世紀のイベントの開催が着々と迫っている。ラグビーW杯は2019年9月20日、東京五輪は2020年7月24日に開幕される予定だ。世界的なイベントなだけにさまざまな経済効果や特需が期待される。注目の投資分野にフォーカスしてみよう。
世界的なイベント期間中の金融市場は凪 (なぎ) になる
「世界三大スポーツ」にも数えられる、五輪、サッカーW杯、ラグビーW杯。2015年のイングランドでのラグビーW杯の興奮が蘇る。2016年のリオ五輪では、日本男子体操が念願のアテネ以来3大会ぶりの金メダルを獲得。金メダルが決まったときの歓喜のシーンに胸を熱くした人も多いだろう。
一方、為替市場や株式市場などの金融市場では、大きなスポーツイベントの開催中は市場参加者が減り、市場は閑散としてボラティリティ (価格変動幅) が低下することが多い (凪相場:相場に動きがないこと) 。投資家もトレーダーもイベントの期間中は試合に熱狂し、トレードは後回しになるからだろうと考えられている。
大手金融機関のストラテジストやエコノミストは、イベントの経済波及効果について分析するだけでなく、なかには数理統計を駆使して過去の試合のデータや直近の対戦成績などを分析し、W杯や五輪の予測をまじめにレポートする人も多い。
ラグビーW杯は約4,300億円、東京五輪は約2兆円の経済波及効果
公益財団法人ラグビーワールドカップ2019組織委員会によれば、ラグビーW杯の経済波及効果は4,372億円に達するとしている。スタジアムでの観戦者は最大で延べ180万人、訪日観光客は40万人に達する可能性があると分析しており、インバウンド (訪日外国人旅行) 客の直接消費だけでも1,057億円と予想している。
東京五輪の波及効果はさらに大きく、東京都オリンピック・パラリンピック準備局は、直接的効果だけで2兆円に達すると分析している。開催後の施設や選手村の再利用、交通関係インフラ整備、観光需要の拡大といったオリンピックの開催によるレガシー効果を加味すると、2030年までにその額は12兆円に達し、合計の経済波及効果は14兆円だとしている。
有望な「関連産業」「関連サービス」「関連テーマ」は ?
具体的にどのような産業に影響を与えるのだろうか ?
【オフィシャルスポンサー】
一般的には、オフィシャルスポンサーがいちばんの関連銘柄としてあげられる。選手の活躍が世界的に放映され、メディアでの露出が高まり、世界的な広告効果が期待されるからだ。イベントが盛り上がれば、オフィシャルグッズなどの特需も発生するだろう。
オフィシャルスポンサー以外でも、勝ち進んだチームや選手へユニフォーム等を提供しているスポーツウェアやスポーツ用品メーカーにも注目したい。表彰台で選手が着ていたウェアなどは話題になることが多く、株式市場で関連銘柄としてご祝儀的な買い人気を集めることもある。
【メディアや広告代理店、PR会社、警備会社など】
また放映権をもつメディアの注目度も増す。たとえば期間中の放映だけでなく、イベント終了後も継続して有料課金が増える可能性も高いだろう。映像関連や音響関連業界も忙しくなりそうだ。そのほか、イベントの規模が大きく期間も長いため、広告代理店、イベントやディスプレイなどを手掛ける会社、PR会社、さらに警備会社などの需要拡大効果も大きくなることが推察される。
【自動翻訳ツール会社やホテル業界、旅行業界など】
政府は東京五輪の開催される2020年にインバウンド客を4,000万人にすることを掲げている。2018年には3,000万人を超えており、実現の可能性も高まっている。そのような中で、翻訳ニーズの増加にも注目したい。自動翻訳ツールが本格的に普及し始めており、W杯、五輪開催時にはさらに需要が高まるだろう。
株式市場でインバウンド関連と言われるような、ホテル業界、航空キャリアや電鉄などの交通機関、旅行業界などには引き続き注目が必要だ。小売業界、とくに化粧品は、中国人旅行客が日本で品質の高さを実感し土産ものとしての購入に加え、帰国後もインターネットや現地の百貨店でリピート購入しており、家電量販店ともに注目が集まるだろう。
インバウンドによる消費の増加だけでなく、AV機器の国内需要増にも熱い視線が集まる。テレビは2011年にアナログから完全にデジタルに移行した。2019年は完全デジタル化で特需が発生したテレビが買い換えサイクルの中心に入るとされている。
W杯、五輪開催を控えるほか、消費増税も2019年秋に予定されているため、買い換えサイクルが加速する可能性もあり、テレビを買い換えるなら周辺機器も一緒に、という流れにも注目できるだろう。
身近なところから投資のネタ探しに
大きなスポーツイベントが開催されると、株式市場では関連銘柄を連想ゲームのように探し、ご祝儀商い的な様相で市場を盛り上げて楽しむ一部の投資家も存在する。関連銘柄探しも立派なイベント投資の手法といえるだろう。身近なところから投資のネタを探してみると、スポーツイベントも新たな視点で楽しめるかもしれない。(提供:大和ネクスト銀行)
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