2015年10月の年金制度改革で、公務員のための「共済年金」が一般サラリーマンの「厚生年金」と一元化された。この制度改正によって、共済年金特有の優遇制度といわれていた「3階部分」(職域加算分)は廃止されたが、新たに「年金払い退職給付」という制度が生まれた。

公務員への優遇は廃止されたと言えるのだろうか。「年金払い退職給付」について見ていきたい。

共済年金と厚生年金の違い

公的年金には、自営業者やサラリーマンの妻である専業主婦が加入する国民年金、サラリーマンの厚生年金、そして公務員のための共済年金と大きく分けて3種類の年金制度が存在している。

今回の制度改革では、厚生年金と共済年金が一元化された。なお、旧来の共済年金組合は消滅するわけではなく、被保険者の記録管理、標準報酬の決定・改定、保険料の徴収、保険給付の裁定等を行う機関として存続する。

もともと共済年金と厚生年金との大きな違いは、1階部分の老齢基礎年金、2階部分の退職共済年金(報酬比例部分)に加え、共済年金には「職域加算」という3階建て部分があったことである。また、厚生年金が16.766%の保険料率であるのに対し共済組合員は15.862%と低く抑えられており(2011年度比較。労使折半)、40年間勤務し年金を払い続けた平均的な男性であれば、同じ賃金であっても共済組合員のほうが厚生年金受給者よりも毎月2万円ほど手取りが多かった。

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年金の一元化による年金制度の変化

共済年金と厚生年金の一元化により、共済組合員の保険料率は、毎年0.354%ずつアップし、3年間かけて2018年までに厚生年金とともに18.3%の保険料率となるスケジュールとなっている。つまり、従来よりも保険料率が上がることにより、加入者が支払うべき毎月の年金保険支払額が増加するということになる。基本的に厚生年金保険の制度をベースにして、双方の制度的な差異を解消することを見込んでいる。

加えて共済年金特有の制度である「転給制度」が廃止された。たとえば、以前は本人の死亡後、遺族年金を受給していた妻も死亡した場合、共済年金では次の相続人に遺族年金受給権が転給されていた。しかし、制度の一元化により、このケースでは妻が死亡した時点で遺族年金の受給権は消滅することになる。

その他、制度改正による主な変更点は以下の通りである。

  • 年金の加入制限年齢が70歳となる(共済年金には年齢制限がなかった)
  • 未支給年金の給付範囲が、生計を同じとする三親等内の親族となる
  • 障害年金の支給要件の変更共済年金
  • 在職障害年金の在職支給停止の廃止
  • 3階部分(職域加算分)の廃止