まさに「Japan as No 1」の時代、しかし変化の兆しもちらほらと
ランキングをご覧になられていかがでしょうか。
まず目につくのは、1位が日本人の故・森泰吉郎氏(森ビル創業者)であるということだと思います。
上でも書きましたが1987年の開始より1994年までの8年間、1位はずっと日本人が独占していました。
(1位の顔ぶれは1992年1位の森泰吉氏か、西武グループの堤義明氏のお二人になります。この年は森氏ですが、1987年の開始年を始め、8年中6年は堤氏が1位を取られてました。)
特にバブル最盛期であった、87年〜91年の日本の勢いは凄まじく、1位に限らずランキングのトップ10の内、4〜6名は日本人と言う状況が続いています。ただ、その顔ぶれは上述の堤氏や森氏を始め、不動産や土地開発で巨万の富を築かれた方が中心でしたので、92年のバブル崩壊本格化以降は徐々にその順位を下げていくこととなります。
躍進する中南米、旧社会主義国に吹く資本主義の風
「富の浮上現象」と呼ばれる現象をご存じでしょうか。
発展途上国の経済成長が加速し、新興国と呼ばれるようになる時など、一つの社会が豊かになる時に、その中から巨万の富を得る人が現れるという現象です。一国の成長にはインフラ面での大規模な事業や、主力となる産業の発展が不可欠であり、その流れの中では成功者に富の集中が起ります。
この時期この現象により、インフラや不動産・資源開発などの分野で、多くの大富豪が南米に誕生しています。
(2012年のランキングで世界トップのメキシコのカルロス・スリム氏も、この時すでにビリオネアとして、リストに載っています。)
また、この様な大規模な富の集中は、社会主義/共産主義的な政策を取っていた国が、資本主義に舵を切る時にも多く起りがちであり、実際に80年代の中南米では、資本主義化による国営企業の払い下げと民営化を通して、巨富を築かれた方が大勢いました。
この様な現象は、この時期の中南米に限ったものでは無く、旧社会主義国の市場経済化が進む90年代や、新興国の経済発展著しい2000年以降も多くの国で見られることとなります。
世界最大の億万長者大国アメリカ、オールドエコノミーからニューエコノミーへ転換期を"迎え出す"
この年、アメリカ合衆国からは101名がランクインしており、ドイツ44名、日本34名を押さえて1位にランクインしています。但し、億万長者の対人口比ではドイツの方が多く、これはドイツの方が相続税率が低かったためと言われています。
この1992年のランキングはアメリカに取って、象徴的な年だったと言って良いかもしれません。
90年頃までは、新興国の場合はインフラや不動産、資源開発で財を築く方が多く、先進国の場合はそれに加えてウォールマートのような小売りや、重化学工業などで財を築く方が多いというオールドエコノミーが主流の時代でした。
しかし、前年まで全米1の富豪だった、フォールマートの創業者、サム・ウォルトン氏が亡くなられたのがこの年であり、マイクロソフトの創業者である、ビルゲイツ氏が世界ランキング第5位と、初めて10位圏内に入られたのもこの年なのです。
90年代後半以降、続々とIT長者の方々がこのランキングに登場して来るのですが、1992年はまだまだオールドエコノミーが主流であった時代です。であるにも関わらず、90年代のIT革命を中心としたニューエコノミーの旗手であるビルゲイツ氏が、ランキングの上位に登場したことは、この後の変化を予言しているようで面白いですね。
1992年のランキングはこの様な状況だったのですが、この後世界は90年代を通して、東側経済の市場経済化と言うグローバリズムの大波や、本格化していくIT革命などの技術革新を迎えます。
そのような大変化が、ビリオネアの世界にどのような影響を与えたのかを、明日以降お送りしたいと思います。
BY TOMB