2人で将来を誓い合ったときには「愛の素」でも、別々に生きることが決まると、とたんに大きな問題となるのが「不動産」だ。不動産(住宅)は人生で最も大きな買い物であるため、購入の際は夫婦で何度も話し合い、意思確認をして購入を決めるもの。「離婚」をポジティブに考えたとき。「愛の巣」がお荷物にならないためにどうしたら良いかを考えていこう。

1.離婚前提で購入するわけではない不動産

はじめに断っておくが、「離婚に備えて不動産を購入しよう」という乱暴なアドバイスをするつもりはない。最近こそ「いずれ売却する」という購入も増えてきたとは思うが、多くの場合不動産は「終(つい)の住処」として購入する。

ただ、ここで気を付けたいポイントがある。それは、「不動産を共有名義にしない」ということだ。共有名義とは「夫婦でお互いに不動産の所有権を持つこと」を指す。たとえば夫婦別々に住宅ローンを借りる「ペアローン」の場合などが該当する。

住宅ローンの借入額が高いと、そもそも不動産の購入が難しいため、ペアローンはとても有効の機会だ。ただ、離婚になった場合、「ペアローンがなければ不動産の所有権が争点にならなかったのに」というケースも多い。

金融機関によっては、ペアローンに際し、出て行った方の負担分を一括で払うよう要求してくる場合もある。あまりにも気の利かない話ではあるが、「自分たちが融資した人はもうここには関係ないので一括返済を求める」という具合だ。ともに所有していた不動産を活用する場合は、金融機関や不動産会社をはじめ、さまざまなステークホルダー(利害関係者)に意思を確認する必要があるだろう。

なお、離婚時の住宅ローン残債も「マイナスの資産」となり、財産分与の対象になることは意外に知られていない。不動産は金額の大きな「資産」だけに、この分割においてはどちらかが主導権を握らなくてはならない。その大まかな4つのステップは以下の通り。

1 残っている不動産ローンの金額を確認する
2 現在の不動産の価格(時価)を確認する
3 不動産の価格は住宅ローンより大きいか、小さいかを確認する
4 財産分与(話し合い、調停、裁判)

この通り、不動産の処理はとても煩雑なもの。もし可能ならば、不動産の処理は後回しにして、ともすれば相手に任せたいと思うだろうか。ところが不動産処理の「あとまわし」は、まずお勧めできない。

2.不動産の処理を後回しにしない

離婚をポジティブなものとして考えるには、不動産資産の早めの処理は欠かせないポイントだ。離婚は感情が離れたあと、さまざまな財産分割があるもの。不動産の処理は評価額も高く、手続きも煩雑だが、弁護士などの専門家を入れながら処理手続きと向き合うようにしたい。繰り返しになるが「早めの対策」がポイントだ。

3.不動産の処理からお金面での離婚のプロデュースを

ただ、不動産の共有を単独所有に変えるのは、いわゆる「ノーコスト」で進められるものではない。不動産の所有を話す場合、所有権は「資産」のため、片方が引き取る場合は相応の資産譲渡が必要になる。感情が離れつつあるなかでの、この金銭的な「駆け引き」はとても難しい。

そこで活用できるのが「離婚コンサルタント」だ。お互いの感情の調整と、そのために遅れられない不動産の対応タイミングの「代行」を依頼することができる。実は筆者のようなFPのなかでも、「2人の船出である結婚よりも離婚の際の方が、お金の相談が多い」という話を聞く。今回の連載で特集した年金分割もそうだが、感情が離れ離れになるなかで不動産の処理は大きな課題だ。

先ほどの一括返済など、離婚にともなうリスクも、はじめての場合はなかなかわからないだろう(そもそも2回目、3回目というのもなかなかない話ではあるが)。そのように見えないリスクも、プロに依頼することで予め摘み取るようにしたいもの。

4.お金から「離婚」をポジティブに考える

「離婚をポジティブに考える」をテーマに、年金分割、確定申告の着眼点、そして不動産の共有名義を扱った。結婚したとき、仲良く日々を暮らしているときは、離婚の「り」の字も考えないのかもしれない。

ただ、離婚時の正しい対応、特にお金の対応は、その後のお互いの人生をとてもポジティブなものにする。お金面から「離婚」をポジティブに考える。さまざまな面から、考えていきたいものだ。

工藤 崇 FP事務所MYS(マイス)代表
1982年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後上京し、資格試験予備校、不動産会社、建築会社を経てFP事務所MYS(マイス)設立、代表に就任。雑誌寄稿、WEBコラムを中心とした執筆活動、個人コンサルを幅広く手掛ける。ファイナンシャルプランナー。

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