
(写真=PIXTA)
日本企業の利益率は低いと言われることが多い。利益率を計算するときの分母が自己資本であればROE、そして総資産であればROAであり、両者ともに引き上げることが日本企業の課題とされる。
ネット資金調達額は1999年をピークに減少中
日銀資金循環統計でみると、企業のバランスシートの左側(資産側)には金融資産があり、右側(負債側)には資金調達手段である金融負債と株式・出資金がある。企業は資金調達をして事業を行う主体であるため、資産側に対して負債側が大きい。そして、その差がネット資金調達額(Net Financial Obligation, NFO)となる。企業では、金融資産+ネット資金調達額=金融負債+株式・出資金、という形でバランスする。
株式で資金を調達しても、現金で保有しているだけであれば、右側と左側が同時に増加するだけであり、NFOは増加しない。NFOは、実際に企業で働いている資本(Working Capital)であると言える。
ここ20年間のトレンドで見ると、企業利益は増加している一方で、総資産と株式・出資金も増加してきた。よって、両者の利益率であるROEとROAはまだ低いと言われる。
一方、日本経済の大きな問題は、マイナスであるべき企業貯蓄率が恒常的なプラスの異常な状態が継続し、企業のデレバレッジや弱いリスクテイク力、そしてリストラが、総需要を破壊する力となり、内需低迷とデフレの長期化の原因になっていることだ。
企業貯蓄率が恒常的にプラスになっていることは、トレンドとしてNFOが減少してきたことを意味する。NFOは1999年10-12月期の114.7%(GDP対比)をピークとして、2016年1-3月期には66.4%まで減少している。