EU離脱問題で大きく揺れる英国。表面的には離脱の方向に傾いているように見えるが、「Brexit(ブレクジット=英国のEU離脱)」がもし現実になれば、英国はもちろん、世界に投げかける波紋は大きい。それだけに、EUと英国それぞれの当局などキープレーヤーの見方も重要性を増している。
5月に英保守党が総選挙で勝利してから、「Brexit」が頻繁に取り上げられている。中でも「機密漏れ」から発覚したイギリス銀行(BOE)の独自調査は、経済的なリスクを把握する上でも重要だとして、公平な判断材料を提供すべく、情報の公開を求める声が高まっていた。
市場開放・ダイナミズム・安定性を重視するイギリス銀行
イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は 21日に、オックスフォード大学で講演し、併せて 100ページにのぼる調査報告書を公開した。「EU加盟国として最も恩恵を受けているのは英国かも知れない」と利点を指摘する一方で、同総裁は自由化された英経済は海外からの反動が伝わりやすく、イングランド銀行がいくつかの金融不安定問題に対処していることを認めた。
ただ、中立的な意見を並べながらも、 同総裁は 英経済にとって最も重要なのものは「ダイナミズム」と「安定性」だと述べ、「EUに留まることは英国とEU圏にその両方をもたらすだろう」と講演を締めくくった。
「分析結果は英国のEU離脱、残留を決定づけるものではない」と主張しつつも、カーニー総裁のスピーチではおおむね、EU残留を支持する色合いが濃く、「離脱することがあれば、EU加盟以来過去40年で最強の経済成長といわれている英国の経済成長を滞らせる」というEU離脱の不安要素を示唆するものだった。
逆に、離脱支持派は「分析の結果には十分な裏付けがない」と反論。離脱によってもたらされる恩恵として、「移民問題の緩和」「年間何百億ポンドもの節税」「経済負担からの解放」などを指摘。離脱支持派はこうした見方に対して、残留支持派は「貿易産業の失速による経済の低迷」や「急激な失業者の増加」するとの懸念を表明している。
国内外の圧力でジレンマに直面する首相
他方で、英保守党のキャメロン首相がEU離脱問題でジレンマに直面してもいる。同首相が掲げるEU内での英国の権限強化を図るには当局との摩擦が予想されるほか、米国からのEU残留への圧力にもさらされている。一方で、英国内のEU残留に反対する動きに対処しなければならないからだ。
実際、英国は移民や難民の制限を始めとする「EU内における権限の強化」を要求しているものの、EUの共通ルールに反する色彩が濃く、すんなりと受け入れられそうにないのが現状だ。
米国からの圧力としては、通商代表部のマイケル・フロマン代表が「英国はEU加盟国の肩書きを失うと同時に、貿易面での優遇資格も失うことになる」と反対する立場を示している。ほかにも、「Brexit」が
万が一、
現実のものとなれば、米国だけではなくほかのEU加盟国からの圧力も、すぐさま貿易面に反映される可能性もある。