本記事は、柏木 吉基氏の著書『説得力が劇的に上がる 数字の伝え方』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

説得力が劇的に上がる 数字の伝え方
(画像=Ao_Zaa_Studio/stock.adobe.com)

ゴールとは「問題」または「目的」のことである

私は自分の研修プログラムの中で、冒頭に受講者に向けて「あなたはいったい何をしたいのですか?」という問いかけをします。「問題解決やデータ分析・活用のやり方を教えてくれる」と期待して臨んでいる受講者は「キョトン」という表情を浮かべます。
でも私の本意はここにあります。
どんなに高度な知識も技術も、洗練されたグラフも、あなたの「やりたいこと(ゴール)」に紐づかない限り、実務では「正解っぽいけれど役に立たないゴミ」になってしまうからです。

では、実務における「ゴール」をどう定義すべきか。「問題」と「目的」という2つの側面から整理してみましょう。
ゴールは大きく「①(解決したい)問題」または「②(実現したい)目的」のいずれかになります。

(解決したい)問題

一般的に「問題」とは「理想と現状のギャップである」と表現されることが多いです。
理屈の上では正しいのですが、実務的にはこの捉え方だと、「理想」をいかようにでも恣意的に決めることができ、結果的に「問題」の定義が“理想”の決め方次第でブレまくるという事態に陥ります。
もしくは、「理想」を主観や願望で高く設定しすぎてしまい、解く必要のない問題を捏造し、ムダな作業に翻弄され疲弊します。
この弊害を避け、地に足のついた議論をするためには、問題を「誰が、何に困っているのか?」という不都合な事実に具体化することをおすすめします。
「理想との乖離」という想定の中の話ではなく、「今、ここで起きている具体的な痛み」をゴールに据えるのです。困りごと(痛み)が具体的であればあるほど、学んだ「比較軸」も、注意点として挙がった「要因」も、自ずとシャープになります。

さらに、「誰が困っているのか」の「誰」を特定することの重要性にも触れておきましょう。「上司が困っているのか」「現場が困っているのか」「顧客が困っているのか」――
この「誰」の設定がズレると前提(話)が噛み合わず、「誠実なコミュニケーション」が成立しません。

(実現したい)目的

常に何か困りごとが発生しているとは限りません。その場合でも、相手に伝えたい、提案したいメッセージはあります。現状に不満はなくても、さらに高みを目指すケースです。その場合のゴールは、「成し遂げたい未来の姿」になります。
たとえば、「関西地方に特化した営業チームを新設したい」とか「次世代のスタンダードとなり得る、XXX機能を持った新製品の開発を始めたい」などです。

「目的」を設定する場合、ストーリーが無意識に「夢物語」になりやすいリスクに注意が必要です。だからこそ、「客観的な事実把握」にしっかり根を張る必要があります。
たとえば、新製品開発という「目的」に対し、既存市場の飽和という「事実」をぶつけることで、ゴールの妥当性を伝えることができます。

「問題(マイナスをゼロにする)」と「目的(プラスを積み上げる)」、どちらのゴールを選ぶかで、グラフの描き方や、疑うべき前提も変わってきます。
たとえば、グラフの中の強調については以下のようになるでしょう。

  • 問題解決型
    異常値やボトルネックを強調するグラフ(「ここが悪い」を強調)
  • 目的達成型
    伸びしろやポテンシャルを強調するグラフ(「ここを目指す」を強調)
説得力が劇的に上がる 数字の伝え方
柏木 吉基(かしわぎ・よしき)
データ&ストーリーLLC代表。横浜国立大学 非常勤講師、多摩大学大学院ビジネススクール 客員教授。
慶應義塾大学理工学部卒。米国Emory大学院(MBA)修了。日立製作所にてセールスエンジニアとして技術営業に従事した後、日産自動車にて海外マーケティング・セールスや組織開発を担当。
2014年に独立し、「データ活用」を武器にした問題解決トレーナーとして、年間約30の企業・自治体、のべ1,500人以上/年に対しスキル育成・コンサルティングなどを展開。実務に裏打ちされた具体的思考法や手法で成果を出す指導に定評がある。
二児の父。世界130カ国以上を訪問、国内では東海道五十三次を踏破。FMラジオパーソナリティも務める。
著書にベストセラー『「それ、根拠あるの?」と言わせない データ・統計分析ができる本』(日本実業出版社)ほか国内外で多数。

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