総合PR会社のベクトル<6058>の業績が好調だ。2015年7月に同社が発表した15年第1四半期決算(3月1日~5月31日)の報告書によると、売上高は22億8000万円、営業利益は3億4000万円。前年同期比で売上高は128.6%、営業利益においては202.9%を達成している。16年2月期の業績予想(売上高104億円、営業利益17億円)に向け、計画どおりの順調なスタートを切ったようだ。

ベクトルの業績が好調な背景には、事業の柱となる4つのプロジェクトを積極的に展開していることが奏功している。まず柱となる「戦略PR事業」は順調に推移し、現在700を超えるプロジェクトを抱えるまでになり、年平均で20~30%の成長を示している。5月にはカヤック <3904>、およびサイバーエージェント・クラウドファンディングと業務提携し、事業基盤を固めている。

2つ目の「PRテクノロジー事業」は、企業などの報道発表資料(プレスリリース)を発信するプラットフォーム事業。Webサイトで企業の新製品などの情報や最新動向を配信するサービス「PR TIMES」を利用する企業は、9000社を超えるまでに成長している。同社では続いて、カスタマーリレーションサービス「Tayori」のプレビュー版を開始するなど、その勢いは留まらない。

3つ目の「アドテクノロジー事業」は、アドテク業界ではナンバーワン企業といえるサイバーエージェント<4751>の子会社・マイクロアド(MicroAd)との合弁企業であるニューステクノロジー」を立ち上げ、スマートフォンに特化した動画のアドネットワーク「TRAILERS」の提供を開始している。さらなるスマートフォン関連需要の掘り起こしに意欲的だ。

4つ目の「インベストメントベンチャー事業」は、上場企業を100社作ることを目標に掲げ、新たに7社のベンチャー企業に出資(計22社)するなど、事績を積み上げつつある。「みんなの株式」との合弁で始めた「IR TV」などでサービス拡充を図り、ITを駆使した事業戦略でIR業界でのナンバーワン企業を視野に事業の成長を見込んでいる。

ベクトルの一連の事業展開は、テレビや新聞などのマスメディアへの単発の広告掲載に巨費を投じる宣伝活動の仲介ではなく、テレビ番組や有力雑誌の取材・掲載に結び付けるプレスリリースを配信する「PRテクノロジー事業」を引き金として、番組の放映や雑誌での掲載の後に、SNSなどのインターネットメディアを多層的に活用する費用対効果に重点を置いた効果的な宣伝活動を提案している。この事業展開が、企業の宣伝部や事業部門の予算管理者のニーズを掴んだ結果と評価できるだろう。

ベクトルは5年後の2020年に、アジアでナンバーワンの総合PR企業グループとして成長することを目指し、既存のPR事業を年平均30%増の安定した事業として継続させながら、新規事業の成長と効果的なM&Aを視野に入れ、グループ全体で営業利益100億円を目標としている。内訳は既存のPR事業が60億円、新規事業で40億円。特に、急速に発展するスマートフォン分野に主軸を置いた、新規事業の展開に注力する計画を立てている。

具体的には、既存PR事業は、現在700以上のプロジェクトを抱える「戦略PR事業」を、5年後には2000程度の案件を取り扱う事業にまで成長させ、引き続き同社の事業推進の柱と据える。また「PRテクノロジー事業」は、現在、「STRAIGHT PRESS」などのさまざまなニュース配信メディアを立ち上げており、7000社の利用企業数を5年後には2万社にまで引き上げる考えだ。

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