保険法の改正に伴う規制の改正等

保険法の改正に伴い、監督当局は既存の規則やガイドラインの見直し等を行ってきている。今なお、いくつかの見直し等のためのED (Exposure Draft:公開草案) が公表されてきている。

その中から、低所得層や地方・社会セクターにおける生命保険の普及に向けた規制改正の内容を2点紹介する。

◆マイクロ・インシュアランスに関する規制の改正

IRDAIは、マイクロ・インシュアランスに関する規則「IRDAI (Micro Insurance) Regulations,2005」を改正して、新たな規制「IRDAI (Micro Insurance) Regulations,2015」を、2015年3月に公表した。この改正内容の具体例は、以下の通りである。

・生命保険会社は、生命保険と損害保険のマイクロ・インシュアランス商品を販売するために、損害保険会社と提携ができる。

・マイクロ・インシュアランスのエージェントは、1つの生命保険会社、1つの損害保険会社に加えて、AIG (Agriculture Insurance Company of India) 及び医療保険専門会社の1つのエージェントとして働くことができる。

◆地方・社会セクターでの最低販売量規制の改正

IRDAIは、地方・社会セクターでの最低販売量に関する規制「IRDA I(Obligations of Insurers to Rural and Social Sectors) Regulations,2002」を改正して、新たな規則「IRDAI (Obligations of Insurers to Rural and Social Sectors) Regulations,2015」を、2015年8月に公表した。

これは、各保険会社に、保険契約の一定割合を「地方・社会セクター(Rural and Social Sectors)」から計上することを求めるものである。その比率は事業年数によって異なり、段階的に増加していく。

「地方セクター(Rural Sector)」の場合、初年度の7%から段階的に増加し、10年目以降は20%となり、「社会セクター(SocialSector)」の場合、初年度の0.5%から段階的に増加し、10年目以降は5%となる。


生命保険普及のための政府施策

インド政府は、手頃な価格で生命保険や年金の契約を購入可能な新しいスキームを提供することで、低・中所得層への保険の浸透を図ろうとしている。2015年5月に、以下の3つの新しい社会保障スキームが導入された(*3)。

◆PMJJBYの導入

PMJJBY  (Pradhan Mantri Jeevan Jyoti Beema Yojana)  は、18歳から50歳までの貯蓄口座保有者に対して、低コストで生命保険を提供するものである。具体的には、330ルピー(610円)の年間保険料で、200,000ルピー(37万円)の保障が得られる、というものである。

これにより、地方や郊外での保険ニーズを喚起させ、保険普及率を高めることを企図している。

◆PMSBYの導入

PMSBY  (Pradhan Mantri Suraksha Bima Yojana)  は、18歳から70歳までの銀行口座を有する個人が誰でも加入可能で、12ルピー(22円)の年間保険料で、200,000ルピー(37万円)の災害死亡保障が得られるというものである。

◆APYの導入

APY (Atal Pension Yojana) は、老後の所得保障を提供するために導入された。18歳から40歳までの銀行預金口座を有する個人が誰でも加入できる。

このスキームによれば、最低20年間の保険料払込で、払込保険料に応じて、60歳から、毎月1,000ルピー(1,850円)から5,000ルピー(9,250円)の最低保証された年金が支払われる。政府が、加入者の保険料の50%か、1,000ルピーのいずれか低い金額を5年間支払う。

殆どの保険会社が、これら3つの商品を既存のあるいは新規に提携したバンカシュランスの銀行を通じて販売している。こうした積極的な取組みにより、2015年12月10日時点の加入者数は、既にPMJJBY2,917万人、PMSBY9,242万人、APY128万人に達している。