ゆうちょ
(写真=Getty Images)

11月に上場するゆうちょ銀行の預金、いわゆる「郵便貯金」の預入限度額を、現行の1,000万円から3,000万円に引き上げる提言を、与党・自民党の郵政事業に関する特命委員会がまとめた。かんぽ生命保険の契約限度額もいまの最大1,300万円から2,000万円に引き上げられる。

ゆうちょ銀の預金残高は177兆円で、限度額のない民間銀行の最大手である三菱東京UFJ銀(124兆円)を既に大きく上回っている。こうした中での限度額引き上げに対して、民間の金融機関などからは「民業圧迫だ」といった批判の声があがっている。


議論の発端は2014年の衆議院選挙

郵貯やかんぽの限度額引き上げの議論の発端は、2014年12月の衆議院議員選挙。全国郵便局長会が自民党に対し限度額引き上げを求めたのだった。

全国銀行協会などは「ゆうちょ銀行への資金シフトが発生し、民間金融機関、特に地域金融機関の経営や地域の金融システムに甚大な影響を与えかねない」と声明を出し、反対の姿勢を明確にしている。

一方、2012年4月の参院総務委員会で郵政民営化法改正案が採決された際、限度額を当面は引き上げないことを求める付帯決議がなされている。菅官房長官は自民党の提言を受け入れるかどうかは最終的に郵政民営化委員会が判断するとの考えを示している。


ゆうちょ銀行が集めたお金を運用できるのか?

限度額引き上げのメリットは利用者の利便性が高まることだろう。1,000万円以上の現金を持つ資産家にしてみれば、複数の金融機関に預け分ける必要がなくなる。いまは民間企業とはいえ、もとは国が運営していた郵便貯金だけに、特に資産を持った高齢世代のゆうちょ銀行に対する信頼は厚い。

しかし、デメリットと自己矛盾を抱え込む。小泉内閣の郵政改革は骨抜きにされ、安倍内閣が推し進める成長戦略や地方創生にも反することになる。

ゆうちょ銀は、かんぽ生命や親会社の日本郵政とともに今秋、東京証券取引所に上場し、株式の段階的な売却が始まる見通しだが、国も株主。郵便貯金は国のうしろ楯があるために信用力が高く、民間金融機関との競争においては明らかに有利だ。これが民業圧迫と批判されるゆえんだ。

より深刻な問題は、ゆうちょ銀行の運用ノウハウが十分ではないという点だ。かつて郵便貯金は約300兆円もの莫大な資金を自身で運用することなく、財務省資金運用部へ丸投げしていた。現在、郵便貯金は金融市場において自主運用されており、財政投融資との制度的な関係はないとされているが、十分な運用ノウハウがあるかは疑問だ。


日本郵政の西室社長も自ら「正直、疑問」

ただでさえ現在は資金の運用先が少なくなり、預金と融資の利ざやだけでは十分な収益をあげることができなくなっている。民間金融機関各社も生き残りのための再編を視野に入れ始めているような状況で、これ以上、ゆうちょ銀が巨額の資金を集めたとして、国債を買う以外に一体どのように運用するというのであろう。ましてや企業に対する貸付や住宅ローンの業務は国から許可されていないのだ。

日本郵政の西室泰三社長は記者会見で 「限度額が撤廃されるというのが一番望ましいことは事実」としながらも、「日本の金融業界全体からみて正しい方向かどうかについては疑問を持っていると正直感じる」と自ら語っていることは、この問題の矛盾を証明している。(ZUU online 編集部)

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