「年金払い退職給付」の仕組み

上記のように、共済年金特有の優遇制度といわれていたいわゆる「3階部分」(職域加算分)は廃止されたが、共済年金加入者への3階部分年金は、新たに名前と形を変えて「年金払い退職給付」として存続することになった。この制度は、公務員の退職給付の一部として設けられたもので、退職年金、公務障害年金、公務遺族年金の3種類の給付がある。

「職域加算」は終身給付であったが、「年金払い退職給付」は終身年金と部分年金と半分ずつの支給となる。先出の40年間勤続の平均的モデル男性の場合、毎月の受給額は1.8万円となり旧来の職域加算から支給水準が下がる方針である。また、本人死亡時は有期年金部分のみ遺族に一時金として支給され、終身部分はカットされる。以前は受給者本人が亡くなってしまえば職域加算分は遺族に支給されなかったため、この点は改善されたと考えられる。

「職域加算」は他の年金と同様、現役世代が年金受給者を支える賦課方式であったが、「年金払い方式」は、自分のための年金原資を保険料で積み立てる積立方式であり、いわば確定給付型の年金といえる。積立方式であれば、少子化による現役世代の減少にも運用にて対応が可能と見込まれている。職域加算の支給は原則として65歳から開始され(60歳から繰上げ、70歳まで繰下げ支給も可能)、有期年金は10年、20年または一時金での受給方法も選択可能である。面白い特徴としては、不祥事等を起こした公務員に対しては、給付を制限する措置が組み込まれている。

「年金払い退職給付」は、新たに勘定を創設することなるため、「職域加算」とは別の取り扱いとなる。そのため2015年10月以降の退職者には、加入期間に応じて「職域加算」分の年金受給権が発生する。

このように、今回の制度改革によって完全に公務員の「優遇」が完全になくなるわけではない。年金の一元化はドラスティックな変化というより、徐々に時代に合わせて制度をすり合わせていくというイメージで進行する。今後は、個人型確定拠出年金への門戸が開放されることが決定されており、公務員をめぐる年金制度はこの1年で大きく変化することになる。一元化の影響により、対象者は損をする部分が多いと感じられるかもしれないが、変更事項をつぶさにチェックし、自身のリタイアメントプランについて考えることが今後ますます重要となってくるであろう。(ZUU online 編集部)

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