日本全国で、うだるような酷暑が続いている。誰しも涼を求めたくなるが、旅に出る時間もお金もない人もいるだろう。そこでM&A Onlineでは、JRの幹線や大手私鉄で気軽に訪れることができる全国の避暑スポットを紹介する。ちょっとした「すきま休日」に足を運んでみてはどうだろう。最初に取り上げるのは、「東京23区で唯一の渓谷」。こんな称号を与えられているのが等々力(とどろき)渓谷だ。住宅街が広がる世田谷区の東南部に位置する。

今年3月、ほぼ3年ぶりに通行再開

都会にいながらして自然美が楽しめる人気スポットとして知られるが、倒木のおそれがある危険木の伐採や樹木再生の取り組みを終え、約3年ぶりに渓谷内の通行が全面再開されたのは今年3月末のこと。

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(画像=“谷底”に整備された散策路、「M&A Online」より引用)

渋谷から電車を乗り継いで20~30分。最寄りの東急大井町線等々力駅から歩いて3分ほどで渓谷の入口に到着する。

出迎えてくれるのは「ゴルフ橋」。朱色に塗られたアーチ形の鉄骨がひときわ印象的だ。そのネーミングは昭和の初めに東急電鉄が開発したゴルフ場があったことに由来する。もともとはは木橋だったが、1961年に架け替えられて現在の姿になった。

脇の階段を降りると、谷沢川(多摩川の支流の一つ)沿いに散策路が伸び、一帯は世田谷区立等々力渓谷公園として整備されている。2023年7月、シラカシの大木が倒れて散策路をふさいでいるのが見つかり、安全確保などのために立ち入りがいったん禁止された。

大都会の小秘境、気温の違いを体感

等々力渓谷は武蔵野台地の南端を谷沢川が浸食してできた。総延長は約1キロメートルで、台地と谷との標高差は10メートルほど。谷底は地上に比べ、明らかに気温の違いが感じられる。とくに夏はひんやりとした空気が汗ばんだ身体に心地よい。

当地を訪ねたのは8月初旬の平日昼時。散策路に人通りが絶えることはほとんどなく、たまたまかもしれないが、外国人の姿がことのほか多く見られた。メトロポリス・東京の“小秘境”として、その存在が海外にも知られ始めているのかもしれない。

ケヤキ、シラカシ、コナラ、ヤマザクラ、イロハカエデなどの樹木が生い茂り、いたるところから水が湧き出て、シダ類などの湿性植物が点在。ちょっとした渓谷美に触れることができる。

昭和初期まで人の立ち入りもなく…

都教育委員会の案内看板はこう記している。

「昭和5(1930)年から13年にかけて谷沢川の流路を整備し、小径を設けるまでは不動の滝からゴルフ橋にいたる渓谷内はほとんど人の立ち入ることもなく、キジなどの鳥類や、イタチ、キツネなどの小獣類、各種昆虫類の宝庫であった」と。

往時から、さながら秘境扱いされていた様子がうかがえる。

渓谷の左岸崖面には古墳時代末期から奈良時代につくられたとされる横穴墓がいくつか発見されている。なかでも完全な形で残っていたのが1973年に見つかった「等々力3号横穴」。奥行き13メートルで、埋葬人骨や副埋葬品も良好だったことから保存措置が講じられている。