新しいアイデアがベストとは限らない
川村氏の「優柔不断」と「ちゃぶ台返し」のスタイルは、映画プロデューサーとして仕事をするときにも発揮されている。
「映画プロデューサーの仕事の1つに、制作チームの編成があります。僕は、組み合わせのシミュレーションに、しつこく時間をかけます。チームの質が、映画の出来を左右するからです」
その際、スタッフの過去の実績などを調べ、その映画の成功と失敗の要因を分析するのだという。それと同時に、できるだけ異質な能力を持つもの同士を組み合わせるよう心がけているのだ。
「キャスト・脚本・音楽・監督など、持ち味のかけ離れた人材をマッチングさせることで、豊かで大きく、かつ予想以上の作品ができるのです。
だからこそ、普段からスタッフの仕事ぶりや発言を見て、可能性の片へん鱗りんを記憶しておくことも大事ですね」
持ち前の記憶力を駆使して、会議の場でも無数の意見を頭に入れつつ、優柔不断に仕事を進めていく。
「メンバーにアイデアをとことん出してもらい、ギリギリまで迷います。100個以上出たところで、『やっぱり7個目でいこう』などと後戻りすることも。最新のアイデアがベストとは限らないので、戻る勇気も必要なのです。周囲からはよく文句を言われますが(笑)」