯止めがきかなくなる懸念はありません。投資の拡大が弱い中での利上げは、単純に景気悪化という代償を払うリスクとなり、国民を疲弊させます。投資サイクルが腰折れ、将来の供給能力の棄損が懸念される中での円安は、止めることが困難となります。だからこそ、政府は投資の拡大を重視し、日銀にデュアル・マンデートを課しています。デュアル・マンデートは、ECB型からFRB型に変える試みで、日銀の金融政策の手段の自主性を棄損するものではありません。政府と日銀の連携は正常な経済政策の姿である一方、外圧による金融政策の変更は自主性を棄損し、そのような外圧に脆弱な中央銀行を持つ国の通貨は強くなりません。
サナエノミクスの主軸は、官民連携の戦略投資の拡大です。バラマキではありません。投資の拡大が、供給能力の回復としての国力の回復となり、労働生産性の上昇よる実質賃金の強い上昇として、景気回復の果実が国民に回ります。しかし、投資の拡大から国民に果実が回るまでには、時間がかかります。その間は、積極財政によって、国民の生活を支える必要があります。2026年度は、所得税の減税、エネルギーコストの軽減策などで支え、2027年度と2028年度は消費税減税で支えることで、3年間の支援パッケージとなります。4年目からは、投資拡大の果実がしっかり実り、財政支援がなくても家計に果実が回ることを目指します。物価上昇の国民負担を軽減するには、実質賃金を強く上昇させる必要があります。そのためには、投資の拡大が必要です。投資の拡大なくして、物価上昇を上回る持続的な賃金上昇はありません。
高市政権は、日銀の利上げ自体については、反対していません。サナエノミクスの主軸は、官民連携の戦略投資の拡大です。投資の拡大の動きを含む、景気の状態をしっかり確認しながら、慎重に利上げをしてもらいたいということです。円安は、これまで投資を怠り、供給能力が棄損してきたことが原因です。円安を円高に変えるには、投資の拡大が必要です。物価高の負担を克服する実質賃金の強い上昇のためにも、投資の拡大が必要です。そこで政府は、投資の拡大を確かなものとするため、日銀に対して、「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」の両立という二つの責務を課しました。デュアル・マンデートと言われます。政府との連携を重視する植田総裁は、このバランスを見ながら、利上げの是非を決めることになります。
政府は骨太の方針でも、日銀に「「強い経済」の実現に向けては、「安定的な物価上昇」の実現に資する適切な金融政策運営が行われることが非常に重要である」とし、「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」のデュアル・マンデートを課しました。「強い経済」の目標を、「2%の物価安定目標の実現の下で、できるだけ早期に、実質で1%を上回る、名目で3%を上回る経済成長を定着させ、更に引き上げていく」とすることによって、高圧経済の方針の下の日銀のデュアル・マンデートをより明確化しました。「安定的な物価上昇」が「持続的な経済成長」につながるという、「安定的な物価上昇」の達成に前のめりのシングル・マンデートのような日銀の説明は、もはや政府の方針と整合的ではなくなりました。
日銀内で、「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」の両立という二つの責務のデュアル・マンデートが、まだ浸透していないとみられます。「安定的な物価上昇」の一つの責務の下での古い考え方がまだ残っています。拙速な利上げで、投資サイクルが腰折れれば、供給能力の更なる棄損への懸念で、将来の円安と物価上昇はより強くなるリスクがあります。単純に、利上げを急げば、円安と物価上昇の問題が解決するわけではありません。現在、財政赤字を出しても官民連携の戦略投資の拡大を進めている欧米と比較し、2027年度の政府予算から戦略投資を拡大する日本は出遅れていることで、円安が進行しています。投資の拡大が強くなって初めて、円高に転じることになります。
投資サイクルが上向いている間の円安は、将来の供給能力が拡大するわけですから、歯止めがきかなくなる懸念はありません。投資の拡大が弱い中での利上げは、単純に景気悪化という代償を払うリスクとなり、国民を疲弊させます。投資サイクルが腰折れ、将来の供給能力の棄損が懸念される中での円安は、止めることが困難となります。だからこそ、政府は投資の拡大を重視し、日銀にデュアル・マンデートを課しています。デュアル・マンデートの下で、常識的に考えれば、中東情勢が不透明な中では、利上げは控えることになります。しかし、原油価格の上昇は更なる物価上昇につながりますので、「安定的な物価上昇」の一つの責務の下での古い考え方で、拙速な利上げをしてしまうリスクも高まっています。デュアル・マンデートは、ECB型からFRB型に変える試みで、日銀の金融政策の手段の自主性を棄損するものではありません。政府と日銀の連携は正常な経済政策の姿である一方、外圧による金融政策の変更は自主性を棄損し、そのような外圧に脆弱な中央銀行を持つ国の通貨は強くなりません。
政府は、昨年の経済対策で、「需給ギャップは0%近傍だが、景気は十分に強くない」との認識が示されました。「企業と政府の支出する力を十分に強くし、家計に所得が回る力を強くする」ことを目指すとされました。官民連携の戦略投資の拡大によって、企業と政府を合わせて、貯蓄超過から十分な投資超過に回復させ、家計の実質所得の増加で、経済成長の果実を国民に届けることを目指しています。需給ギャップ0%、企業貯蓄率と財政収支を合わせたネットの資金需要0%を基準とする、過度な緊縮志向を積極財政で断ち切ろうとしています。企業と政府の支出する力であるネットの資金需要が-5%(GDP比)、需給ギャップが2%の高圧経済、名目GDP成長率3%台が、目指すべきマクロの絵姿となっています。
政府が重要視する需給ギャップとネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支、GDP比)が示すファンダメンタルズの状態、そして米国の長期金利で、日銀の政策金利(無担保コールレートオーバーナイト物)を推計し、マクロ・フェアバリューを算出します。公表されている直近の1-3月期の需給ギャップ+0.5%(4QMA)と1-3月期のネットの資金需要+2.6%が示す弱いファンダメンタルズ、4.5%の米国の長期金利を前提とすると、日銀の政策金利のマクロ・フェアバリューは0.2%程度となります。現行の政策金利である1.0%よりかなり低く、誤差の幅は1.25標準誤差を超えます。
政府が重視するファンダメンタルズ対比の推計では、日銀は「ビハインド・ザ・カーブ」(利上げの遅れ)ではなく、逆に「アヘッド・オブ・ザ・カーブ」(拙速な利上げ)となっていることを示します。マクロ・フェアバリューとの誤差の幅は、1.25標準誤差を超え、緊縮で知られた三重野・白川総裁以来のことです。海外景気の急減速が加わるなどして、2027年に景気が後退するなどして、投資サイクルが腰折れた場合、政府との連携とデュアル・マンデートを軽視した日銀には大きな責任を生じるとみられます。
コールレート(%)=-0.16 -0.13 ネットの資金需要(%GDP、1Qラグ)+ 0.31 需給ギャップ(1Qラグ)+0.12 米国債10年金利; R2=0.85
図:日銀政策金利のマクロ・フェアーバリュー推計誤差
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