◇タイ
タイは1970年代に輸入代替工業化から輸出指向型工業化へ転換し、1980年代には日系中心に多くの先進国企業を誘致した。結果、1980・90年代は一般機械、家庭用電気機器、輸送用機器など機械・化学関連が幅広くTSIが大きく上昇した一方、繊維製品や窯業・土石製品など軽工業はやや低下した。
2000年代以降はそれまで上昇傾向にあった一般機械と電気機械をはじめ幅広い産業で伸び悩む傾向が見られた。一方、産業集積が進んだ輸送用機器や家庭用電気機器、化学製品など上昇傾向が続いた産業もある。特に輸送用機器のTSIは6カ国中で唯一のプラスとなっている。このことは同国が自動車産業の集積が集積を呼ぶ好循環を生み出し、ASEAN最大の自動車生産国であることと一致している。
直近のRCAが高い産業を見ると労働集約型産業が多い。政府は今年1月、技術集約型産業へのシフトを進めるため、加工組立産業の恩典を薄くする一方、ハイテクや高付加価値、環境配慮といった産業には手厚い恩典を付与するように投資恩典制度を見直している。
◇インドネシア
インドネシアは1980年代の石油ショックを受けて改革機運が高まり、1986年からスハルト大統領の開発独裁の下で輸出指向型工業化政策を進めた。結果、1980・90年代は繊維製品や一般機械、電気機械、家庭用電気機器を中心に幅広い産業でTSIが上昇した。
2000年代は、アジア通貨危機(1997年)とスハルト体制の崩壊(1998年)を受けて工業化が後退したほか、資源価格の高騰やACFTA(ASEAN-中国間のFTA)の発効などを受けるなか、同国は資源輸出国型の産業構造に転換した。結果、電気機械や一般機械を中心に幅広い産業でTSIが低下した。
直近のRCAがプラスの産業を見ると繊維製品、パルプ・紙・木製品、石油・石炭製品、家庭用電気機器など資源関連や労働集約型産業が多くあるが、石油・石炭製品は外国企業が新規開発を控え、国内では石油需要が拡大したために競争力は低下傾向が続いている。
なお、輸送用機器はRCAとTSIの水準がマイナスではあるものの、一貫して改善傾向が続いている。このことは現地生産が進み、完成車輸入が減少してきたことを示している。
同国は政府が保護主義的な政策を取るなど投資環境の悪い国であるが、将来的な内需の大きさは東南アジア最大であるために企業の進出が近年増えている。今後は資源関連の高付加価値化や自動車の産業集積が進むなかで競争力が向上する可能性が高い。