本記事は、柏木 吉基氏の著書『説得力が劇的に上がる 数字の伝え方』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
「増えている」は本当か?― あなたの「主観」を「共有できる事実」に変える
× 「最近、顧客からのクレームが増えていて問題ですよね」
〇 「顧客クレーム件数が毎月約5%ずつ増加しています。結果的に売上への影響もあり問題ですよね」
「あそこの会社は好調のようだ」
「XXサービスの評判は最近悪いみたいだ」
「好調/不調」「良い/悪い」「多い/少ない」「早い/遅い」―― 私たちの身の回りには、物事を評価するキーワードがあふれています。しかし、ここで一度立ち止まって考えてみてください。
その評価は、いったい何に基づいたものでしょうか?
自分なりの基準や解釈で、無意識に「決めつけて」はいないでしょうか。
自分の経験や知識、感覚に基づいた視点を「主観」といいます。もちろん、現場の直感や主観で判断を下すこと自体は、決して悪いことではありません。
しかし、100%主観に頼った発信では、相手の理解や共感、納得を得ることは至難の業です。なぜなら、主観は「あなただけのものさし」であり、他人が同じものさしを持っているとは限らないからです。
先ほどの「×」の事例を見てみましょう。
「クレームが増えている」と言っていますが、その根拠が曖昧です。もしかすると、たまたま昨日厳しい電話を一本受けただけの、主観的な「印象」かもしれません。また、何をもって「問題」としているのかも、これだけでは相手に伝わりません。
こうした「認識のズレ」や「誤解」を避け、コミュニケーションの質を高めるためには、主観を脇に置き、「客観的な視点」を持つことが不可欠です。
では、どうすれば物事を客観的に把握できるのでしょうか。
ポイントは、自分だけの感覚に頼らず、「誰が見ても同じに見えるものさし」を用意することです。
ものさしには、さまざまな種類があります。たとえば「画像」や「映像」は、説明がなくともリアルな状況を伝えてくれます。しかし、それらはあくまで捉えられたその場の切り取られた一瞬の情報にすぎません。
より広く、正確に状況を反映させ、相手を納得させるための強力な手段。その1つが「数字(データ)」です。
「○」の事例では、状況を「月約5%の増加」と数字で定義しています。その上で、売上への影響という事実を紐づけ、「問題である」と結論づけています。「×」のケースと比べると、状況の解像度が格段に上がり、説得力が増しているのがわかるはずです。
慶應義塾大学理工学部卒。米国Emory大学院(MBA)修了。日立製作所にてセールスエンジニアとして技術営業に従事した後、日産自動車にて海外マーケティング・セールスや組織開発を担当。
2014年に独立し、「データ活用」を武器にした問題解決トレーナーとして、年間約30の企業・自治体、のべ1,500人以上/年に対しスキル育成・コンサルティングなどを展開。実務に裏打ちされた具体的思考法や手法で成果を出す指導に定評がある。
二児の父。世界130カ国以上を訪問、国内では東海道五十三次を踏破。FMラジオパーソナリティも務める。
著書にベストセラー『「それ、根拠あるの?」と言わせない データ・統計分析ができる本』(日本実業出版社)ほか国内外で多数。
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