中国初LCC「春秋航空」の挑戦 国内の不安定要素に国際化急ぐ

高松市(香川県)から上海市まで3000円、大阪から天津まで5000円――。中国初の格安航空会社(LCC)、春秋航空のホームページのトップにはユーザーの度肝を抜くような安い価格が並んでいる。そんな低価格をウリにする同社が今年1月、上海証券取引場に上場した。資金調達額は約18億元(約350億円)。アジア全体の所得増を背景にした観光客増を読み、調達した資金を欧エアバスの購入や設備の充実のために振り分けるもようだ。

春秋航空は、上海市の役人であった王正華氏が2004年に上海で設立した民間航空会社。2005年に上海-烟台(山東省)間で就航して以来、上海を起点とした広州、深セン、珠海、掲陽(汕頭)、厦門、三亜、福州、瀋陽、ハルビン、長春、大連、青島、銀川、綿陽、石家庄、昆明、重慶、西安、蘭州間をはじめ、国内に50以上の路線を持つ。国際線では2010年、上海-茨城間が就航したことを皮切りに、同年9月には上海-香港間が就航。以来、マカオ、台湾、タイ、カンボジア、韓国まで路線を急ピッチに広げている。


脅威の座席占有率「95%以上」

始まりは王正華氏が1981年に設立した上海春秋国際旅行社だった。当時は文化大革命が終焉してまもない時期であり、就職口の少なさが社会問題となっていた。同氏は「中国人の就職口を増やすことが目的だった。当時は資金もまったくない状態で、上海の長寧区、徐匯区、普陀区を駆けずり回り、1人1元ずつ募った1700元(約3万2000円)で事業を始めた」と当時を振り返る。

その後、同氏の手腕により上海春秋国際旅行社は急速に拡大していく。現在では国内に32支社、国外は8支社を有し、4000人以上の従業員を抱え、年間売上高60億元に達する大企業に成長した。

春秋航空の設立の転機となったのは、2000年下半期に上海春秋国際旅行社が、インターネットサイト「春秋旅遊網」で、旅行予約から支払まで一括して行うサービスを始めたことだ。飛行機の座席まで一度に予約できるコンセプトが功を奏し、飛行機の利用客は急増した。

そこで王正華氏は春秋旅遊網を利用するすべての消費者に航空機座席を提供することを目的に春秋航空を設立。現在でも上海春秋国際旅行社を利用する多くの観光客が春秋航空の座席を優先的に確約し、同社に安定した利益(総売上の13~16%)と座席占有率をもたらしている。

また同社は他社と差別化を徹底するために「格安」を強調。特に有名なのは99シリーズで、「わずか99元(約1860円)で自分が行ってみたい地域に行ける」ことをアピールすることでユーザーの心をつかみ、平均95%以上の驚異的な座席占有率を確保してきた。