本記事は、柏木 吉基氏の著書『説得力が劇的に上がる 数字の伝え方』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
「5秒だけ見てもらう」としたらどこか
情報を視覚的に凝縮して伝えるグラフは、本来「読ませる」ことよりも「見せる」ことに主眼を置くべきツールです。しかし、現実には「読み込むこと」を前提とした、情報の過密なグラフやスライドが散見されます。
もし、細部まで精読して情報を理解してもらう必要があるのなら、それはスライド上のグラフではなく、レポートや提案書、企画書といった「読み物」で伝えるべき領域です。
「瞬時に伝わる視覚情報(グラフ)」と「論理的に積み上げる言語情報(文章)」という、手段ごとの役割の違いを明確に理解しておくことが、資料作成の第一歩となります。
その「見せる」ことで結論を効果的に伝えるポイントは、ほかにどのようなものがあるでしょうか?
「×」ケースのグラフは、初見の相手に対して「グラフのどこに着目し、何を読み取ればよいのか」という探索作業を強いてしまいます。そして次のような、ここまで紹介してきた典型的な「×」ケースの特徴が確認できます。
- タイトルの不備
まず目に入る最上段のタイトルが、単なる「グラフの内容説明(例:〇〇の推移)」に留まっており、それは前述の通り典型的なNG例です。 - 結論の欠如
仮にグラフの下部に「過去6年、継続的に……」といった説明があっても、それだけでは「高齢化が進んでいる」という事実(現象)を述べているにすぎません。受け手にとっては「それで、結局何が言いたいの?」という疑問、つまり結論が抜け落ちている状態です。
これらのNGポイントを頭に置いて「○」ケースのグラフを見てみましょう。
大きな違いは、「視線の誘導」と「結論の明示」にあります。
- 視覚的なハイライト
最初に目に飛び込んでくるのは、グラフ内の「太い矢印」や「ハイライトされた棒グラフの一部」のはずです。これにより、「年を追うごとに増えている」という事実が、説明不要で直感的に伝わります。 - 結論の明示
スライド上部には、現象の先にある「高齢者向け機能の開発強化がさらに必要である」といった具体的な結論(アクション)が一文で示されています。ここでは、グラフは「結論を支える根拠」という脇役に徹しているのです。
人間が一度に処理できる情報量には限りがあります。特にプレゼンテーションでは、聞き手が理解に費やせる時間は極めてわずかです。
そこで、資料を見直す際はこう自問してみてください。
もし、このスライドやグラフを5秒しか見てもらえないとしたら、結論は伝わるか?
「5秒」はあくまで目安ですが、この極限の状態を想定することで、不要な情報を削ぎ落とし、強調すべきポイントを絞り込む判断がつくようになります。
結論と直結する「ここだけ見れば、すべてがわかる」というポイントを視覚的にハイライトすること。それが、相手の時間を奪わずに価値を届ける、プロフェッショナルな伝え方です。
慶應義塾大学理工学部卒。米国Emory大学院(MBA)修了。日立製作所にてセールスエンジニアとして技術営業に従事した後、日産自動車にて海外マーケティング・セールスや組織開発を担当。
2014年に独立し、「データ活用」を武器にした問題解決トレーナーとして、年間約30の企業・自治体、のべ1,500人以上/年に対しスキル育成・コンサルティングなどを展開。実務に裏打ちされた具体的思考法や手法で成果を出す指導に定評がある。
二児の父。世界130カ国以上を訪問、国内では東海道五十三次を踏破。FMラジオパーソナリティも務める。
著書にベストセラー『「それ、根拠あるの?」と言わせない データ・統計分析ができる本』(日本実業出版社)ほか国内外で多数。
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