スキャンダル,政治家,辞任
(写真=PIXTA)

甘利明前経済再生担当大臣の収賄・斡旋疑惑、武藤貴也衆議院議員の金銭問題ならびに議員宿舎の不適切利用、宮崎謙介衆議院議員の不倫問題--。政治家のスキャンダルが頻出している。これらのスキャンダルで甘利前大臣は大臣の職を辞し、宮崎衆議院議員も議員辞職したが、その必要はあったのだろうか。

収賄斡旋、不倫行為はもちろん是とできないが、スキャンダル、特に個人的な事由についての問題で議員辞職まで追い込むことが日本の国益となるのだろうか。

女性問題で時の総理が退陣

ここ数十年の国政に最も大きな影響を与えた政治スキャンダルは、第75代内閣総理大臣であった宇野宗佑氏の女性問題であろう。東京・神楽坂で人気があった芸者に「もし愛人になってくれたらこれだけ出す」として指3本を出し、芸者は300万だと思っていたら30万しかもらえなかった、手切れ金ももらえなかった--などと週刊誌にリークしたスキャンダルである。

宇野首相(当時)は自らのシベリア駐留を書いた「ダモイ・トウキョウ」が映画化されるほどの文才、またその政策能力については極めて評価をされており、首相就任以前はさほど知名度がなかったものの、政府内や関係者からは高く評価をされていた。

しかし、愛人を作っていた事もさることながら、金を出さなかった事で一般有権者からの人気が下がり、また同時期のリクルート事件の影響、マドンナブームもあったためにわずか69日の短命内閣となってしまった。政策通の総理を女性問題にて退陣させることは果たして国益に沿っていたのか、いまだに疑問視されているスキャンダルであった。

米国大統領にも発生した女性スキャンダル

女性スキャンダルを起こしているのは日本の政治家だけではない。日本でも有名な米国の女性スキャンダルは第42代アメリカ合衆国大統領ビル・クリントン氏と、ホワイトハウスにて実習生をしていたモニカ・ルインスキー氏とのスキャンダルであろう。

当初はクリントン大統領も否定していたが、DNA鑑定によって関係性があった可能性が極めて高いと証明された為に、のちに不適切な関係であった事を認めた事件だ。この際には、ホワイトハウスを利用していたこと、また当初否定していたために偽証を行ったことが責められたが、上院議会において無罪の評決となった為にクリントンは大統領の職を継続した。

本来はあくまで夫婦・家庭内や関係者間でのみ問題となる様なスキャンダルに対して、疑惑のみで退陣まで追い込んだ日本と、本人が認めた場合であっても無罪として大統領の職を継続させた米国の価値観は大きく異なっている。

さらにいえば、イタリアのベルルスコーニ元首相は数多くのスキャンダルで知られている。

政治家は聖人君子でないといけないのか?

日本で辞任騒動が起きる最大の理由は、日本人は政治家に清廉性を求めていることだろう。しかし政治家は清廉でないといけないのだろうか。

政治家として国の為に働く者として選出された以上、国益に反する様なことをしてはいけないが、政治家の性的な特性や関係について、立場を利用したものではなく個人のレベルに収まる場合であれば、批判する事は適切ではないのではないだろうか。

先般の武藤衆議院議員の性的趣向についての報道は、性的マイノリティに対する否定とも見て取れる報道であった。一般市民の趣向であれば擁護するべきものだと報じていた報道機関が、国会議員が同様の趣向を持っていることが分かると叩く報道へとなっていた。

さらに武藤議員については、金銭問題についても、富裕層・セレブ向けに発生している非上場詐欺事件に巻き込まれたに過ぎないようにも見て取れる。潔癖性を求めている以上に、政治家に対して極端な“理想像”を求めすぎてしまっているのではないだろうか。政治家は金儲けをしてはいけないとの議論もよく耳にするが、金儲けが出来ない政治家が日本経済の活性化、日本という国に金を儲けさせる仕組みを作る事が出来るのかという疑問も存在する。

しかし多くの日本人は、田中角栄氏や小沢一郎氏の様な大物政治家については潔癖性を求ていないように思える。政策実現能力を求めているのではないか。橋下徹前大阪市長も女性スキャンダルが一時期発生したが、自身の選挙には影響なく、むしろ演説のネタとしても利用していた。

これらの事例を見ると、大物政治家には潔癖性を求めず、市民に近い政治家には潔癖性を求めているようにも見受けられる。しかしこれは、政治をより特別な物として、一般市民から遠い物に、有権者自身がしている様にも見ることができる。

政治家を特別視し、潔癖性を求めるのではなく、政治家が普通の市民の代表として、普通の価値観として活躍できるように通常の道徳を求める必要があるのかもしれない。(木之下裕泰、金融・政治アナリスト/MBA・金融工学修士)

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