インド,生命保険市場,保険監督規制
(写真=PIXTA)


はじめに

インドにおける生命保険市場が、今後、将来にわたってさらなる成長が期待される有望な市場であることは、前回のレターで述べたとおりである。

前回のレターでは、インドの生命保険市場の一般的な状況について報告した。インドでは、昨今、市場の変化等に対応して、保険法の改正や数々の保険監督規制の改革等が行われてきている。さらには、インド政府は、種の施策等を通じて、生命保険のさらなる普及を図ろうとしている。

今回のレターでは、昨今のインドにおける保険監督規制を巡る状況及び生命保険普及に向けたインド政府の各種の施策等について、報告する(*1)。


保険法の改正

2015年3月に、新たに改正保険法「The Insurance Laws (Amendment) Act2015」が成立した。これにより、監督当局であるIRDAI (Insurance Regulatory and Development Authority of India)に大きな権限が与えられ、より効率的かつ効果的な監督を行っていくことが可能となった。

具体的には、それまでは、法律に組み込まれていて容易には変更できなかったルールの変更や作成が、IRDAIによって、より柔軟性を持って行うことができるようになった。以下で、その改正内容の一部(*2)を紹介する。

◆外国資本による出資規制の緩和

外国の会社は、インドの会社とのジョイント・ベンチャーによって、インドの保険市場に参入ができる。これまでの外国会社による直接投資の上限は26%であったが、これが49%に引き上げられた。これに伴い、いくつかの会社が、引き上げ申請を行う意向を示してきている。

グローバルな保険会社によるインド市場への投資を促すことを通じて、インド国内の保険に対する需要を増大させるとともに、さらなる競争を促進することを通じて、保険会社の効率性と商品開発力を向上させることを企図している、としている。

なお、この規制緩和にも関わらず、保険会社は、引き続きインド人又はインドの会社によって、所有され、管理されなければならない。

◆外国再保険会社に対する規制緩和

外国再保険会社は、免許を得て、インドで支店を開設することができることになった。その場合、(当該再保険会社は)最低50億ルピー(925億円)の純資産を有しなければならない。なお、契約者ファンドをインド国外に投資することはできない。

また、元受会社が再保険会社に100%出再することは認められない。さらに、Lloyds(ofLondon)やその会員が、再保険事業のために支店を開設したり、インドの保険会社に出資することで、インドで事業を行うことができることとなった。

主要なグローバル再保険会社の参入により、これまでは高リスクと考えられていた、より複雑なリスクを有する商品を設計・提供することができるようになる、と期待されている。

◆医療保険に関する規制の改正

医療保険は、それまでは損害保険の一部として規制されていたが、改正法の下では、医療保険を規制する単独の法令を有する分離された事業と見なされる、ことになった。また、最低資本要件が10億ルピー(1ルピー=1.85円(以下、同様)として、18.5億円)に設定された。

今後は、医療保険により焦点を当てた規制の作成等にプライオリティが置かれていくことになる。

◆消費者権利の保護のための規制強化

消費者権利の保護の目的で、違法行為に対して、代理人や保険会社にペナルティを課す規定を導入し、不適正販売を減らすために保険商品のマルチレベル販売を認めない、こととした。さらに、エージェントや保険会社による不適正販売や不正話法を含む違反に対して、より高額の罰金を課す規定を導入した。