「債券王」として知られるビル・グロス氏が、自ら設立した米資産運用会社PIMCO(パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー)を相手に、2億ドル(約240億1140万円)の訴訟を起こしていることが明らかになった。

米ニューヨーク・タイムズ紙によると、グロス氏は昨年の解雇を不当な扱いと受けとめており、「創立以来40年間も事業拡大に全力を尽くしたにも関わらず、PIMCO経営陣の貪欲さの犠牲になり、情報漏えいの汚名まで着せられたことは遺憾の極みである」として、8日正式な起訴に踏み切った。

2013年に多大な損失を出すなどPIMCO時代の後半は業績がふるわなかったグロス氏だが、「業績不振の原因はエルエリアン氏にあった」と起訴状の中で反論。自身がPIMCOを退任せざるを得なくなった真相を明らかにした。


起訴状で「解雇」の真相を訴えたグロス氏

PIMCOはグロス氏の退任にあたり、ボーナス分配としてグロス氏に毎年度ごとに支給されるはずだった売上総利益の20%(2013年度は3億ドル約360億1710万円)を、役員内で分配ようとしているほか、補償金あるいは報酬金に値する一切の支払いを拒否しているという。

PIMCOがこれほどまでに頑なな「グロス氏追放」の姿勢を見せている背景には、長引いていた内紛の影が濃い。当時メディアはグロス氏の独裁的な経営を退任の理由として報じたが、訴状によると退任劇の真相はより複雑で、このように書かれている。

「当時PIMCOのCEOを務めていたエルエリアン氏とグロス氏の間で、経営方針の大きな違いが浮き彫りになった。PIMCOが創立以来、債券や確定利付証券など特定の有価証券で利益をあげてきたにも関わらず、エルエリアン氏は事業の中核を株、ヘッジファンド、不動産、商品取引きに移行させると主張した」

エルエリアン氏を支持する経営陣との摩擦も手伝い、グロス氏はPIMCOの執行委員会と報酬委員会から退き、エルエリアン氏にすべてを委ねる決意をした。

しかしここで「グロス氏なき後、事業の全責任を負わされるという重圧に耐え切れないと考えたエルエリアン氏」が突然、PIMCO退任を表明するという想定外の事態が持ち上がる。