ギリギリまで決めない勇気を持て
とはいえ、仕事には締め切りがつきものだ。決めない・迷う・ひっくり返す。それはときに、気持ちの焦りや周囲の困惑を生むだろう。しかし、そうしたストレスにも川村氏は肯定的だ。
「いくつもの案を出して生まれた思考の集積から、行きつ戻りつして磨き抜いたプランの中身は極めて濃いものです。安易に即断即決して、『やっぱりああしておけばよかった』と後悔するよりも、よっぽど健全かもしれません。あえて決めない勇気もときには重要でしょう。
また、決めないことのプレッシャーは、周囲との関係にも、最終的にプラスに働くと思います。侃かん々かん諤がく々がくの中で、より深い仲間意識が生まれますから。スムーズに進んだ仕事より、苦心惨憺(くしんさんたん)した仕事のほうが強烈な思い出になり、連帯感も強くなるものです。これもまた、優柔不断の侮れない効用と言えるかもしれません」
『理系に学ぶ。』
(ダイヤモンド社)
「根っからの文系」を自認する川村氏が、理系各分野の第一人者を訪ね、その活動と思考法に触れる対話集。養老孟司氏、川上量生氏、若田光一氏など、時代の最先端を行く理系人の発想の源が平易な言葉で語られる。現代人、とくに文系人が陥りがちな閉塞感を打破する視点が随所に登場、「未来を拓く知性」を堪能できる1冊だ。
川村元気(かわむら げんき)映画プロデューサー・小説家
1979年、神奈川県生まれ。上智大学卒業後東宝㈱に入社、『電車男』『告白』『モテキ』等のヒットを放つ。2012年には小説『世界から猫が消えたなら』を発表し130万部突破のベストセラーとなり映画化された。その後も小説第2作『億男』、ハリウッドの巨匠たちとの空想会議を描いた『超企画会議』等、さまざまな作品を世に送り出している。《取材・構成:林 加愛 写真撮影:永井 浩》(『
The 21 online
』2016年8月号より)
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