(写真=PIXTA)
日米欧間の生命保険会社の相互市場参入はどの程度進展した状況にあるのか
昨今、日本の生命保険会社による米国の生命保険会社買収のニュースが続いている。このレターでは、まずは焦点となっている米国の生命保険市場における外資系生命保険会社(*1)のプレゼンスがどうなっているのかを報告する。
続いて、日本における同様の状況を、最後に、データ面での制約はあるが、ドイツを中心とする欧州における外資系生命保険会社のプレゼンスについて見ることで、日米欧間の生命保険会社の相互市場参入がどの程度進展した状況にあるのかについて報告する。
米国における外資系生命保険会社のプレゼンス
◆全体の状況
米国全体の生命保険会社及び外資系生命保険会社の会社数は、合併や買収等の影響により、1998年から2013年の15年間、ほぼ毎年減少してきているが、総資産は着実に増加してきている。その中で、外資系生命保険会社の構成比は、会社数及び総資産とも1990年代に大幅に増加した後ここ10年間はほぼ横ばいで推移している。
即ち、最近は市場の規模拡大に対応する形で業績を伸ばしてはいるが、米国国内の保険会社のシェアを大きく奪う形にはなっていない。市場の特性等を踏まえた上での独自のあるいは適正な戦略を立てていかないと、保険先進国の米国においては、外資系といえどもシェアを伸ばすのは容易ではない状況にある。
なお、会社数でみた構成比は1割程度だが、総資産では2割程度ということから、外資系生命保険会社の平均資産規模は全体平均の2倍程度ということになる。
米国の生命保険会社は州毎や事業種類毎に複数の保険会社を設立して事業展開していることもあり、平均資産規模を個別会社単位ではなくグループ単位で比較すれば、その差は小さくなる。また、外資系生命保険会社が米国生命保険会社を買収する場合には一定規模以上の会社を対象としていることも資産規模の格差形成に影響している。
なお、2013年度の平均資産規模は、米国全体の生命保険会社では4,074百万ドル、外資系生命保険会社では7,235百万ドルとなるが、これらはAM.Best社の資料によれば、全米のランキングにおいて、それぞれ120位及び80位程度に相当する規模である、と考えられる。
◆親会社国別の状況
以上の状況を親会社国別に見てみると、会社数では、バミューダがキャプティブ設立の影響でここ10年間で大幅に増加しているが、オランダと英国は大きく減少している。一方で、資産構成比では、ここ10年でカナダやオランダの構成比が若干低下しているが、英国、ドイツ、バミューダの構成比は上昇している。
なお、日本資本の生命保険会社(日本の損害保険会社によるものも含む)のシェアは、2013年時点では0.1%に過ぎないが、上記には反映されていない2014年度以降の買収案件等が実現していった場合には、1.5%~2.0%程度になるものと想定される。