Q. 今後、タワーマンションの課税評価額が変わることになるとすれば、どのような内容になると予想されるでしょうか?

伊藤氏:これまで一部において、もっぱら相続税対策として「タワーマンション節税」を利用したり、租税回避と見られても仕方がないような方法を用いる動きも見られ、課税当局が一定の歯止めを掛けるために、何らかの評価方法の変更をするべく対応を検討していることが、今回のパブリック・コメント募集のニュースになった背景であると推認されます。

これが、相続税評価額の計算方法を抜本的に変更することを予定しているのか、別途、何らかの防止策が講じられるのかはまだ見えていません。現時点で識者の観測を総合的に見る限り、法人の未上場株式の不動産評価の計算では相続税評価額は取得時から3年間は時価(通常売買価格)でされるのですが、これが個人においても適用されるようになるのではないか、という落ち着きどころが一つの目安となりそうです。

これにより、例えば、相続発生直前にタワーマンションを購入したりするような行為に、一定の歯止めが掛かることが見込まれます。


Q.そうなった場合、これまで節税対策としてすでにタワーマンションを購入している方はどうすればよいのでしょうか?

伊藤氏:税制改正がされる場合、どのような変更になるかは法改正が発表されるまでは分かりません。また、税制改正には、すでにタワーマンションを購入している人に対しても遡って適用されるのか、税制改正で定めた一定の日付以降の購入に対して適用されるのか、というパターンがあります。一般に、予見可能性がないようなルール変更はフェアではないため、税制改正が遡って適用される場合は多くはありませんが、どのように税制改正がされるかは予断を許しませんので、現状では、パブリックコメントやニュース・報道での方向性の見通しを注視していくしかありません。


Q.節税規制が実施されると、節税や相続税対策でのタワーマンションの購入需要にも影響があるでしょうか?

伊藤氏:これも税制改正の内容次第ではありますが、私の個人的な予想では、相続税の不動産評価自体が抜本的に変更されるというようなことがない限り、一般論として賃貸不動産購入が相続税対策に有効である、ということが変わるような制度変更までは至らないのではないかと思います。

もし、タワーマンション高層階の相続税評価を狙い撃ちするような税制改正がされると、タワーマンション個別要因での相続税対策ニーズの購入需要が薄れるという可能性はあります。

何らかの税制改正により、ルールの穴を突いたり、極端な方法が防止されることにより、その分の購入需要はもちろんなくなりますが、タワーマンションの購入自体が高額であるため、影響は一部の富裕層に限定的なものに止まるという可能性もあります。

伊藤英佑
伊藤会計事務所代表 公認会計士・税理士。中央青山監査法人(みすず監査法人)を経て現任。ベンチャー企業の支援業務及び資産管理サービスを行う。

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