この記事は2026年9月11日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:2027年度の新規国債発行額は2025年度並みで「ショック」とはならない」を一部編集し、転載したものです。

アンダースロー
(画像=years/stock.adobe.com)

目次

  1. シンカー
    1. ECB9月理事会:底堅いマクロ経済見通しを背景に25bpの利上げを決定
  2. 2027年度の新規国債発行額は2025年度並みで「ショック」とはならない

シンカー

ECB9月理事会:底堅いマクロ経済見通しを背景に25bpの利上げを決定

ECBは9月理事会で政策金利を0.25%引き上げた。ECBは市場の織り込みに積極的に抗わず、市場参加者の一段とタカ派的な予想を後押しした。市場は2027年7月の預金ファシリティ金利を3.3%超と見込んでいる。

マクロ経済見通しは、6月時点よりタカ派的な内容(インフレ率と成長率の上方修正)となった。予測期間の終盤においてもコアインフレ率が2%を大幅に上回っており、GDP成長率の見通しも上方修正された。GDP成長率は2026年が0.9%、2027年が1.4%、2028年が1.5%と予想されている(従来はそれぞれ0.8%、1.2%、1.5%)。ただ、現段階では市場のタカ派的な金融政策スタンスを正当化するほどの見通しではないだろう。現在の市場の織り込みはあまりにも積極的すぎるとみている。10月の理事会で緊急に利上げする必要性は見当たらない。ECBは今回の利上げ局面で段階的に行動することを決めており、これは不確実性が高いことと整合的である。

CACIBのメインシナリオは、依然として12月にもう一度利上げを実施し、預金ファシリティ金利を2.75%とするものだ。これがターミナルレートとなり、ECBは2027年9月から利下げを開始し、2028年3月に2.25%に到達すると予想している。3%を上回る水準への利上げ(市場は3.25%超を織り込んでいる)については、エネルギー価格が大幅に悪化するだけでなく、それと同時に景気回復が力強さを増し、コアインフレ率への波及が現在みられている以上に強まることが必要となる。(松本賢)

2027年度の新規国債発行額は2025年度並みで「ショック」とはならない

  • 高市政権は戦略17分野を対象に2040年度までに官民で370兆円超を投資する方針で、戦略17分野の公的投資については、通常の歳出とは別の「強く豊かな日本」投資枠に計上する。補正から当初予算への移行分と、「強く豊かな日本」投資枠の一般会計分を追加財政支出として18兆円の計上を仮定したうえで、改めて2027年度の国債発行額の大まかなイメージを示す。

  • 今年度に追加の補正予算で増額されない前提では、2026年度の補正後新規国債発行額(32.7兆円)を8兆円程度上回りながらも、2025年度の補正後発行額の40.3兆円と同程度となる見通しである。カレンダーベース市中発行額の予想は177.4兆円となる。今年度の補正後発行額(168.5兆円)に対しては9兆円程度上回る一方で、2025年度の補正後発行額(178.7兆円)を若干下回る規模である。

  • 2026年度は、昨年の石破政権下での骨太の方針を前提とした予算編成がベースとなっているため、当初予算が抑えられ、補正から当初予算への恒常支出の移行過程にあることが、歳出や国債発行額を抑制する見込みである。2027年度当初予算ベースの新規国債・カレンダーベース市中発行額を、2026年度と比較して大幅な拡張で「ショック」だと指摘することは間違いである。2025年度補正後ベースとの対比では若干下回る予想を踏まえれば、決して「ショック」とはならない。

  • 2027年度に名目GDPは前年度から27兆円増加すると内閣府は想定しており、債務償還費を引いた純新規国債発行額の21.5兆円を大きく上回ることが見込まれている。財政運営の中核目標である債務残高対GDP比は低下するだろう。そして、GDP増加額は、2027年度4月以降の日銀の国債買い入れ額の年間24兆円を上回る。経済成長による民間マネーの自然増に対し、日銀の買い入れ額は過少であるとさえいえる。2027年度以降に名目GDPの伸びが3%程度に落ち着くと想定しても、国債の市中消化には全く問題とならないだろう。


高市政権は戦略17分野を対象に2040年度までに官民で370兆円超を投資する方針で、戦略17分野の公的投資については、通常の歳出とは別の「強く豊かな日本」投資枠に計上する。補正から当初予算への恒常支出移行分と、「強く豊かな日本」投資枠の一般会計分を追加財政支出として18兆円の計上を仮定したうえで、改めて2027年度の国債発行額の大まかなイメージを示す。

2027年度の一般会計歳出を、追加財政支出18兆円と内閣府の名目成長率予想分の増加、食料品1%分の給付や農家や外食への支援、そして地方が受ける税収減の補填分などを当てはめる。歳入は、内閣府の名目成長率見通しに税収弾性値(1.2)をかけたうえで、消費減税による減収、外為特会などから5兆円繰り入れる仮定を織り込んだ。歳出と税収+その他税収の差が公債金となり、財務省の国債発行計画での新規国債となる。2027年度の新規国債発行の予想を40.4兆円とする。今年度に追加の補正予算で増額されない前提では、2026年度の補正後新規国債発行額(32.7兆円)を8兆円程度上回りながらも、2025年度の補正後発行額の40.3兆円と同程度となる見通しである。

新規国債以外の発行は概ね横ばいと仮定し、経済安全保障分野での支出に計上される、つなぎ国債を2兆円と置けば、国債発行総額の予想は191.6兆円となる。特別会計での支出を含めた「強く豊かな日本」投資枠は15兆円となる。なお、つなぎ国債は将来の歳入を財源に充てるため債務残高には計上されない。

消化方式別発行区分に含まれる個人向け国債は、需要増加にある傾向を反映し、2027年度は前年度から50%増となる約9兆円を仮定すると、カレンダーベース市中発行額の予想は177.4兆円となる。今年度の補正後発行額(168.5兆円)に対しては9兆円程度上回る一方で、2025年度の補正後発行額(178.7兆円)を若干下回る規模である。

2026年度は、昨年の石破政権下での骨太の方針を前提とした予算編成がベースとなっているため、当初予算が抑えられ、補正から当初予算への恒常支出の移行過程にあることが、歳出や国債発行額を抑制する見込みである。2027年度当初予算ベースの新規国債・カレンダーベース市中発行額を、2026年度と比較して大幅な拡張で「ショック」だと指摘することは間違いである。2025年度補正後ベースとの対比では若干下回る予想を踏まえれば、決して「ショック」とはならない。

高市政権の戦略投資の拡大によって、2027年度の新規国債発行額は40.4兆円を予想しているが、グローバルスタンダードに見合わない、国債60年償還ルールに基づく債務償還費は18.9兆円を見込むため、借り換えでない純粋な新規国債発行額(純新規国債)は21.5兆円で、2025年度の補正後時点を若干下回る。名目GDP比では、2025年度の3.3%から2027年度は3.0%に低下する。

2027年度に名目GDPは前年度から27兆円増加すると内閣府は想定しており、債務償還費を引いた純新規国債発行額の21.5兆円を大きく上回ることが見込まれている。財政運営の中核目標である債務残高対GDP比は低下するだろう。そして、GDP増加額は、2027年度4月以降の日銀の国債買い入れ額の年間24兆円を上回る。経済成長による民間マネーの自然増に対し、日銀の買い入れ額は過少であるとさえいえる。2027年度以降に名目GDPの伸びが3%程度に落ち着くと想定しても、国債の市中消化には全く問題とならないだろう。

図1:政府予算の抜本的改革のイメージ

政府予算の抜本的改革のイメージ
(出所:クレディ・アグリコル証券)

図2:「強く豊かな日本」投資枠を踏まえた国債発行のイメージ

「強く豊かな日本」投資枠を踏まえた国債発行のイメージ
(出所:内閣府、財務省、クレディ・アグリコル証券)

図3:ユーロ圏コアインフレ率

ユーロ圏コアインフレ率
(出所:ECB、クレディ・アグリコル証券)

図4:ユーロ圏ヘッドラインインフレ率

ユーロ圏ヘッドラインインフレ率
(出所:ECB、クレディ・アグリコル証券)

図5:ECB預金ファシリティ金利の織り込み

ECB預金ファシリティ金利の織り込み
(出所:ECB、Bloomberg、クレディ・アグリコル証券)

会田 卓司
クレディ・アグリコル証券 東京支店 チーフエコノミスト
松本 賢
クレディ・アグリコル証券 マクロストラテジスト

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