貿易(韓国・台湾・タイ・インドネシア・インド:12月、その他の国:11月)

輸出(通関ベース)の伸び率(前年同月比)は、原油一段安や中国をはじめ世界経済の回復が鈍いことから輸出に下押し圧力が掛かり、フィリピン・タイを除いて二桁マイナスと低迷している(図表2)。

アジア新興経済2

フィリピンは、主力の電子製品の好調が一次産品やその他製造品のマイナスを下支えし、マイナスが大きく縮小した。一方、韓国は供給過剰感がある鉄鋼や液晶パネルなど、マレーシアは通貨安で好調だった電気・電子製品が鈍化し、3ヵ月・6ヵ月平均を下回った。台湾は主力の電子製品、化学製品、プラスチック製品などの低迷が続いている。

またインドネシアは石油・ガスの価格下落や非石油ガスの輸出鈍化により、8ヵ月連続の二桁マイナスを記録した。輸入の伸び率(前年同月比)は、加工貿易の縮小による大幅マイナスが続いているものの、景気刺激策や公共投資の執行加速などによる内需回復により、総じて上昇傾向が見られる(図表3)。

アジア新興経済3

フィリピンは同10.1%増と、投資需要が旺盛で資本財や原材料・中間財が牽引役となり、2ヵ月連続の二桁増となった。インドは通信機器や金などの輸入が増加してマイナス幅が大きく縮小した。

自動車販売(12月)

12月の自動車販売台数の伸び率(前年同月比)を見ると、韓国・フィリピン・インドは堅調に推移し、マレーシア・タイが大きく上昇するなど、幅広く持ち直しの動きが見られた(図表4)。

アジア新興経済4

韓国は同13.7%増と、引き続き新車効果や個別消費税の引下げ1が追い風となり、5ヵ月連続の二桁増を記録した。インドは同+10.7%と、金利引下げによる消費者心理の回復や新車投入を受けて3ヵ月連続の二桁増となった。またタイは同13.3%増となり、1月からの自動車の物品税改定を前に駆け込み需要が増加し、自動車買い替え促進策が終了した2013年12月以来の二桁増を記録した。

さらにマレーシアは同7.3%増と、リンギ安を背景とする1月からの値上げを前に駆け込み需要が生じ、3ヵ月ぶりに上昇した。このほか、台湾は同0.0%増と、1月から実施される自動車買い換え促進策(2016年施行)で減免の対象外となる者らの買い控えの動きが弱まって2ヵ月連続のプラスとなった。

一方、インドネシアは同7.0%減と、3ヵ月・6ヵ月平均を上回ったものの、販売台数は直近5ヵ月で最も少ない7.3万台となった。景気減速による消費者の購買力低下が影響したと見られる。

消費者物価指数(12月)

12月の消費者物価上昇率(前年同月比、以下CPI上昇率)は、14年後半の原油価格下落による物価下押し圧力が後退して緩やかな上昇傾向にはあるものの、景気減速や原油一段安の影響で上昇ペースは鈍っている(図表5)。

アジア新興経済5

インドは前年同月比5.6%増と、豆類をはじめ香辛料、油・油脂といった食品価格を中心に4ヵ月連続の上昇となった。またフィリピンは同1.5%増と、力強い経済成長やペソ安によるインフレ圧力、そして12月の台風被害を受けて3ヵ月連続の上昇となった。

一方、インドネシアは同3.4%増と、14年11月の補助金付き燃料価格値上げの上昇要因が剥落し、中央銀行のインフレ目標圏内(2015年は3-5%)の下方まで低下した。またタイは同0.9%減と、国内ガソリン価格の値下げや食料供給量の増加から低迷しており、本稿対象7カ国中で唯一伸び率がマイナスとなった。