◉景気とヒット曲のテンポ・調号

行動ファイナンスの分野では、一般的には景気動向を測る指標として使われないものを数値化して景気動向を見る試みも盛んです。その一つがヒット曲のテンポや調号を見るものです。

保原(2009)は、全音出版社の『全音歌謡曲大全集』に掲載された楽曲(いわゆるヒット曲よりかは曲の範囲が広い)の平均テンポと平均調号を分析しています。平均調号は、各楽曲の調号の♯一つを1点、♭一つを-1点とし、その平均をとったものです。下図は、その結果を昭和31年から平成12年までのデータで計算されたものです。テンポはバブル期が最も速い状況であったことが分かります。調号はDIと比較されており、傾向が似ている事がわかります。

たけやん2

図:景気とヒット曲のテンポ・調号との関係

出典: 保原伸弘(2009)「ヒット曲は景気を語る(唄う)か? 昭和と平成におけるヒット曲=流行歌の調性,テンポと経済状況の関係」『行動経済学』Vol. 2, pp. 141-144(PDF)


◉出歩いて新しい指標を作る

本稿で紹介したもの以外にも様々な方法があるでしょう。飲み屋街の状況を見て景気を測るという方法も有名ですし、クリスマス商戦時期の米国の玩具屋などを見るという方法もよく聞きます。以前、官能小説の売れ筋が好況時と不況時で変わるという話も出回っていました。

本稿で紹介した指標がそのまま使えるかどうかという話ではなく、様々なものに着目したり出歩いて観察したりする事で、公表データ以外にも景気動向を見るという視線が重要でしょう。

BY たけやん:経済学修士号を取得後、株価推定の事業・研究を行っている

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