読書後のアウトプットで効果は数十倍に!
本はただ読んだだけでは、その情報を得るだけに留まる。読書後に何をするかで、その本から得られることは何十倍にも高まり、そしてそれが自分の実となっていくのだ。
さらに、電子書籍よりも、紙の本で読むほうが、その効果はさらに高まると言う。では、具体的にどのようなことをすればいいのか。ビジネス書の愛読家として知られる藤井孝一氏に、「1冊の本に付加価値をつける」方法をうかがった。
読んだ内容をすぐに忘れてしまう理由
あなたはこれまで読んだ本が自分の血肉になっていると感じていますか? 「読んでいる最中は感銘を受けるのに、いつの間にか忘れてしまう」と思うことがよくあるとしたら、読み方に問題があるのかもしれません。
世の中に"いい本"は星の数ほどあります。しかし、本当に人生に活かせるかどうかは、読後の行動にかかっているのです。それは本を読んだら「アウトプット」を習慣化することです。
本を読む行為は、知識を詰め込んでいくインプットの作業です。その知識はアウトプットにつなげないかぎりは、記憶の底に沈んでいき、やがて消去されてしまいます。アウトプットすることで、それはあなたの行動の1つに加わり、経験へと生まれ変わります。すると、読書から得られるリターンは10倍にも20倍にも膨らむのです。
読書をアウトプットにつなげる方法は、大きく4つあります。
1つ目は「行動する」こと。これは最強のアウトプット法です。ただ、本はノウハウの宝庫ですから、すべて実践するのは困難です。まず本に出てきたノウハウの10%、あるいは1つを実践してみる。それだけでも十分です。
17年ほど前、当時、サラリーマンだった私は船井幸雄さんの『早起きは自分を賢くする!』という本を読んで感銘を受け、ただ1つ、「朝5時に起きる」という行動を実践してみることにしました。それによって朝の時間がたっぷりできたので、勉強時間に充てることにしました。おかげで語学の勉強をしたり、中小企業診断士の資格を取ることができ、現在の経営者としての仕事につながっていきました。
行動とは、そのノウハウを実行することだけではありません。著者が勧めている本や商品をチェックしたり、著者のセミナーや講演会に参加するのも立派なアウトプットになります。
まずは1つだけ、新しい行動に踏み出してみるのです。すると、あなたの人生にこれまでなかった行動原理が生まれ、それが新たな発見や学びを運び込んできます。
2つ目は「書く」こと。ビジネス書やノウハウ本は学ぶために読むものです。著者はあなたにとっての“先生"であり、本で語られる内容は“講義"です。学校で授業を受ける際はノートを取りますが、それと同じ。学びを確実に自分のものにするには、書く行為が非常に効果的です。
本は読んだ直後は記憶が鮮明ですが、1週間も経つ頃にはかなり薄れてしまいます。一度書くことで記憶に留まり、時間を経てからもノートを見れば、自分が書いたキーワードやポイントから記憶がイモづる式に引き出されるようになります。
3つ目は「話す」こと。同僚や部下、家族や友人など身近な人に読んだ本の内容を自分の言葉で伝えてみましょう。すると、改めて学びが深まり、知識が腑に落ちてきます。人に伝えることで、話のまとめ方や相手に合わせた話し方の要領を得られるメリットもあります。
4つ目は「考える」ことです。本を読み終えたら、少しの間、他の情報をシャットアウトして、その本について思いをめぐらせる時間を作ってください。何が心に響いたのか、今の自分の仕事にどう活かせるのか、あるいは、本に対する疑問や批判でもいいでしょう。
それが記憶を定着させ、思考を深めるトレーニングにもなります。話すことが苦手だったり、行動するための時間が十分に取れないのであれば、考えることからでも始めてみてください。
これら4つのアウトプットは全部実践する必要はありません。本を読んだあと、自分ができそうなものを1つ行なうこと。すると本からの学びが、人生や仕事にリンクしてくるはずです。