名目賃金上昇と実質賃金改善

厚生労働省が3日に発表した2月の毎月勤労統計調査によれば、賃金面で徐々に良い傾向が表れていることが判明した。

従業員5人以上の事業所対象の調査によると、労働者1人当たり平均賃金を表す現金給与総額は26万1,344円で、前年から+0.5%と3カ月続けて増加した。1月確報と2月を比べると、残業代などの所定外給与が+2.1%から+0.4%、賞与などの特別に支払われた給与が+7.6%から+3.0%とペースダウン。

2月は中国の春節休暇等で輸出が減速した分生産活動も停滞し、企業の稼働と従業員の労働が抑制されたことが、残業代と一時金を押し下げた可能性がある。

だがその分、基本給を示す所定内給与が+0.2%から+0.5%と伸び、きまって支給する給与全体を+0.3%から+0.5%へと押し上げに貢献した。総じてみれば、臨時収入より固定報酬に改善が見られ良い傾向がみられた。

この名目賃金から物価変動を除いた実質賃金を見ると、前年から-2.0%で22カ月連続下落から抜け出せていない。それでも、昨年5月の-4.0%を底にその半分にまで戻っており、流れとしては悪くない。

このように、名目の伸び以上にインフレが効いて、実質的な負担が大きいことに変わりはないが、それも徐々に緩和されてきたといえよう。


外需による企業業績回復が賃金を支える

こうした改善の背景には、主に外需に依存した企業業績の回復がある。

昨年4月の消費増税の影響が残り、個人消費や住宅投資は依然低迷。2月までで、実質消費支出は11カ月、新設住宅着工戸数は12か月悪化が続く。企業の設備投資も増加基調にはなっておらず、機械受注(船舶・電力除く民需)も1月はマイナスへ転落。

一方、堅調な米経済に円安が加わり、輸出は昨年9月以降6カ月拡大中。すなわち、内需不足を外需拡大でカバーし、企業業績は改善傾向にある。そのため、企業は従業員に報いる余裕が生じ、また外需取り込みのための人材確保に向けて処遇を改める必要もある。その結果名目の所得が伸びているのだ。

ただそうした賃金の上昇が、消費増税分2%程度の物価押し上げに追い付かず、実質ベースでは下落。つまり、外需頼みの企業業績向上で名目賃金は増えたものの、増税で物価もそれ以上に伸びたので、実質的な負担が重くなる。これが2年弱続いているのが現状だ。

それでも約1年経過して増税の影響も徐々に薄れ、原油安も加わり、インフレ圧力が低下して事実上の負担も和らいで来ているのも否定できない。


実質賃金のプラス転換なるか

これから先は、実質賃金もプラスに変わっていく可能性がある。

各種指標を見る限り、今後は消費増税の影響がさらに薄れ、内需も戻ってくるだろう。消費動向調査の消費態度指数、景気ウォッチャー調査の家計及び企業動向関連の先行き判断DIいずれも、昨年12月から上向きだ。鉱工業生産指数(3カ月後方移動平均)も昨年9月から緩やかな上昇トレンドを維持。

これにより、企業の経営環境はより良くなっていくはずだ。日本政策金融公庫の中小企業売上見通しDIも、10カ月間増加が減少を上回っている。

そうなると、企業は外需に加え内需取り込みのためにも人材を確保する必要が出て来る。同調査の従業員判断DIも、不足が過剰を上回る状況に変化はない。そのため、労働条件を改めざるを得なくなり、名目賃金はさらに上伸する方向になる。

増税の影響がなくなりその分のインフレは収まるものの、上述のように今度は消費の回復で値上がりしていくと見込まれる。それを上回るペースで名目賃金が伸びていけば、実質賃金もプラスに転じ、多くの人の生活は好転していくであろう。

連合の3月末集計では、平均賃上げ率(定期昇給込み)が2.33%で昨年より0.13ポイント上回るなど、良い兆候が見えて来た。

雇用は既に良い状況にあるため、後は収入がどれだけ増えるかが重要であり、それを消費や投資の拡大につなげていかなければならない。(ZUU online 編集部)

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