豪州,ラーメン
シドニーの味噌ラーメン(写真=PIXTA)

日本人は無類のラーメン好きである。豪州在住の私も帰国する時、成田が近づくに連れて喉が鳴り始めるのを実感する。都内に入り、向かう先は某ラーメン店である。

海外でも日本のラーメンは人気だ。一風堂がニューヨークに出店。人気、味共に「Kuro-Obi=黒帯」などと称され、日本食という高級感からラーメンの新しい価値観をも生み出した。

またロンドンでもこってりとした豚骨ラーメンが人気で店が増えチエルという。世界主要都市でのラーメンへの勢いは止まらないようである。

オーストラリアは言わずと知れた多民族国家である。そんな中、日本の食文化「ラーメン」の位置づけはどんなものなのであろうか? 今回はシドニーを中心にオーストラリアの「ラーメン事情」をまとめてみよう。

オージー流楽しみ方 「会話とお酒を楽しみながら」

シドニーの金曜日も日本と負けず劣らず活気がある。目の回るような一週間を終えたビジネスパーソンたちが街に残り、ダイニングの場所を求めている。

シドニーのラーメン店では1番と言われている某ラーメン店。行列ができるほどのにぎわいで、ダイニングスポットとしても人気がある。

真っ白なシャツを汁で汚さないように、ゆっくりと麺を口に運ぶオージーグループ。「ズルズル!」と音は立てず、器用に箸を使って、まるで麺を折りたたむようにして食べている。湯気の立つ豚骨ラーメンを頂きながら、赤ワインをグラスで嗜む。見事な和洋折衷の出来上がりである。

日本のラーメン店では、食べ終わったら直ちに店を出るのが一般的だが、シドニーのそれはカフェのような装い。ラーメンを食べながら、ゆっくり会話し、ワインやビールも楽しむのだ。

おおむね豚骨系がオージーには人気のようだ。醤油系スープや魚介類をベースとしたスープも美味しいが、多少塩味が強いかもしれない。

しかしながら、黒か白かはっきりした味を好むオージーには好評のようである。値段はおよそ14豪ドル(1100円程)だが、ちょっとしたテイクアウトでもこれくらいするので、高いという感じではないだろう。

エンターテイメント性のある替え玉への挑戦。まるでイベントのように楽しむ姿は、舌はもちろんのこと、腹、そして心まで満たしているかのようだ。

「チャイニーズ・ヌードル」として認識されている?

シドニーやメルボルンには美味しいラーメン店が増えてきているが、郊外に行けば行くほど、そのクオリティーはゆるやかに下がっていく。

ローカル色の濃い地域、いわゆる田舎に行くと、「ヌードル」=「チャイニーズ・ヌードル」という認識が強い場合が多い。

例えばそれは、焼きそばのような中国風炒め麺か、薄味の醤油味のスープに細いうどん麺といった具合である。実際、食事を提供しているのも中国人系かフィリピン系移民が多いのである。

たまに、「ジャパニーズ・ヌードル」のメニューを郊外で発見するも、それは正真正銘「ワンタン・ヌードル」であった。

シドニーやメルボルンでは「ラーメン」は、醤油味、豚骨、味噌、塩味があり、極上ちぢれ麺の「日本の食文化」であるが、田舎ではそうはいかない。「日本のラーメン」が「チャイニーズ・ヌードル」の枠を超えて独り立ちするのは大変なことなのかもしれない。何せオーストラリアは米国と同じ大きさである。

そうは言いつつも、シドニーやメルボルンはオーストラリアの情報発信源であり、東京オリンピックも近い。日本に更なる注目が集まればラーメン市場も盛り上がるに違いないだろう。

多国籍だからこそ見られるこんな事・あんな事

ここオーストラリアでは宗教上の理由から、豚肉を食べない人達がたくさんいる。そんな人は「豚骨」を避け「醤油」や「味噌」を選択するようだ。

醤油に至っては、風味や塩気、また含まれる材料が違うものの、彼らにとっては普段使用の食材である。自然と受け入れられる味のようだ。

加えて、中国系や東南アジア系移民の人達は、麺を日常から食べるので、日本のラーメンはなじみやすいようだ。

また「麺は辛くなければダメだ!」と真っ赤な唐辛子をバサバサかけて食べる、そんな東南アジア系の男性も多いと聞いた。

そして、オージーは「味噌」に対して寛容である。

この国には「ベジマイト」という茶色っぽいペースと状の食べ物がある。しょっぱい感じはするが栄養満点の発酵食品である。子供の時から「トーストにはベジマイト」 そんな習慣があるくらいオージーにはなじみ深い、ちょっとクセのある食べ物だ。

「味噌ってベジマイトをミルクっぽくしたような感じだよね」

なるほど、それにポークチョップの要素を加えれば「豚骨味噌」の完成だ。

スープを飲み干す派、それとも残す派、それぞれこだわりはあるだろう。概して、オージーはスープを味わう代わりに「お酒や会話」を楽しむようだ。「スープをすするのはマナー違反ではないよ」と言われたオージーたちが、首を傾げながらも、飛び散るスープのしぶきを気にせずに飲むようになるまでには、多少時間がかかりそうである。(トリー・雪香、豪州在住のフリーライター)

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