(写真=PIXTA)
今週の注目レポート・重要ニュース
◆米国
先週の米国株式市場はダウ平均が週間で183ドル高と上昇しました。週初は前週から引き続いて中国経済への不安が止まらず大きく下落して始まりましたが、日本や欧州などの株価が反発に転じたことを受け米国株も反発しました。27日には原油価格が1日で10%以上上昇、前週に一時116円台をつけていたドル円は121円台後半まで反発するなど、リスクオフムードは徐々にやわらぎました。
◇新築住宅販売件数
7月の新築住宅販売件数は年率換算50.7万件と前月の48.1万件から増加しました。先に発表された中古住宅販売件数、住宅着工件数も前月から増加しており、米国住宅市場は堅調な回復を見せています。
◇米GDP改定値
米国の4-6月期GDP改定値は前期比年率換算3.7%の増加と速報値の2.3%から大きく上方修正され、市場予想の3.2%も上回りました。米国景気が堅調に推移していることが改めて確認される内容で、一時は大きく後退していた9月の利上げ開始観測が再びやや高まる格好となりました。
◇米個人消費支出(PCE)
7月の個人消費支出は前月比0.3%の増加と前月の0.2%増から伸びが高まりましたが、市場予想の0.4%増は下回りました。米国経済の約7割を占める個人消費は概ね堅調に推移しているとみられています。但し、FOMCが最も重視しているインフレ指標であるコアPCEデフレータは前年比1.2%の上昇に留まり、前月および市場予想を下回りました。
◇ジャクソンホールでの経済シンポジウム
ジャクソンホールで開催されたカンザスシティ連銀主催の経済シンポジウムで、フィッシャーFRB副議長は9月の利上げ開始を明確に示唆する発言は行いませんでした。
ただ、インフレを抑制している要因が解消に向かいつつあり、今後インフレ率が上昇すると信じる理由があるとの見方を示すなど、米国経済の先行きに一定の自信を示しました。マーケットは発言がややタカ派的と受け止められたようで、米国2年債利回りが上昇し円安ドル高が進みました。
◇ISM製造業景況指数
9月1日に8月のISM製造業景況感指数が発表されます。7月の同指数は52.7と6月の53.5から低下しました。市場予想では52.6と小幅ながら2ヶ月連続での低下が予測されています。
◇米地区連銀経済報告(ベージュブック)
2日に8月の米地区連銀経済報告(通称ベージュブック)が発表されます。同報告は連邦公開市場委員会(FOMC)での基礎資料の1つとなるため、その内容が注目されます。足下で発表された重要な米国の経済指標は堅調な内容が目立っているため、ベージュブックも米国経済について概ね強気の見通しを示すとみられます。その場合、9月利上げ開始期待が更に強まり、ドル高要因となる可能性がありそうです。
◇ISM非製造業景況指数
3日にISM非製造業景況指数が発表されます。7月の同指数は60.3と6月の56.0から大幅に改善し、ポジティブ・サプライズとなりました。8月は7月の大幅上昇の反動もあって、58.3に低下すると予測されています。
◇雇用統計
4日に米雇用統計が発表されます。普段から極めて注目度の高い経済指標ですが、8月分の雇用統計は9月のFOMCで利上げが開始されるかどうかの最大の判断材料になるとみられるため、一層注目されます。非農業部門雇用者数は前月差22万人増、失業率は前月から0.1%低下の5.2%とそれぞれ堅調な内容になるとみられています。但し平均時給は前年比+2.1%上昇と前月と変わらない伸びが予想されています。
◆欧州
中国経済や世界経済の鈍化への懸念から前週まで大幅に下落していた欧州の主要株価指数は反発しました。ドイツのDAX指数は週間で2%近く上昇し、一時割り込んだ10,000ポイントの節目を回復して取引を終えました。
ユーロ/ドルは、世界的にリスクオフムードとなるなか避難通貨として買われ、24日は一時1.17ドル台の高値をつけました。その後は株安やコモディティ安が落ち着きを見せるとともに徐々に売られ、週末には1.12ドルを割り込んで取引を終えました。
◇独Ifo企業景況感指数
8月の独Ifo企業景況感指数は108.3と市場予想の107.6を上回って前月の108.0から小幅に改善しました。中国経済の鈍化で、中国依存度が高まっているドイツの企業景況感悪化が懸念されていましたが、今のところ甚大な影響は出ていないようです。
◇消費者物価指数(HICP、速報値)
31日に8月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値が発表されます。市場予想では前年同月比0.1%の上昇と前月の0.2%の上昇から伸びが鈍化すると予想されています。もし市場予想を下回り、前年同月比横ばいやマイナスといったことになれば、ECBによる追加金融緩和期待が高まる可能性がありそうです。
◇欧州中央銀行(ECB)理事会
3日に欧州中央銀行(ECB)理事会が開催されます。今回の理事会では追加金融緩和の決定は予想されていませんが、理事会後のドラギ総裁の記者会見で今後の量的緩和プログラムの拡大・延長についてなんらかの示唆があるかが注目されます。
◆日本
先週の日本市場は続落しました。日本株も世界同時株安の流れに巻き込まれ、日経平均は24日と25日の2日間で1,600円超値下がりしました。その後はリスクオフムードのやわらぎとともに急速に買い戻され26日から28日まで3日続伸した日経平均ですが、週初の下げを埋めるには至らず週間ベースでは続落となりました。
ドル/円は、パニック的にドルが売られ24日に一時116円台をつけましたが、米国GDP改定値の上振れやフィッシャーFRB副総裁の発言を受けて買い戻され、121円台後半まで値を戻しました。
◇消費者物価指数
7月の生鮮食品を除く全国消費者物価指数(コアCPI)は前年同月比横ばいとマイナスの市場予想を上回った一方、食料及びエネルギーを除く総合(コアコア)は前月および市場予想通り0.6%の上昇となりました。日銀はエネルギーを除く指数を重視する方向にあり、今回の発表内容は必ずしも日銀の追加金融緩和期待を高める結果とはなりませんでした。
◇鉱工業生産
31日に発表された7月の鉱工業生産指数は前月比0.6%の減少と、0.1%の増加を見込んでいた市場予想を下回りました。
◆中国
先週の中国株式市場は大幅に下落しました。上海総合指数は週間で8%近く下落し、3,232ポイントとなっています。ハンセン指数は週間で3%余り下落し、2万1,612ポイントで終了しました。
上海総合指数は、週末に中国人民銀行(中央銀行)による金融緩和が発表されなかった失望売りが膨らみ、一時2,900ポイントを割り込む場面もみられたものの、中国人民銀行による潤沢な資金供給や政府による財政支出前倒し方針などが好感され、週後半にかけてやや持ち直しました。
◇製造業購買担当者景気指数(PMI)
政府作成の製造業PMIが日本時間9月1日の10時に発表される予定です。先週発表された財新(Caixin)中国製造業PMIは前月から大幅に悪化しましたが、政府作成の今回のPMIも同様に好不況の節目である50を下回る悪化がみられるかが注目されます。市場では49.7と前月からの小幅な悪化が予想されています。