最近、タワーマンション(タワマン)購入による節税に規制が入る兆候と見られる出来事があり、一部の税理士の間で話題となっている。税理士業務に特化した情報誌『旬刊 速報税理』(2015年7月11日号)で、高層マンションの課税評価額の評価方法について、パブリックコメント(意見公募手続)にかけられるという記載があったためだ。パブリックコメントは、行政が政策変更や規制を行う際に、その影響が及ぶ可能性のある一般の方に意見や情報を求める手続のこと。
つまり、何らかの規制等が入る前に行われる手続きなので、行政当局の意向が事前に察知できるものとも言える。今回、公認会計士・税理士の伊藤英佑氏に、こうした高層マンション(タワーマンション)の課税評価額の評価方法が変更された場合、どのような内容になるのかを質問をした。 (提供: storie 2015年9月11日掲載 )
Q.タワーマンションの購入による節税について教えてください。
伊藤氏:タワーマンションの購入による相続税の節税というのは、タワーマンションの区分所有で賃貸用に部屋を購入する購入価格と比べて、相続税評価が低くなることを活用して、相続税対策として相続財産を圧縮して相続税を低くしたり、生前贈与に活用するというものです。
タワーマンションに限らず、賃貸用不動産を購入すると、下記のポイントにより、一般的に購入価格より相続税評価が低くなりますので、相続税の計算だけを考えるのなら、キャッシュを持っているより賃貸用不動産を持つ方が有利になります。
・売買価格より相続税評価が低い(相続税評価は、土地は路線価、建物は固定資産税で評価するが、一般に売買実勢価格より低い評価になる)
・貸家の評価減(一般に、賃貸物件は土地が2割、建物が3割の評価)
・貸付事業用宅地の小規模宅地等特例の適用(一定の面積まで土地が50%評価減)
詳しくは個別に専門家にご相談いただければ良いと思いますが、端的に言うと、タワーマンションの高層階では、1億円の購入価格に対して、物件によっては相続税評価が2000~3000万円程度になることがあります。これは、タワーマンションの面積あたりの土地の評価は各階層において変わりませんが、タワーマンションの売買価格は、低層階よりも高層階の方が、眺望が良くなる等のプレミアムで価格が高くなることにより、特に相続税評価とのギャップが生じやすいことによります。
このため、相続税対策を講じる一部の富裕層に対して「タワーマンション節税」として喧伝され、タワーマンションが活用される事例が増えてきました。