GettyImages-479592452 写真=Getty Images 文/小澤一郎(サッカージャーナリスト)

アメリカとの女子W杯決勝に2-5で敗れた後、なでしこジャパンの佐々木則夫監督は立ち上がりの3分、5分と立て続けにセットプレーから失点した点について記者会見で次のように述べた。

「10番のロイドさんが後ろに下がっているのはおかしいなと思って(ピッチの)前に行ったのですが(大歓声で)声も聞こえないですし、それは選手が感じることなので。選手がそういうことを感じる術がなかった。それも力の差だと感じています」

セットプレーでの2失点はいずれも後方から走り込むMFカルリ・ロイドのマークを緩めてしまったことで彼女にゴールを許した形だったが、実は佐々木監督がアメリカとの「力の差」と指摘した部分にこそ、なでしこジャパンの強さの秘訣が隠されていた。

佐々木監督の指導の特徴は、選手の自主性を重んじることであり、今大会のなでしこジャパンのメンバー構成においては平均年齢の高さや世代交代の失敗なども指摘されはしたが、国際大会の経験が豊富で自らサッカーにおける「90分の戦いをデザインできる選手」を揃えた。

例えば、相手の方が2日休養の多かった準々決勝オーストラリア戦は酷暑の中での消耗戦となったがピッチ上の選手たちは冷静に相手選手の様子を観察しながらその心の中まで見透かしていた。結果として後半42分にようやく得点が入り日本が1-0で辛勝したゲームだったが、前半から暑さにバテる素振りを見せた相手を見たFW大儀見優季は試合後「前半から相手はバテていたので慌てることなく90分の中で決着を付けられると思っていました」と振り返った。

試合前に監督からゲームプランや戦術は用意されるが、最終的に「勝つ術」を選択するのは選手たち。MF宮間あやが「相手や相手の出方を見た上でピッチ上で判断する」と説明ように今大会のなでしこジャパンは、試合開始からしっかりと相手を観察し、相手に上回るための術を選手自らが選択するサッカーを貫いた。

サッカーは選手がプレーする、決断するスポーツ。佐々木監督はその競技特性をよく理解し、選手たちの自主性、試合でのデザイン力を最大限に引き出した。大会開幕前日の会見で佐々木監督は「今日までガタガタ細かいことを言いましたが、明日からは僕はもう何も言わずにとにかく選手たちにはサッカーへの感謝、楽しむ気持ちを持ってプレーしてもらいたい」と選手の背中を押した。

決勝前日の会見でも「サッカーにおいて失敗を恐れるということがどんなにサッカーのプレーを変化させるか。そういう意味でも、選手たちには自分のプレーを信じて、仲間を信じて失敗を恐れることなくこのステージを楽しんでもらいたい」を話し、選手を気持よく大舞台に送り出した。

今大会のなでしこジャパンで7試合にフル出場を果たしたのは宮間と大儀見の二人。裏を返せば、今大会はこの二人がチームの中心であり、佐々木監督の厚い信頼を受けてピッチ上のリーダー役を任されていたということ。大儀見は佐々木監督の自主性を尊重する指導法について「そこまで細かなことを言われない分、今自分がやっていることでいいんだというように思えるし、だからこそ逆にもっと自分自身に高い要求をしたくなる。そういう意味でポジティブに受け止めていました」と話す。

決勝前日の会見で佐々木監督の横に座った宮間はミスを恐れないことの重要性について、「サッカーをしている上、自分を信じること以上にどんな時もそばにいる仲間を信じることが一番大切だと思います。だからこそ、失敗を恐れるのではなく、何をしても、何があっても『そばに仲間がいる』ということを信じ続けられることが一番大事」と話した。

決勝で敗れはしたものの、2大会連続で女子W杯のファイナリストとなったなでしこジャパンの強さの裏側には誰よりもこのチームの可能性や選手たちの力を信じ切った佐々木監督のリーダーとしての信念と品格があったように思う。

文/小澤一郎(サッカージャーナリスト)

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