1.ネット企業のネット企業によるネット企業のためのネット企業投資
この2~3年間(2010年~2012年)で、ネット企業がどんどんVCを立ち上げて投資を続けていきた。ネット企業のベンチャーキャピタルというと、GREE、サイバーエージェント、Klabなどが有名だが、その他自らVC部門を保有していなくても、自社のバランスシートから他社に投資をしているネット企業は増えてきている。
結果として、ネット企業群の中だけで資金が“好”循環している。この波がスタートアップブームに火を点けている。この状態を私は、“ネット企業のネット企業によるネット企業のためのネット企業投資”と勝手に名付けている。
当然だが、ネット企業がその他の企業に投資する理由は2つだ。
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投資した株式の値上がり益や配当から投資利益を得たい
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投資先の技術やサービスを活用し相乗効果を起こしたり自社のサービスを強化したい
さて、ここで問題となるのは、ネットバブルが崩壊、もしくは崩壊まで行かずとも急減速した場合だ。なぜなら、ネット企業がネット企業に対して資金を出してるわけなので、これまでのペースで儲からなくなったら、どこを削るか?それは、本業以外の部分であるはずだ。ということは、VC部門は間違いなくその対象になるし、本体のバランスシートから投資しているのなら、環境が厳しくなれば、資金を回収することになる。
これは、企業として当然の行動だ。もちろん、今後もネット周辺の市場は伸び続けると思うし、 そのことに誰も疑いはないだろうし、それが今回のネットバブルが決定的に2000年のITバブルとは違った点だ。(当時はそもそもITというキーワードだけが一人歩きしネットを使いこないしている人も、ネット企業の業績も赤字並びだった。)
しかし、今後、2008年以降のモバイルアプリやソーシャルメディアやゲーム等ほぼ完全に新しい市場が生みだされるまではいかないだろう。つまりある程度までは出揃ったということだ。
そしたら今までと同じペースで新しいモノが生まれてくるわけではないし、今まで通りのペースで儲けることは難しい。その結果、ネット企業自体も以前ほどは本業が儲からなくなり、同じペースでの他社に投資することが難しくなる。
結果として、資金調達前提で展開してきたスタートアップが資金不足で急減速することとなる。急減速するので、投資した資金も儲からない。好循環が逆流すると、こういった悪循環になる。
過去のあらゆるバブルが好循環で生み出され、その後、このように逆流して、バブル後の悪循環が引き起こされ停滞期に突入した。繰り返すと、ネット産業内で資金が循環してることが、勢いが止まった時に、逆に悪循環に陥りやすいということだ。
2.安定した資金の出し手の不在
アメリカの金融機関のローン水準が1930年代の世界恐慌以下になっているようだ。つまり超貸し渋りが起こっている状態だ。
参考:
U.S. Bank Lending Below Depression-Era Levels:S&P
米国の金融機関は貸し渋り、欧州の金融機関も債務危機で貸せるような状態ではない。
ではどこが資金の供給者なんだろうか?
一つは投資家であることは間違いない、もう一つは傷の浅い国の金融機関、これは新興国ということになる。
では、銀行からのローン(債券)と投資家からの資金(株式が主)は、どちらが持続性があるか?
答えは明白だろう。 安定的な資金の提供者である銀行からの資金提供が冷え、投資家からの資金提供に頼るのは、2000年のITバブル前、2006年のWEB2.0バブルと同じ構図だ。 投資家の資金は抜け出すと速いので、そこを頼りにビジネスをしていた会社は急ブレーキを踏まざるをえなくなる。