◉Apple第2四半期決算:キャッシュフロー計算書

次に、図3のキャッシュフロー計算書を見てみましょう。

営業キャッシュフロー(Cash generated by operating activities)は359.30億ドルから362.08億ドルに増加しています。営業キャッシュフローの増加は一般に本業の好調を意味し、本業の収益性向上については損益計算書の項で述べた通りです。

投資キャッシュフロー(Cash used in investing activities)は-278.78億ドルから-33.62億ドルに増加しています。但し、基本的には多額の市場性有価証券の購入(Purchases of marketable securities)があり、基本的には投資活動に積極的である事を意味するので、その姿勢自体には問題無いと思われます。

財務キャッシュフロー(Cash used in financing activities)は-67.45億ドルから-281.56億ドルに減少しています。普通株の再取得が主な原因で、財務キャッシュフローのマイナスが続いていますが、Appleほどの成熟企業であればマイナスである事は珍しくありません。

フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー)は、110.52億ドルから328.46億ドルに増加しています。投資キャッシュフローにおいて市場性有価証券の売却802.41億ドルがあるためであり、企業が自由に使える資金を確保出来ているという点は良い兆候であると思います。

Facebook③

図3:Appleの貸借対照表(2014Q2)


◉Apple第2四半期決算:製品販売動向

収益・財務状況について概観してきましたが、最後にセグメント別売上と製品別売上を見ておきましょう。(図4)

Facebook④

図4:Appleのセグメント別・製品別売上

セグメント別の売上動向を見ると、欧米・中国・日本の売上は増加していますが、日本以外のアジア太平洋(Rest of Asia Pacific)とその他(Retail)の売上が減少若しくは鈍化しています。

製品別の売上を見ると、売上の主流であるiPhoneは2013Q2と比べて増加していますが、iPadの売上が減少しているのが注意すべき点でしょう。この1期だけで将来の動向を判断出来ませんが、7インチタブレットの主流化予測があるものの、思ったよりもタブレット市場が伸び悩んでいる可能性があるので、各種調査レポートなどで動向を注視する必要があります。


◉Apple第2四半期決算:今後の動向

先進国と中国以外で売上が減少・鈍化している背景には幾つか理由が考えられますが、最も重要なものとして、iPhoneの価格上の問題により、貧しい国ほどAndroidが普及している点が挙げられます。Android端末におけるアプリマーケットよりiOSのアプリマーケットの方が収益性が高く、Appleはクローズド・プラットフォームの形態を取るとは言え、ある程度シェアを維持・拡大しなければ収益を維持し続けるのが難しくなります。新興国の購買力上昇によるiPhoneの普及可能性もありますが、Androidのシェアが高くなりすぎる事によるロックイン効果が発生する可能性もあり、楽観視は出来ません。

また、2014年6月に1対7の変則的な株式分割を行う事が発表されています。Appleは「 より多くの投資家にApple株に投資しやすくするため 」としていますが、一部ではダウ工業株30種平均入りを意図したものではないかという話も上がっています。

参考: ウォール・ストリート・ジャーナル「アップル、株式分割でダウ平均に採用も」

これは、ダウ平均は株価単純平均なので、あまりに額面が大き過ぎると平均株価への寄与率が高すぎて相応しくないので、今回の分割によってダウ平均に適した銘柄(額面も企業の成熟度も)になるというロジックです。

この話の蓋然性を判断する能力は筆者にはありませんが、少なくともAppleの成長動向やキャッシュフロー計算書などを見る限りは、明らかにAppleは成熟企業のそれであり、今後は安定した配当などを狙った投資には向くと思いますが、大きな値上がりを狙う銘柄でない事は間違いありません。

>>Apple株を購入するならネット証券No.1の SBI証券がおすすめ

参考文献: Apple Reports Second Quarter Results

BY たけやん:経済学修士号取得後、株価推定事業・研究を行っている
Image CC: Alex Washburn/Wired