本記事は、柏木 吉基氏の著書『説得力が劇的に上がる 数字の伝え方』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

説得力が劇的に上がる 数字の伝え方
(画像=AmDmLib/stock.adobe.com)

なぜ私たちは「方策君」になってしまうのか?

「根拠を示すことが大切だ」―― 厄介なのは、頭ではこの重要性を十分に理解していても、いざ実戦の場に立つと、誰もが驚くほど簡単に「方策君」の呪縛にとらわれてしまうことです。

以前、あるプロジェクトでの出来事です。メンバーには「方策君」に陥ることの危険性を十分に説き、理解を得たはずでした。しかし、いざグループ討議が始まると、外から聞こえてくるのは「どんなツールを使うか」「誰がいつまでにやるか」「SNSで拡散させるには」といった、次から次へと飛び交う「何をどうやるか」という手段の応酬でした。そして、その「アイデア合戦」をしている場は、外から見て、ワクワク感にあふれ「楽しそう」にすら見えました。私が「ストップ」をかけるまでは……。そう、一度始まったら「楽しくて」、止めるきっかけを内部から作り出すことも難しくなってしまうのです。

「わかっている」と「やる」、あるいは「わかっている」と「できる」の間には、私たちが想像する以上に高く険しい山脈がそびえ立っています。この山脈を越えられず、多くの優秀なビジネスパーソンが、滑落するように「手段の議論」へと逃げ込んでしまうのです。

では、なぜ私たちは、これほどまでにすぐさま方策に思考を巡らしたくなってしまうのでしょうか。そこには、「沈黙への恐怖」と「行動バイアス」が深く潜んでいます。

ビジネスの現場において、問題が起きたときに「何もしていない状態」でいることは、心理的に非常に大きな苦痛をともないます。「早く何とかしなければ」という焦燥感やプレッシャーは、私たちの冷静な判断能力を著しく低下させ、手近にある解決策へと飛びつかせてしまいます。
本来、最も時間をかけるべき「ゴールの定義」や「要因特定」といった重要ステップについての思考をスキップし、目に見える動きを作ることで、自分自身を安心させようとしているのです。

また、そこには「思考のショートカット」による偽りの達成感もかかわっています。
具体策を語っている間、私たちは自分が仕事を進めている感覚、いわゆる「やった感」に浸ることができます。逆に、本質的な課題を深掘りする作業は、霧の中を歩くような不確実性に満ちており、短期的には何の進捗も感じられない孤独な作業です。相手に具体的なアウトプットを示すことも至難の業です。その不快感から逃れるために、私たちは「方策」という名の安住の地を求めてしまうのです。

説得力が劇的に上がる 数字の伝え方
柏木 吉基(かしわぎ・よしき)
データ&ストーリーLLC代表。横浜国立大学 非常勤講師、多摩大学大学院ビジネススクール 客員教授。
慶應義塾大学理工学部卒。米国Emory大学院(MBA)修了。日立製作所にてセールスエンジニアとして技術営業に従事した後、日産自動車にて海外マーケティング・セールスや組織開発を担当。
2014年に独立し、「データ活用」を武器にした問題解決トレーナーとして、年間約30の企業・自治体、のべ1,500人以上/年に対しスキル育成・コンサルティングなどを展開。実務に裏打ちされた具体的思考法や手法で成果を出す指導に定評がある。
二児の父。世界130カ国以上を訪問、国内では東海道五十三次を踏破。FMラジオパーソナリティも務める。
著書にベストセラー『「それ、根拠あるの?」と言わせない データ・統計分析ができる本』(日本実業出版社)ほか国内外で多数。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
説得力が劇的に上がる 数字の伝え方
  1. 感覚だけで問題を語るな! 数字で伝える客観的な説明術
  2. 手段の議論に逃げない、問題解決で最初に考えるべきこと
  3. グラフを読ませようとするな! 5秒で伝わる資料の作り方
  4. 数字は絶対の事実ではない
  5. 正解っぽい資料で終わらせるな、実務で効くゴール設定の技術
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)