総務省が2017年5月に発表した家計調査報告によると、2016年における二人以上の世帯の貯蓄額は平均1,820万円で、4年連続で増加しています。

また、同調査によると、二人以上の勤労者世帯の収入は月当たり平均52万6,973円という結果でした。前年と比べて0.2%増と上げ幅は小さいようですが、収入がさほど上がらなくても貯蓄は増えているというのが現状です。

貯蓄好きといわれる日本人の国民性が見えてきますが、どうやら貯蓄体質には県民性も大きく影響しているようです。

都道府県別貯蓄額ランキングから見えること

都道府県別貯蓄額ランキング
(画像=PIXTA)

総務省が2015年に発表した全国消費実態調査から、二人以上の世帯の貯蓄額の都道府県別順位を見てみましょう。

都道府県別貯蓄現在高(二人以上の世帯)

 順位  都道府県  貯蓄現在高(千円)
 1  東京都  19.669
 2  神奈川県  190.35
3  福井県 18.562
4  愛知県  18.551
 5  香川県 18.215 
 6  奈良県 17.849 
 7  和歌山県 17.629 
 8  千葉県 17.479 
 9  三重県 17.209 
 10  富山県 17.170 

総務省統計局/平成26年全国消費実態調査(二人以上世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果)より

上位10位以内にランクインしている愛知県や千葉県は賃金水準も高く、厚生労働省の平成28年賃金構造基本統計調査においてもそれぞれ4、9位に位置しています。

しかし、ここで注目したいのは、賃金水準が全国平均以下でありながら貯蓄額の上位10位以内に福井県、富山県、香川県がランクインしていることです。これには貯蓄体質の県民性が大きく影響していると思われます。これら3つの県から貯蓄するコツを見ていきましょう。

同居率と共稼ぎ率の高い北陸2県

福井県と富山県の共通点は、親との同居率が高いことがあげられます(平成27年国勢調査より)。親と同居すれば一般的に住居費が抑えられる傾向がありますし、賃金水準は2県ともに全国平均以下であるものの、共稼ぎをすることで世帯収入は増えることになります。

また、帝国データバンクの社長輩出率によれば全国1位は福井県、3位は富山県であることから経営者が多いことも貯蓄額と関係がありそうです。

ところで、一般的に北陸とまとめられがちですが、越前にある福井と越中にある富山は似て非なるものともいわれています。

収入を増やすことが得意!?な福井県

貯蓄額3位の福井県は、34年連続で社長輩出数がトップの県です。ものづくりの産業が栄えており、特にメガネフレームのシェアは全国9割を誇ります。福井県は独立資本の企業が多いことが特徴だといえるでしょう。また、江戸時代には鯖街道と呼ばれた物流ルートがあり、魚介類などの物資を京都へ運ぶ「越前商人」は商才にもたけていました。

このような土壌で育った福井の県民性には自ら仕事を作り出すポジティブ精神があると考えられます。収入を増やし、貯蓄を増やすのが得意な県民性なのかもしれません。

「継続は力なり」の富山県

「越中富山の薬売り」といわれる商法を江戸時代に広めたのが今の富山県です。お客様に薬箱を預けて定期的に訪問し、使用分の薬の代金を回収する「置き薬(配置販売)」は、当時の富山藩主の精神「先用後利(用を先に利を後にせよ。先に使ってもらい、あとで代金を受け取ること)」から生まれたビジネスです。

しかし、このような仕組みのビジネスは一朝一夕で成功するものではありません。薬のことを学ぶきまじめさやお客様のところに定期的に足を運ぶ継続性、強い道徳観を持っていることもビジネスが広がった要因だったといえるでしょう。独特なビジネスセンスのほかに、富山はエンゲル係数(家計の消費支出に占める飲食費の割合)も他の都道府県と比べて低めです(平成26年全国消費実態調査より)。過度な消費を抑えることも貯蓄の秘けつかもしれません。

安い食費と備えて貯めるで貯蓄額全国5位になった香川県

前述の都道府県別エンゲル係数において、全国で47位と最も低い県が香川県です。「うどん県」といわれていますが、うどんをよく食べる香川の食費は非常に安く済むといわれています。

また、昔から香川の人たちが悩まされてきた水不足という土地柄の影響にも注目したいところです。水不足対策で設けたため池という存在が「常に備えをしておけば安心」という気持ちを育て、貯蓄を大切に思う精神を培ったといえるでしょう。県民に「先に行動する」「貯めておく」という行為が刻み込まれているのかもしれません。

今回紹介した3つの県の特徴から、工夫次第で貯蓄ができることが分かったのではないでしょうか。「貯蓄は難しい」と諦めるその前に、もう一度自分のお金の使い方を見直してみませんか。(提供=auじぶん銀行)

執筆者:三原由紀(ファイナンシャルプランナー)

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