進むグローバル化、東側世界出身の富裕層

まず、90年代の前半から。
90年代前半は、冷戦の終結により、東側世界が市場経済に組み込まれ、経済のグローバル化が始まった時代といわれています。
実際に年表をみますと、ロシアのIMFと世界銀行への加盟などが東側経済の市場経済化を象徴しています。また北米自由貿易協定(NAFTA)やWTOの成立などは、経済のボーダレス化を象徴しているといえるでしょう。

東側世界の市場経済化は、残念ながら順調であったとは言い難く、例えばロシア通貨ルーブルは暴落や切り下げを経験しています。
しかしその様な時代の激変は、困難である反面チャンスでもあり、上手く機を捉えた人に巨万の富をもたらしました。
ロシアでは通貨の暴落時、その変化を見極めた一部の人達が一早く外貨を入手。その外貨にて、投げ売りされていた資源関連の株式などを破格の値段で入手し、オリガルヒ(新興財閥)と呼ばれる存在へと成り上がっていくことになりました。

1997年、ロシアよりミハイル・ホドルコフスキー氏など、4人の富豪が新たにランキングに登場します。
(ちなみに1997年は、初の中国本土出身者である栄智健氏もランクインしています。)

進むグローバル化、グローバルな生産国の拡大という商機

またグローバル化の影響で、見過ごせないことがもう一つ。
グローバル化によるボーダレス化(国境障壁の低下)です。

ランキングを見ますと、16位のイングバー・カンブラット氏(イケア)や、25位のアマンシオ・オルテガ氏(ザラ)など、グローバルSPA(製造小売業)関連者の躍進が目立ちます。これらの業種は、商品の生産国もマーケットも一国に限定せず、生産に最適(賃金が安いなど)な国で生産し、最適なマーケットのある国で販売をするという手法で大きく伸びてきました。
日本のファーストリテイリングも、この業種に入ります。

今でこそ、このような業態は当たり前に感じますが、冷戦終結による経済のグローバル化との関連が深いことに気づけます。

始まったニューエコノミー、躍進するIT長者

90年代後半〜2000年の特徴ですが、1995年のビル・ゲイツ氏のランキング首位獲得に始まる、IT長者の躍進が目立ちます。
また、95年はビル・ゲイツ氏率いるマイクロソフトによるWindows95が発売された年であり、この頃から個人のインターネット利用が本格化しました。それを受けyahooのようなwebサービス企業も急成長、1996年には米ナスダックへの上場します。

これ以降、IPOにより巨万の富を得る起業家が数多く誕生し、米国を先頭に各国でベンチャーブームが巻き起こるきっかけといえるでしょう。
これらにより、フォーブスのランキングも、92年に比べ重化学工業や小売りなどの比率が減り、IT企業関連者の名前を良く目にするようになります。

残念ながらIT関連の成長は2001年のITバブル崩壊により、一旦ブレーキが入るのですが、マイクロソフトやyahoo、DELLなど実のあるビジネスをしていた所はバブルの崩壊を乗り切り、2000年代逞しく成長を続けていく事になりました。

また、これは次回の記事での話しになりますが、ITバブル崩壊後もGoogleやFacebookなどの新興企業の躍進も続きます。

なお、このこのに関しては下記の記事もお読みください。

崩壊したソーシャルバブル~バブル崩壊の仕組みと今後の注意点~

そして2000年代、躍進する新興国と新たな成長企業の時代へ

90年代をこのように振返ってみますと、「冷戦の終結」の重みを強く感じます。

ビリオネアの世界に大きな影響を与えた「グローバル化」と「IT革命」は、冷戦の終結により起きたと言えるものでした。

冷戦の終結による東側世界の市場経済化はグローバル化を招き、軍事関連技術者の民間移籍はIT革命へと繋がります。我々が今使うインターネットも、元々は米軍の研究物であるアルファネットの民間利用が始まりです。

ただしこれらの変化は全てが順調だった訳ではありません。

2001年の、9.11のようなグローバリズムに対しての反動ともいえる悲劇は、テロリストの側がITを駆使することによって起きました。

しかし、このような悲劇がありつつも経済のグローバル化や技術革新は続き、その後の「新興国の躍進」や、「ネットサービスの興隆」へと進んでいきます。

これらの出来事が、ビリオネアの世界にどのような影響を与えていくのかを、次回の記事でお届けしたいと思います。

BY TOMB